軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

どうなる「上海閥」

 今朝の産経新聞は表記の見出しで、中国の党大会に向けた動きを報じた。
「『胡体制』強化?権力争い熾烈」というが、今に始まったことではない。江沢民体制から、胡錦濤主席が何時自主路線?を打ち出すかが焦点だったが、それには『人民解放軍』の掌握が第一であるとされてきた。
 江沢民前主席は軍事委員会の実権をしばし離さなかったし、南西諸島水域を「領海侵犯」した中国海軍潜水艦が、“無事に”青島の基地に帰還したあと、わざわざ訪問して将兵を労った写真がインターネット上に公開されたことがあった。この時点では江沢民前主席の軍掌握は手堅いものだと言われ、その直後に、胡錦党主席に対する海軍艦艇の“誤射事件?”が発生し、間一髪胡錦濤主席は危機を脱した、という情報も流れたほどであった。勿論、中国政府が『軍のクーデター』を公にするはずもなく、この件はそのまま消滅か?と思っていたが、先日ある会合で、香港でこの事件の確証を得たという方の話を聞いた。
 胡錦濤主席が就任後、軍を掌握するため必死に努力していたことは間違いない。昨年、日中安保対話に参加した中国の研究者と現役軍人から、胡錦濤主席が兵隊から将軍まで、給料を一斉に2倍にしたと教えてくれた。
 他方、退役軍人たちの処遇改善では、各地で「暴動まがい」の陳情事件が起きているらしいが、退役将軍達が胡錦濤政権を支持する、と確約したという情報もあった。キラー衛星事件?では、胡錦濤主席に何ら報告がないまま実施したという情報もあったが、その後の経過を見れば、確実に掌握が進んでいると感じられた。
 ところが、そんな中、目を疑うような情報が出た。

 国民新聞7月25日版に、月刊「中国」発行人である明霞氏が、「胡錦濤主席、遂に軍を掌握」と題して次のように書いている。
「中国解放軍は8月1日、健軍80周年を迎え、中共は大々的に慶祝記念行事を予定している。『明報』は先の中共による人工衛星を弾道弾で爆破したことを知らされていなかった胡錦濤は、解放軍を実質的には掌握していないと報じた。だが実際には、胡錦濤は軍隊をしっかりコントロールしていると見られる。
 胡は戦争での功績もなく、北京の権力筋によって中共中央軍事委員会主席に就任した途端に『海軍某突発事件』によって生命の危険にさらされた。2004年11月、中国潜水艦が日本領海を侵犯し、海上自衛隊に発見され追尾、包囲された事件があった。中国潜水艦は逃げ切れないと思い、浮上して投降することも考えた。そうなると中共は対日外交で受身になる。
 その時、海軍司令は中央軍事委員会に二つの策を提案した。(1)戦闘機部隊を現地に急行させ、日本軍の包囲を解く。(2)万一この作戦に失敗した場合には、潜水艦は浮上し投降する。
 情報によれば、胡錦濤は戦域状況の説明を受けたあと、二つの緊急指示を出した。(1)日本人は戦争をする勇気がない。(2)潜水艦乗組員は必ず祖国に帰るものと信じる――。
日本の自衛隊に対する胡錦濤の的確な分析と判断に中共解放軍は感服したという。
 結局、胡錦濤の分析どおりに日本側は大騒ぎしただけで、数日後に潜水艦は包囲網を突破して祖国に帰還した。胡の冷静沈着な判断は極めて戦略的であり、中日軍事衝突の危機を打開することに成功した(以下略)」
 私に言わせれば、胡錦濤主席の判断は、何も「冷静沈着な戦略判断」だとは思えない。日本がいかにもだらしないのであり、そのような『データー』を過去において散々世界中に公開してきたから、胡主席は自信を持って指示したに過ぎない。
 
