軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

半島は「休戦中」である!

 昨日のクラウゼヴィッツⅢ世氏のコメントにあったように、半島は「休戦中」であることを忘れてはいけない。北朝鮮が、更なる制裁は「宣戦布告とみなす」といったそうだが、戦争中に「宣戦布告」もあるものか。
 『再開』に備えて、座間の米軍基地内には、今も国連旗が掲揚されていて、形式上は、「いつでも戦闘再開に応じられる」ようになっているのである。
 韓国軍だって、連日「実弾装備」で“平常訓練”をしている(はず)である。
 金金会談(金大中氏訪朝)直後に訪韓した私は、韓国空軍将校から「これで北の戦術に引っかかって軍内の士気が分断される」と警戒心を打ち明けられた。その後の経過を見てきたが、やはりノムヒョン大統領時代になって、相当軍の士気は低下したように思う。その当時は、彼らは休日も休暇も制限されつつ、実弾装備で猛訓練をしていた。
そして今回の事態である。韓国民は、太陽政策が失敗だった、と認めたようだが、軍の士気の低下は一朝一夕には回復しまい。「休戦状態」下にあることを意識してきた軍が、あの日を境に「停戦、終戦」と錯覚したからである。これを理由に時の大統領が「ノーベル平和賞」を受賞したのだから笑い話にもならないが…
 ロシアと中国が、今になっても国連制裁決議に「難色」を示しているのは、朝鮮戦争「再開」の悪夢を恐れているからだろう。当時のソ連は北を「熱烈」に応援したし、中国は「義勇軍」を投入して多大な出費を強制された。「再開」になれば、国境を接する両国には、避難民が押し寄せる。ロシアはまだしも、中国にとっては満州族朝鮮族が「支配?」する東北地区の治安が悪くなるし、万一「戦闘状態」になれば、北京オリンピックが吹っ飛ぶ可能性がある。更に、ようやく国民党を手中にして有利に展開しつつある台湾海峡情勢でも、台湾に「独立運動が再燃する」かも知れない。
 そうなれば、国内でようやく権力集中を達成しつつある胡錦濤政権にとってはまさに悪夢であろう。半島情勢で正面に立つ「軍」は、必ずしも胡錦濤主席に「忠誠」を誓っているとは限らない。
 ロシアも、グルジアや、旧東欧諸国内の「各種問題」を抱えていて、チェチェン問題で、プーチン政権を非難した女性ジャーナリストを「始末」しなければならないほどである。米国は来月の中間選挙を控えてはいるが、国連の実態を世界に認識させつつ、核拡散防止、テロリストへの大量破壊兵器拡散防止のための「最終案」を取りまとめていることだろう。
 今回の国連決議がどれほどの効力を持つのか知らないが、「半島は休戦状態」だから、連合国軍の行動開始にさほどの障害はないのではないか?
 それに反して我が国の有様は、国民の一人として恥ずかしい限りである。先日発売された私の監修本「『図解』これが日本の戦争力だ!」に書いたように、「これが日本の実態」なのである。万一、座間にある国連軍司令部が、行動を開始したとき、国会ではどんな論争が行われるのだろう?
論戦が終わったときには、既に決着が付いているかもしれないのに。
 北の暴走を防ぐため、すなわち「国際平和に寄与する」ための「海上臨検」も、周辺事態かどうか認定する必要があるため、おいそれとは「参加できない」という。冗談じゃない。国連で常任理事国議長として大島大使は懸命に努力しているにもかかわらず、肝心の本国がこの有様では、何のための「国連決議」なのか?
もともと「国連憲章(正式には「連合国」憲章)」には、日本やドイツなど、「連合国に対抗した国は『敵国』」なのだから、それにもかかわらず、常任理事国入りを熱望するのなら、国際的平和維持活動のためには快く『軍事力』を提供し、行使すべきなのに、『憲法の制約』でそれが出来ないから、金だけ出して勘弁してほしい、という態度だから、世界は小ばかにして日本は「常任理事国資格不適!」と判断したのである。
憲法前文を読み返してみるが良い。
「我らは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ…」
何と現実と乖離した空虚な言葉であろうか!
 北朝鮮の核保有は、安倍首相が言ったように我が国にとって一大事である。にもかかわらず、北の反撃がありそうな「臨検」などは、憲法が禁止している戦争状態になる可能性があるから、米国始め他の国連軍には対処してもらいたい、などという「たわごと」を言ったとたん、国際的信用は一挙に失墜するだろう。
 何度でも言うが、朝鮮半島は「休戦中」である。いつ再開されてもおかしくはないのである。同時に中国は「共産主義国家」であり、民主主義国家ではない。
 台湾独立阻止のための「軍事力行使」を宣言している国なのである。
 一日も早く『平和ボケ」『キリギリス状態」から脱却しなければ、21世紀を生きる我々の子孫たちに『不快な思い』をさせ続けるだけであろう。