軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

安倍政権の“敗因”

 今朝の産経によれば、自民党は今回の参院選の敗因を総括、「安倍首相を指弾」し、「国民、統治能力に疑問」と分析したという。「年金記録紛失問題や政治と金の問題、閣僚不祥事の『逆風三点セット』への対応の不手際があったことを指摘する報告書を決定し、首相官邸に提出した」らしい。「特に、安倍首相を名指しして、『国民から指導力・統治能力に疑問を呈された』と指弾し、『国民の目線に沿った政権運営』を求めた」そうだが、これを見て思わず笑ってしまった。「国民の目線」とはなんだろう?「逆風三点セット」は今に始まったことではあるまい。「政治と金」「女性問題」などはこの党の“伝統”ではなかったか?
 いや、これでは失礼だから「政治家全体の姿」と訂正しておく。民主党から絶大な信頼を受けて当選した「桜パパ」こと「横峯議員」などはさしずめその象徴である。
「週刊誌ウォッチング」に花田氏が「・・・社民党の又一征治幹事長とマッサージ嬢、山崎拓自民党幹事長の愛人・・・」などなどを挙げた上で、「桜パパ」のことを、「まさに<国会にかくも不適格な人物を送り込んだ責任者である民主党は、どうケジメをつけるのか>」と書いているから、自民党だけを非難しては「片手落ち」だろう。
 このように「国会議員」の質の劣化が甚だしいから、全うな人物は立候補しないのである。こんな連中に「国民の目線」が分かろうか?こんな連中の「目線」で判断されたら、国際的に孤立すること間違いない。
 以前「自民党」を私は「自眠党」と揶揄したことがあったし、「腐っても鯛かと思っていたら、実は腐った鰯だった」と議員会館で言ったこともある。その時自民党議員が「いまや鰯は高級魚だ」と言い返したことは既に書いた。
 安倍政権発足時の人事を見て、これはだめだ!と直感したのは、母体である自民党の幹事長人事であった。ある政治評論家が「自民党首脳は彼を“大物”と認識しているのだ」と言ったからなお更だった。
 私は政治の素人だが、過去の彼に関する新聞記事を見ると、とても大物だとは思えなかったからである。特に、郵政造反議員復党問題で、平沼議員に対する異様な嫉妬心?を垣間見て、やはり・・・と危惧してきた。
 その他、広報担当の女性議員のピントはずれの「広報活動」は、指揮官の足を引っ張るのに十分!と見ていた。
 何度も言うが、私は「政治評論家」ではないから、その裏事情はわからない。しかし、組織活動としてみる時、軍隊経験は非常に役に立つ。幕僚の能力と、下級部隊指揮官の能力は、直ちに組織の戦闘能力に影響するからである。
 真珠湾攻撃に成功しながら、第二撃を加えることなく撤退したり、ミッドウェイで搭載兵器変換を命じた南雲司令官は、航空戦の素人だったから自信がなかったのであろう。マニラ湾突入を回避した栗田長官も、過去の戦歴からアグレッシブでなかったといわれている。
 これは「相手」の組織を見る上で重要な要素だから、在日米軍はその観点から自衛隊の組織を見ているし、中国やロシアだって当然である。「同盟軍」や「敵軍」の指揮官、幕僚達の能力や個癖、過去の戦績、人格識見などなどは、「装備機材」よりも遥かに重要な情報であり、能力分析目標なのである。
 最高指揮官の安倍総理戦後レジームからの脱却を掲げて登場したとき、アジア周辺諸国は、ある種の危機感を感じたに違いなかった。しかし、そのスタッフを分析したとき、おそらく彼らは「ほくそ笑んだ」に違いなかった。すねに傷持つ連中ばかりだったからである。そこで最も脆弱なポイントである閣僚を集中的に攻撃し、見事に「敵」を壊滅することが出来た。勿論、それには「敵の敵は味方」の理論を適用して、民主党という自民党に対する「敵対勢力」を活用した。そのうえ、安倍首相と決定的に対峙している朝日(チョウニチ)新聞という「宣伝組織」を積極的に活用したその戦法は“敵ながら”見事であった。
 強いて安倍氏の責任を問うならば、「これらの“粗悪品”を見抜けなかったこと」と、「泣いて馬謖を切る決断力が乏しかった」ということだろう。しかし、パスカルはこう言っている。「人は若すぎると、正しい判断が出来ない。年を取り過ぎても同様である」と。
 ところで実に面白い“自民党の分析とは全く違う敗因分析”があるから書いておこう。畠奈津子という若い女性が発行している「卿守人」という小冊子の「編集後記」に、彼女は次のように分析している。
第一の敗因は、安倍内閣の最大の功績である教育三法の成立です。この法によって、戦後レジームの悪の立役者とも言うべき日教組による腐敗した国民教育を立て直そうしたからです。
第二の敗因は、戦後レジームの負の側面とは言い切れませんが、安倍内閣は、腐敗しきった公務員のための法を改正しました。
三番目の敗因は、民主党が巧く利用しましたが郵政民営化のツケです。小沢民主党は、マスコミに郵政民営化は凍結する!と報じさせています。マスコミも単なるパフォーマンスであることは百も承知で、民主党があたかも郵便族の味方かのように報道したからです。
 三番目は小泉政治負の遺産ですが、一番目は全国の教職員を敵に回す大改革です。マスコミも国民の教育改革の画期性を報道しなければならないのに、戦後レジームの中で国民を騙し、食い物にしてきた手前、教育改革を絶賛することは出来ないのです。
 二番目の公務員改正法案は、国会を延長してまでして強行採決させた法案なのに、その画期性はマスコミは報道しません。公務員の美味しい所は、定年後の天下りにあるのです。それを出来なくする公務員法改正には、どれだけの役人が反対するか、およそ推察できると思われますが、そんな見解はテレビなどでも見ることがありません。
 待ちに待った戦後レジームからの脱却なんです。何の成果も出さないまま安倍内閣を退陣させるわけには行きませんよね」(http://nasara.k-server.org/)
 こんな「本音」の分析は、どっぷりと利権に漬かった既成組織からは出される筈はなかろう。そして再び過ちを繰り返すのである。小泉前首相が「ぶっ壊す!」と絶叫した意味が今程よくわかる時はない。
 背水の陣を敷くであろう若い安倍首相には「人事を尽くして天命を待つ」心境になって欲しいものである。

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