 その昔、ソ連潜水艦が我が国領海を2度にわたって侵犯したとき、政府は『事後通告を容認』して『無害通航』だったとソ連潜水艦の行動を咎めないと宮沢官房長官が発表した。

 平成11年3月の能登半島沖不審船事件でも、海上保安庁の手に負えなかったため、やむを得ず海上自衛隊に出動を命じたが、『目標に弾を当ててはならない』と厳命し、こともあろうに海軍とは何ら無関係な『防空識別圏』のラインまで、“花火”を揚げつつ追跡の格好を示しただけで、貴重な税金で購入した『弾薬』を、日本海に投棄する訓練を実施した。長年にわたる『シビリアンコントロール』に呪縛されて軍事の基本を忘れた高官たちは、世界の軍事関係者の失笑を買ったのだが、何と、これが契機で『海上警備行動に道を開いた』と喜ぶ始末であった。

 南西方面、東シナ海の『ガス田』を巡る日中間の“衝突”も、中国側は真剣勝負で艦船を差し出すが、日本側はこれに対して、拡声器で領海から『出ていただくよう呼びかける』有様。そしてこれに学んだ中国側は『有志を募って』尖閣諸島に『ちょっかい』を出した。平成8年9月のことである。
 香港の抗議船『保釣号』に乗った中国人と台湾人の『先兵たち』は、26日に領海内に入ったが、その前に彼ら活動家たちは、日本の巡視船の警戒が厳重なので、領海を侵犯すれば重大な危害が加えられかねないと感じ、船上で協議した。その時同行していた日本人記者が「日本は絶対に自衛隊を出動させない。巡視船も絶対に銃撃してこないから安全である」と彼らに強調したが、逆に彼らから「貴様は日本人だ。我々を陥れて日本官憲に捕まえさせようとしているのだろう!」と信じてもらえなかった(記者の話)という。この感覚のずれは、公安調査庁長官の感覚に相通じるものがある。
 軍事常識を学んでいる彼らは『恐る恐る』侵入したが、驚いたことに日本官憲は本当に撃ってこない。領海侵犯には成功したが初めから上陸する気はなかった。上手くいったが、これだけで引き返しては、資金を出してくれた「スポンサー」に説明できない。そこで「“我々の海”で泳いできた証拠を残そう」と、4人の活動家がロープを身体に巻いて日本領海内に飛び込んだが、リーダーのデービット・チャン(45)が水死した。
 ところが何と!警戒に当たっていた日本の海保は、直ちに『警備』から『救助』体制に移り、重体の活動家を石垣市の病院にヘリで搬入して『お助け』したのであった。
 これに味を占めた台湾の活動家と連携した中国人たちが、その後もしばしば尖閣に侵入したが、我方はその度に『手厚く』お迎えしたに過ぎなかった。当時の首相はハニートラップにかかった媚中派の最高幹部?であったからでもあったが、このような過去の実績情報の積み重ねが、潜水艦事件で大いに役に立ち、胡錦濤主席の決断を助け「人民解放軍掌握」に貢献したのだというのだから、なんとも皮肉である。

 それに比べて、週末の選挙に走り回る議員達の人相のなんとも貧弱で「○抜け」なことか!
加えて政権交代をもくろんで、その後の活動基盤を確保しておこうという意図丸出しのマスコミの報道姿勢。年金、格差、事務所費、芸者の花代、絆創膏の理由などなど、取り上げる話題のさもしくも恐ろしく子供っぽい有様。大臣も大臣なら、議員も議員、その程度の程度の低さに薄ら寒気を覚える。

 やがて胡錦濤主席は、人民解放軍のみならず、日本国も掌握するに違いない。第17回中国共産党大会後の、胡錦濤体制が気にかかる。それを予測してか『北京オリンピックを成功させる議員の会』などが国会にあるようだが、掌握したあとすべての対立候補を粛清して来た共産国家の歴史的事実を学ぶが良い。
 それにしても『武士道精神』を誇った大和民族も『舐められたもの」である。

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