軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

歴史に学ぶ

 猛暑から解放されたここ数日、手当たり次第に本を読んでいるのだが、コミンテルンに良い様にあしらわれて国内騒乱を続けていた中国大陸で、蒋介石毛沢東を追い詰めて大陸統一を成し遂げる寸前まで行ったとき、中共の罠に嵌まった張学良によって蒋介石総統が「西安で監禁」される事件が起きた。1936年12月12日のことであった。このときの「事件」を巡る我が国の解釈・認識は甘かった様に思われる。
 例えば当時「同盟通信社」上海支局にいた松本重治氏の回想には、「西安事件は兵諫」だとある。つまり、蒋介石に不満を持つ張学良が「武力を持って諫言したのだ」と云うわけである。国民党内の権力闘争という見方なのだろうが、それがとんでもない方向に進むことを見抜けなかったところが我が国の情報活動の甘さだったと私は感じている。やがてこれが「国共合作」となり、盧溝橋事件、上海事件、そして支那事変に発展し、昭和20年8月15日を迎える羽目になったことは書くまでもない。
 平河総研の無料メルマガに、「大東亜戦争の真実を求めて」毎週一文を連載しているのだが、「マオ」「毛沢東の私生活」「周恩来秘録」「上海時代」などを乱読すればするほど、当時も今も我が国の情報活動の薄さ、状況判断の甘さが気にかかる。「そんな筈はない」とか、「あり得ない」と自分に有利に分析し、解釈したときの誤判断による悲劇は、8月15日でもうたくさんだと思う。

 今朝の産経新聞「やばいぞ、日本」は、高齢化した出稼ぎ外国人問題を取り上げ、「放置すれば暴動の悪夢」と書いた。2005年10月に、パリ郊外で起きた移民らによる暴動がフランス全土に波及し、路上の車などが次々に焼き打ちされた事件を例に、「こうした悪夢が日本でも起こらないとは言い切れない」というのである。
「外国人比率が最も高い自治体である群馬県大泉町。4万人強の住民のうち、外国人は16%、6780人。その大半は日系ブラジル人だ。ここで国際交流協会会長を務める山口武雄さん(67)もこう心配する。『あと何年かしたら、年金をもらえない高齢外国人が町中に溢れるだろう。それがどれだけ深刻な問題か、誰も気がついていない』」「日本の労働力現象は深刻だ。厚生労働省の試算では2030年までに、日本人の労働力が最大で1000万人減る。高齢者や女性の雇用拡大が進んでも、500万人以上が働く現場から姿を消す。それは経済縮小、税収低下をもたらす」。静岡県では「日本人と日系人の感情的なもつれが、いよいよ表面化し始め」ていて、引き金は「相次いだブラジル人がらみの犯罪だ」という。
 法務省入国管理局によると、06年現在の家族を含めた外国人登録者数は「208万4919人」で、中でも中国人や日系ブラジル人が急増を続けているという。「中国人は20年前の8万4397人から6・6倍の56万741人に、ブラジル人は2135人から147倍の31万2979人に達した」。
 寺島隆吉岐阜大学教授は、最悪の事態として「生活保護を受ける外国人が増え、国や自治体の負担が拡大する。不法滞在などの外国人がホームレス化し、集住地域の一部がスラム化する。日本人の失業者を中心とした外国人排斥運動が高まり、それに反発する外国人らの暴動が起きる・・・」と云うシナリオを描いているそうだが、教授は「日本人自身、ワーキングプア(働く貧困層)といわれるほど就労条件が悪化している。このまま双方の不信感が増大すれば、危機的状況を迎える」と警告する。
 ブラジル友の会の金城・エジウソン会長は「日本人と外国人の不信感が広がっているのは残念。・・・お互いがもっと知り合えば、きっと良い関係が保てる筈です」というが、横綱朝青龍問題を傍観する限りにおいても、文化も言語も教育程度も異なる外国人と「お互いがもっと知り合える」事の困難さを痛感する。
 世界中に流出している中国人との摩擦は激しく、例えば中ロ国境地帯で地元ロシア人との対立一つをとってみても、良い関係が保てることは“絶対に”不可能だと思わざるを得ない。
 外国人の年金問題に対する日本の態勢整備は、今のところ掛け声だけで『国策として取り組むべき問題が放置され続けている』と産経は書いたが、いまや“インターネットカフェ難民”なる言葉が公になるほど、日本人自身の生活も不安定な状況になりつつある。東京都心部に住んでいれば気がつかないのだが、地方を旅すれば、この国の『危険性』は明白である。テレビ番組『田舎に泊まろう』を見ても地方の人口減少と、老齢化はうかがい知れる。

 2008年が東アジアの安定にとって特に軍事的な危機をはらんでいることは疑いないが、それ以前に『徐々に』この国の内部から『崩壊』が始まっていることも疑いない。
 根がお人よしで、性善説を信じて疑わない?日本人は、これら外国人労働者達が、年金など、生活権を要求して『暴動』を起こしたとき、それらの母国から一斉に「日本の人権無視、人種差別」を糾弾されると、全く抵抗することもなく『軍門に下る』可能性が強いのを私は恐れる。マイケルホンダの『従軍慰安婦問題決議』はじめ、その例は枚挙に暇がない。朝青龍問題でも、あの体たらくで、親日国を反日に向かわせかねない。
『知り合えば何とかなる』などとは『希望的観測』に過ぎない。自国民の福祉と生活の確保はその国の政府の最優先課題であることを忘れてはならない。如何なる時でも「国益優先」が政府には要求されるのである。日本人を飢え死にさせておいて、外国人支援を優先するような政府は、いかにも『人道的麗しさ』だとマスコミ受けするだろうが、その偽善性と愚かさは他国政府から嘲笑されるだけであろう。

 国共内戦を「対岸の火事」と見ていて安心?していた政府・軍部が、突然『西安事件』が起き、蒋介石毛沢東が手を組んで、日本に歯向かって来るなどとは、予想もしていなかったに違いない。
 単なる『兵諫』と考えて、高みの見物を決め込んでいた当時の政・軍・マスコミ界の過ちを繰り返してはなるまい。2020年に東シナ海で『ドンパチ』が起きるかどうか?など、軍事的衝突を予測するのも大切だが、徐々に身体に毒が回りつつあるという認識は、もっと大切である。
 国内暴動、天変地異の利用、そしてギリシャで起きた『放火テロ』などなど、一見普段の生活と変わらない事象が突然手に負えない騒ぎに発展することは歴史が示している。
 安倍内閣の支持率が上がったそうで、朝日新聞はなんとも歯がゆいことだろうが、とりわけ舛添厚労相に期待する向きが多いという。マスゾエならぬ『マスコミ』対策に長けた彼に、この問題を含めて“期待”しよう。

丁度今、書籍が届いた。イカロス出版社から出る『自衛隊、エリート・パイロット』という航空自衛隊5機種のパイロットの感想記である。F−4を私が担当したが、「このネーミングは、世界的に見ても空軍の中でも、ファイターパイロットとして選ばれた人たちは、それぞれの国のエリートであるという意味合いをこめてつけたタイトルです」と編者の菊池征男氏が書いているとおり、F−4パイロットには私がその足元にも及ばないエリートが多数いる。ただ、色々な文章を書いていたからたまたま掲載されただけである事をお断りしておきたい。
書店での販売は9月上旬からで一冊1619円+税、店頭でお会いするのを楽しみに!