軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

特別防衛秘密・中国入手指示か(産経)

 昨日は久々に都心に出て、郷友会の講演会を聞いてきた。防衛白書の解説だったが、本省報道官自らが解説してくれたことに敬意を表したい。
 質疑に「省移行で何故“国防省”にしなかったのか?」とあったが、国民の中に「防衛」という用語が馴染んでいるから、との答えには苦笑を禁じえなかった。防衛省の役人は当然「防衛」といい続けてきたし、政官界では「防衛」以外の用語は通用しなかったから、彼らは当然馴染んでいるだろうが、「国防」こそ馴染んでいるという国民もいる。「馴染む、馴染まない」が判断の基準だったら、自衛官の階級こそ変更すべきだろう。「1佐」や「3尉」が馴染んでいるのは「防衛関係者」か記者クラブくらいで、大佐や少尉のほうが余程国民に親しまれている。

 その昔、私が1佐だった頃、「佐藤のオヤジは自衛官だ」と息子の中学校教師が言った時、仲間が「階級」を聞いたので「1佐だ」と答えたがさっぱり通じない。そこで昔で言うと「大佐だ」と付け加えると、「すげエー、カダフィー大佐と同じだ」と言ったという。それほど「旧軍の呼称」は中学生にさえも「馴染み」が深いのである。
第一、新聞各紙も「ベレンコ2尉」とか「レフチェンコ3佐」と報道したか?
最も、最終的には「議員各位」の意思で「防衛省」に決まったようだから、報道官を責めるつもりはないのだが・・・

 さて、表記の記事が今朝の産経新聞のトップである。「旧防衛庁元技官が潜水艦関係の内部資料を持ち出した事件に絡み、警視庁の家宅捜索を受けた元貿易会社社長の関係先から、中国政府関係者が日本の『特別防衛秘密』の入手を指示したと見られる文書が押収されていたことが21日、分かった」という内容だが、何も大げさに一面トップで扱う記事ではない!。こんな情報活動は、世界の常識なのであって、情けないことに我が国だけが特別無意識なだけである。『正論』の今年6月号に書いたが、敵対国の各種工作はほぼ完成段階まで進展していて、知らぬが仏なのは永田町関係者と一般国民だけだろう。警視庁など、担当部署の担当官は切歯扼腕している筈だが、この国のこの種工作に対する感覚は“不感症”に近い。
 同じ産経30面片隅に「無断渡航20回・事務官を処分」というベタ記事がある。
防衛省情報本部電波部に所属する男性事務官(32)を停職3日の懲戒処分にした」というものだが、この事務官は「平成17年1月から今年6月の間、17回無断で渡航したほか、申請した国とは別の国に3回渡航渡航先は中国、ロシア、イスラエルなど計21カ国。大半は交際中の女性と一緒で、年末年始や夏季休暇などを利用していたため業務に支障はなかった」という。「年末年始だったから業務に支障がなかった?」冗談じゃない。彼の業務は「情報本部の電波部」である。上海の領事館で、ハニートラップにかかった電信官が自殺したことはお忘れか?
 彼が「中国、ロシア、イスラエル」に渡航していて“差支えがない”とはどういう判断だろう?更に20回の無断渡航、申請外の国に渡航・・・などという、スパイ映画もどきの行動を取った彼に付き合った“勇気ある”「交際中の女性」とは日本人じゃあるまい。これ以上の真相が明かされることはなかろうが、ことほどさようにこの国の情報感覚は鈍いのである。

 ところで那覇空港での中華航空機炎上事故は、両エンジンのパイロン部を通っている燃料パイプに不具合があったらしい。左右、ほぼ同時に燃料漏れを起こしたというのが解せないが、パイロン部にかかる応力は、相当なものだから、亀裂があったのを見落としていてこれが一気に破断したのかもしれない。それとも点検後に燃料パイプを結合した時に、規定どおりの結合をしなかった可能性がある。燃料パイプの構造や、その材質は厳重な管理下にあるから、その不具合よりも、結合時のトルク不足があったのではないか?エンジンを回転したあとのパイプ内部にかかる圧力は強力で、エンジンの燃焼部に一定の燃料を継続して流入するために、その構造は極めて精密になっている。
 翼内の燃料タンクからパイロンを通ってエンジンに連結されている燃料系統を検査すれば結果は出るだろうから、事故調査を待つ以外にないが、乗客の証言などから、両エンジンで同様な火災が発生していたというのが腑に落ちないのである。二つのエンジンで同時に燃料漏れで発火する確率はきわめて低い筈である。
 インターネット社会は情報伝達が迅速なことを改めて確認したが、乗客の証言も実に興味深い。エンジンの煙を見た乗客が乗務員に知らせたところ、乗務員は「大丈夫です」と言うだけで取り合わなかったという。客室アテンダントを非難するわけではないが、彼女達は“航空専門家”ではないことを忘れてはならない。

