軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

天下分け目の参院選!

 産経新聞で10日から始まった3連載の「選択の視点・・・’07参院選」は面白い。昨日の第一回目の頭には「自民党には、よい自民党と悪い自民党がいて、その間にトイレットペーパーのように見えないミシン目が入っているんだ。いずれピリピリと破れる」というコメントが出たが、これは「安倍晋三首相批判の急先鋒である加藤紘一元幹事長が親しい議員に漏らした」言葉だそうである。やはり自民党内の「獅子身中の虫」が蠢いているのである。
参院選の結果次第では、自民党民主党の一部が反『安倍首相』の旗の下に連携する可能性もある」という。「自民党離党組の荒井広幸参院議員と滝実議員」も5日に新党日本を離党した。「自民党が45席以上を確保できれば政権は安泰だ」が、「それ以下は危険水域だ。万が一40議席を割り込めば、安倍首相の退陣は避けられないだろう」とある閣僚経験者は分析しているそうだが、このような自民党内の「軋み」を察知した小沢民主党代表が「参院選で与党過半数割れが達成できなかった場合に政界引退する」ことを明言し退路を断ったことは、「民主党議員の士気を鼓舞するためではなく、首相に退路を絶たせるための挑発が狙い」と見る向きもあると言う。森喜郎元首相も「小沢氏のやり方は分かっている。自民党が内部からがたがた瓦解するのを誘発しようと思っているのは間違いない。小沢流の独特の戦術だ」と講演で語った。産経は「真の狙いは、平成5年と同様に自民党分裂に伴う政界再編にあるというのである」とするが、平成5年の政界再編は、思い出すのも不愉快な“改悪”であり、危うく日本が「沈没」しかかったことを国民は忘れてはならない。
 
 平成5年6月21日、自民党から10名の離党者が出て「新党さきがけ」を結成、代表・武村正義、6月23日に羽田派の44人が離党して「新生党」を結成、党首・羽田孜、代表幹事・小沢一郎であった。7月18日の総選挙では、自民223、社会70、新生55、公明51、日本新党35、共産15、民社15、さきがけ13、社民連4、無所属30という結果となり、その結果宮沢首相は退陣し、河野洋平総裁が出現した。そして8月の第127特別国会で、土井たか子社会党委員長が衆院議長に就任するという、国民不在の政治が始まった。
 8月9日細川・非自民6党が連立して内閣が発足、民間人や女性を多数登用した「バラエティー政治」が始まり、細川首相が「侵略戦争発言」、韓国に対して「反省と陳謝」を表明、翌平成6年3月に「小選挙区比例代表並立制」を可決、ところが4月8日に佐川急便グループからの一億円借金問題が明るみに出ると彼は無責任にも突如辞任、28日に羽田孜首相が出現するがこれまた6月25日に総辞職、自民党社会党の共同政権構想を受諾して、自・社・さきがけ、3党連立与党を結成し、誰も想像だにしなかった「村山富市社会党委員長」を首相に指名、6月30日に村山内閣が発足していよいよ「日本崩壊」が始まった。
 首相になるや村山首相の態度は一変して、今までの社会党としての主張はどこへやら「自衛隊合憲」を表明、「日の丸・君が代の学校での指導」を容認した。つまり、彼には思想も思慮も全く欠如していたに過ぎなかったのである。そして翌年の1月17日に阪神淡路大震災が発生したが、全く対処することなく犠牲者を放置したまま右往左往、そんな無責任な世の中を反映してか、東京には青山幸男知事、大阪には横山ノックというお笑いタレント知事が誕生した。国民の生命や財産を守ることには無関心?だった村山首相は、6月に「戦後50年国会決議」や、「侵略」「植民地支配」など、歴史認識の欠如を示すおろかな行動を取り、日本を骨抜きにして翌年1月5日に退陣した。そしてその後親中派の橋本首相が誕生したのは御承知の通りだが、このように「政界再編成」は、一歩誤ると「政界混乱」国力衰退を招くということが明白に証明されている。万一、今回の選挙後にそのような事態が生じたとき、誰が指導力を発揮するのか、私には名前が浮かんでこない。
 今朝の産経は同じ欄で「国の形かすむ論議」として、「国政選挙をシングルイシューでやると言うのは、郵政選挙が特異な例だ。政党が国政選挙で訴えることは、多岐にわたるのが当たり前だ」と一ヶ月前の6月6日に、訪問先のベルリン市内で安倍首相が記者団に語ったことを指摘し、「しかし、その思いとは裏腹に、参院選の争点は年金記録紛失問題への対応に加え、赤城徳彦農水相の事務所費問題で再び『政治とカネ』の問題が浮上し、『国の形』という大きなテーマになかなかたどり着けない」と嘆いた。そして高瀬淳一名古屋外国語大教授が「直接、政権後退とならない参院選だからこそ、マニフェストは大所高所から憲法などのあり方、主義主張を問うものが望ましい」と指摘したことをあげ、「今回の参院選で『良識の府』に相応しい政策論議が行われるか、選挙戦はこれからだ」と締めくくった。
 何度も書くが、私は『政治評論家』ではない。専門の花岡信昭氏は、昨日の「政論探求」欄で赤城農水相の事務所費問題を取り上げ、「野党は『実体のない事務所費だ』として罷免を要求している。自殺した松岡利勝氏の後任だけに、安倍晋三首相や自民党にとって、なんとも深刻な痛手ではある。だがこの騒ぎは冷静さを欠いてはいないか。(中略)辞職した佐田玄一郎前行革担当相の場合は架空事務所だったし、松岡氏の『何とか還元水』も異常だった。だが、事務所費問題では、民主党小沢一郎代表の巨額土地保有角田義一参院副議長の朝鮮総連関係団体からの献金問題を忘れてもらっては困る」と書いたが全く同感である。ついでに週刊誌で有名になっている又市・社民党幹事長の「愛人マッサージ醜聞」問題も有権者を馬鹿にした許しがたい行為であり、こんな無責任で低俗な議員の存在を国民は許してはなるまい。
 マスコミが、赤城農水相の『事務所費』問題を集中的に取り上げている背景には、かってのテレビ朝日報道局長が、野党が有利になるような「仕掛け」を番組にして訴えられ、放送法に抵触したとして裁かれた例に酷似していると思う。なんとも早、いつの間にかこの国の議員達やマスコミは「骨細」になってしまい、若い首相の『骨太政策』についていけないように見える。
 2008年の世界的な政治情勢変動を控えて、多くの国民は危機感を抱いているのだが、我らが「選良たち」は、全く違った道にわれわれを引き連れていこうとしているのではないか?と勘ぐりたくなる。
 参院選はいよいよ明日公示される。立候補者は377人予定されているそうだが、常識人としての水準以下の人物に、間違っても投票してはならないと思う。あの無残な、日本の光輝ある歴史に一大汚点を残した平成5年の政界“崩壊”を再現してはならない。あの時のような「お遊びの時間」は今や無いのである。