軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

日米同盟は机上の空論!

 今日は浦和市まで出かけてロータリークラブの昼食会で卓話をしてきた。「社会奉仕」を続けるロータリークラブの面々は、皆さんハイレベルでユーモアに富み、何時行っても楽しい場である。今回は時間が限られていたので、早口で喋り捲ったので、聞きづらかったことだろう。しかし、我が国の安全保障問題に関しては、極めて関心が強かったので嬉しかった。
 ところで、5日の朝日新聞在日米軍青森空港の使用を打診したところ、青森県が「民間空港」であることを理由に断ったという記事が出ていた。チャンネル桜の収録時にもらったコピーによれば、米軍からの2度にわたる打診は、「Xバンドレーダーの配備に関連して知事を表敬訪問」するという名目だったというが、昨年6月に航空自衛隊の車力基地に設置した弾道ミサイル防衛のための施設に関するもので、4月の打診はキャンプ座間に向かう際に三沢基地よりも近い青森空港を利用したい、というもの、6月は横田基地から車力に近い青森空港に着陸したい、という連絡だったという。使用機種は連絡機のUC35だったようだが、いずれも青森県は「民間空港だから」という理由で断ったという。
 青森空港開設時に、地元住民(といっても殆どは活動グループなのだが)県に「軍用としては使わないように要望し、県も「軍用施設としては使わない」と回答した経緯があるから「こうした住民感情を背景に、県は2度とも空港を使わないでほしいとの意向を米軍に通知。空港利用の話しは立ち消えになったという」と朝日は書いたが、05年の日米両国の合同部会で、日米防衛協力で空港や港湾の使用が挙げられているにもかかわらず、地方自治体の実態は全く以前と変わっていないのである。
 自衛隊も同様なのだが、我々「日陰者」は「我慢」するにしても、ことは同盟国に関する問題である。
 私にはこの記事を読んで思い出すことがある。沖縄勤務時代、第7艦隊司令官が私を表敬に来ることになったのだが、ホワイトビーチに上陸したナッター中将は、那覇基地まで直接ヘリコプターで来るのかと思いきや、那覇軍港内にある米海軍のヘリポートに降りて、車に乗り換えて来るのだという。軍港は基地から近いとはいえ、その間の交通渋滞で時間がかかるうえ、要人警護もままならない。
 私は那覇基地は「民間」の那覇空港と同居しているとはいえ、エリア内にはわれわれが使用する着陸スポットがあるのだから、直接着陸するように変更させようとしたが、管制を運輸省が管轄しているので、米軍機の那覇空港使用には制限があるという。そこで私は普段から良くお付き合いしている空港長と運輸省の管制部長に直接掛け合うことにしたのだが、何と、それを察知した米軍側から「お気持ちは分かるが、これ以上自衛隊に迷惑をかけたくないので、計画通り行動する。お気持ちは感謝する」と米軍側から断られたのである。つまり彼らの方から日本の国情に十分配慮して辞退してきたのである。そこで私は少しでも時間を大切にするべく、第7艦隊司令官が陸、海、空の3人の指揮官に別々に表敬することなく私の部屋に2人を呼んで3人一緒に面談することにしたのであったが、米海軍中将の「時給」がいくらかは知らないが、ヘリを降りて車に乗り換え、混雑した一般道を正門に廻ってくるなど貴重な時間の浪費であろう。
 しかし、彼らは沖縄における同盟軍である自衛隊の“弱い?”立場を十分理解し、「友軍」らしい気配りで遠慮してくれたのである。一方の同盟国の指揮官たる私は実に複雑で情けない思いがしたものである。
 仮に、同盟国が米国ではなくソ連だったらどうだろうか?そんな気配りなどどこ吹く風だろう。いや、その前に「地元住民」たちが、赤旗を振って彼らを歓迎するのかもしれない。逆に、ソ連軍司令官を乗せたヘリが直接基地内に着陸しないで、軍港内のヘリスポットに着陸して車に乗り換えて来ることを知った「地元住民達」は「那覇基地に直接着陸させないのはどうしてなのか?」と連日基地正門前にデモをかけて来るのかもしれない。
 集団的自衛権は「保有するが使えない」と平気で言う同盟国、同盟軍の「民間空港着陸」を平気で拒否する同盟国、そのくせ、北朝鮮が核実験したとなると「核の傘の保障はどうなっている?信用できるのか!」といきり立つ同盟国。
 仮にこれが日韓が同盟関係にあると想定した場合、韓国民が日本の自衛隊機の民間空港着陸を拒否し、基地撤去を叫び、その代わり北が不穏な動きをする度に、自衛隊は38度線の防衛はしっかりやってくれているのか?などと言ったとしたら、日本国民はどんな気がするだろう?朝日はその昔、中国に対して書いた様ににきっと「暴支よう懲」ならぬ「暴韓よう懲」を叫ぶのではないか?
 在韓米軍の動きは微妙である。同様に、日米同盟もこんな些細なことからヒビが入りつつあるのだが、防衛大臣は日米同盟の信じがたい実態について承知しているのだろうかと心配になる。この例のような「机上の空論」状態が各所に放置されていることを国民にもっと知ってもらいたいと思う。