 その昔、バリ島から帰る途中、テンパサール空港出発がやや遅れたことがあった。見ると左エンジン周りを整備員がうろついている。やがて機は出発することになったが、私の座席の列に「上着を羽織って変装していたが明らかにガルーダ航空の『整備員』が乗り込んできて座った。機は離陸してジャカルタに向かったが、乗務員が持ってきた食事を彼らは受け取らず、何か会話している。座席の下に「工具箱」があったので気になったのだが、ジャカルタ空港に着陸進入を開始した途端、左エンジンが異音を発しだした。彼ら二人はそわそわと落ち着かない。
 私は間違いなく左エンジンに不具合があると感じた。しかも直っていないのである。この異音は、コンプレッサーストール時のものと同じで、コンプレッサーに異常があるに違いなかった。しかし、右エンジンは正常?らしいから墜落する可能性は低い。
 無事に着陸したが、乗り継ぎのための時間が過ぎても全く出発する気配がない。乗務員に聞いても『エンジントラブル、ノープロブレム』としかいわない。結局深夜になっても何の説明もなく、ハンバーガーの差し入れがあっただけで、乗客も日本人が多かったからぶつぶつ言うだけ、何と8時間遅れで成田に着いた。
 滑稽だったのが、着陸走行中に「到着時間が遅れましたことをお詫びします」とマニュアルどおりに紋きり方に謝ったのは良いとして『またの御利用をお持ちしています』と言ったのにはあきれ果てた。こんな程度の低い、サービス精神に欠けた会社を再度利用する気にはなれまい。彼女達の任務は、言葉は悪いが食事運搬とその程度の放送なのであって、危機対処、特に航空事故対処は機長命令以外に出来ない“素人”なのである。
 
 冗談はさておき、今回の那覇空港での事故を、私は我が国航空防衛上の重大な問題だととらえて書いた。熱心なコメントが寄せられたが、メールで面白い写真を送ってくれた方がいた。2チャンネルで流れているものらしいが、事故機のそばを通過する「中国東方航空」機のコックピット内で、機長らが写真撮影をしているところである。
 勿論、事故があったのだから、写真を取る気になるのは良く分かる。問題は、彼ら機長たちが常に「カメラ」を携行しているという動かぬ状況証拠である。
 官民共用飛行場には、世界各国の「民間機」などが出入りする。つまり“合法的?”な、偵察活動が常時行われているという証である。多分、中華航空機の乗員も空軍出身者であろう。台湾の報道では、当該機長は総統専用機の副機長だといわれている。他方大陸の「中国東方航空機」の乗員も、間違いなく空軍パイロットOB?であろう。大韓航空機のパイロットはほとんど空軍出身者である。
 こんな軍事のプロが、誰からも監視されないコックピットから「写真撮影」しているということは、実は軍事的「航空偵察行動」が日常茶飯で行われていることを示しているのであって、我が国はこんなことにも気がつかない「平和主義国」なのである!。
 日本の民間パイロットの方は「雲」などを撮った芸術写真集を発行した喜んでいるだけである・・・。
 最も最近は危険だからという理由で、コックピット内の行動は相当制約されて窮屈らしいから写真撮影などもってのほかかも知れないが・・・。

 ちなみに我航空自衛隊の戦闘航空団で、民間機と共用していない基地は、九州の築城基地新田原基地だけで、あとは全て「共用」だったと記憶する。滑走路は少し分離しているが千歳基地も、米軍基地の三沢も、日本海側の重点・小松基地も、首都防衛の要・百里基地もやがて共用化される。
 東京都知事が御熱心な「横田基地の共用」を、何故米軍がかたくなに拒否するかは、これでお分かりだろう。
 那覇基地に乗り入れている「中国東方航空機」が示しているように、いつでもこれらの基地は「同時多発的」に使用不能にすることが出来るからである。