軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

暗雲漂う北京オリンピック

 匿名氏や、クラウゼヴィッツⅢ世氏のコメントには考えさせられる。
 今朝の産経新聞3面に「中国バブル競売活況」という、過熱する絵画オークションの記事が出ていたが、匿名氏が感じたとおり、私もこれを読んで、ついに中国でバブル崩壊が始まった!と感じた。 我が国のバブル崩壊も、絵画などの競売が活況を呈した後に突然到来したと記憶するが、忘れられないのは銀座のデパートで絵画展示即売会が行われていた時のことである。
 客の御婦人が「私は絵のことはさっぱりわかりません・・・」といって販売員の説明を聞いていたのだが、販売員は「この作者は数年後に必ず有名になりますから、今買っておかれると値段が数倍以上上がることは確実です」という説明をしたのである。
 私も素人絵を楽しむ方だが、この作者の絵にはさっぱり感動しなかった。平板で細かすぎて、色彩が派手すぎる。絶対に“有名”にはならないだろう、と感じたものだが、絵の評価をするのに「先行きの値段」が優先し芸術性に全く触れない異常さに驚いたのである。つまり「芸術作品」の展示ではなく、「投資商品」の展示即売会だったのである。私には「詐欺」まがいどころか、詐欺そのものにしか思えなかった。数十万円で購入したあのご婦人は今頃どうしていることだろう。勿論あの会社は、別の手の詐欺まがい商法で食っていることだろうが・・・
 この現象が今中国で始まっているようだから、下手(うまく?)すると来年春ごろには崩壊が始まるかもしれない・・・と私は感じたのである。
 温家宝首相の来日については、週刊新潮5月24日号の高山正之氏の「変幻自在」が当を得ているように思う。
高山氏は「温家宝はいったい何しに日本にやってきたのか。それを考えるために中国に行ってきた」と書き出し、中国が日本の「真似ばかりしていること」を取り上げている。話題になっている「偽ディズニーランド」がそれを解く「カギになった」として、今の中国人には「独創性はなく」「ただひたすら真似だけだ」とし「その視点で温家宝首相の旅を振り返って」見ているが、ジョギングはクリントンの真似、キャッチボールは小泉・ブッシュの真似、止めが国会スピーチで、「日本の侵略に言及したのは挨拶代わり」、「問題は『中国近代化の過程で日本から受けた支援と援助に感謝します』というくだりだ」という。
 それには「孫文も入る。孫文が日本人から金を借り倒して今の中国が出来たことを一部は知っていたが、今までは口に出来なかった。いま鴨の嘴をした新幹線も走っている。日本に留学や強盗にやってくる何万もの中国人はそれが日本のデザインと技術だと知っているが、これも口には出来なかった。それを温家宝が何の編集もない生中継で語った。言葉の裏には『もう反日で儲けた江沢民の時代は終わった。反日デモは反逆罪にする』という宣言があった。実際、今反日デモをやられたら北京五輪の施設建設から接客のノウハウまで教えている日本人がみな帰ってしまう。中国人にそれを補う能力はないから北京五輪は空中分解する」と高山氏は書いた。
 つまり、今回の温家宝首相の訪日目的は「もはや反日江沢民の時代は終わったというメッセージ」だというのである。やはり胡錦濤政権は、何としてでも北京五輪を成功させなければならないのである。温家宝首相来日目的はまさにそこにあったのだろう。そういえば「天皇を招待」してまで成功させようという魂胆丸見えだった。
 そして最後に高山氏は「中国にいたとき、加藤紘一山拓がやってきた。反日の日本分子だが、その訪中を伝える人民日報の記事は最終ページの最下段のべた記事だった。時代を見失った二人にはふさわしい場所だ」と書いたから面白い。山拓“先輩”も、とうとう落ちるところまで落ちてしまった観がある。私が助言したように「憲法改正に体当たり」していればよかったものを・・・。高山氏の指摘は鋭いが、問題は、裏の“仕掛け人”が誰なのかである。
 週刊新潮のみならず、週刊文春5月24日号も負けてはいない。
 文春は「『公害の輸出先』は日本」だとして『中国の毒』問題を取り上げている。ここでは中見出しだけ掲げておくことにするが、「光化学スモッグ来襲!東シナ海越えに策なし」「キティ・ドラえもんは中国人の独創だって」「上納金・パンダ、一頭一億円の荒稼ぎ」「毒野菜・毒うなぎの次はハマチが危ない」「三角合併中国企業が狙う中小企業の技術力」と内容はなかなかである。

 産経新聞に戻るが、6面に「米投信大手・中国石油会社の株売却。スーダンと密接・・・虐殺阻止へ圧力?」とある。「米投資信託最大手フィディリティ・インベストメンツが、中国最大のエネルギー会社ペトロチャイナの保有株式の約9割を売却していたことがわかった」という。これは、ダルフールスーダン政府に支援された民兵組織によって民間人数十万人が虐殺されていることに対する動きだそうだが、スーダン政府と密接な関係にある中国企業に対する“制裁”と見られ、他企業にも影響が出そうである。「米議会のトム・ラントス下院外交委員長は16日、フィディリティの株売却について歓迎する談話を発表」し、「バークシャー社にも追随を求めた」という。
 更に、下段の囲み記事には「北京五輪 敵は大気汚染」として、「英国の水泳チームは、中国の大気汚染が選手に悪影響を与えることを懸念し、大会直前まで現地入りしない」という。「大気汚染が選手の体調などに影響を与える可能性があり、深刻に受け止めているためで、同チームは大阪でぎりぎりまで最終調整を行い、北京入りする計画だ。オーストラリア・オリンピック委員会も北京の大気汚染問題を懸念、同国の選手に対し、競技直前まで北京入りしないようアドバイスしているという」が、水泳よりもマラソン選手のほうは大丈夫なのだろうか?そして日本選手団はどうするつもりなのだろう?
 開催が、後一年と少し残すだけになったが、北京五輪には暗雲が漂っている。

(今日はここまで。クラウゼヴィッツⅢ世氏が指摘した小沢代表の“虚勢とシビリアンコントロール問題については、後日書きたいと思っている。)