軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

笊の上の小豆

 日本人は両極端に走りやすい、という例で「笊の上の小豆」という言葉が使われる。自分の信念にかかわらず、笊が傾く方に流れる、ということだが、総裁選の自民党の現状は正にそれをよく表している。第二次世界大戦が始まり、ドイツ軍が破竹の勢いでフランスに進撃するのを見た我、政官・メディア界は「バスに乗り遅れるな!」と国民を煽った。その結果8月15日を迎えたのだが、その責任を東條元首相以下“A級戦犯”に負わせて口をつぐんだ。ゾルゲと組んで目的を果たした朝日新聞以外は、それでも当時は少しは「慙愧の念」があったのではないか?
過熱気味の自民総裁選を見ていると、何と無くその当時の雰囲気が分かるような気がする。

 そこで私の日本政界の見通しについての仮説はこうだ。
1、旧体制と特権維持派が一致団結した福田派が政権をとる。
2、負けた?麻生派の処遇を巡って自民党内に亀裂が生じる。
3、福田内閣の「拉致問題」処理で問題が生じる。
4、テロ特措法、朝鮮半島のサプライズ、中国政権の動き、韓国大統領選挙、台湾立法議員選挙、台湾総統選挙、ロシア大統領選挙・・・と、次々に世界的変動が続くが、上手く対応できない。
5、野党から衆院解散要求、そして解散!
6、一般国民は、総裁選で両候補の真贋を見極めていたが、自民党内の総裁選だから投票権がなかった。漸く一般国民が改めて「投票」する。
7、その結果、自眠党は野党に転落、さりとて国際政治に疎い「野党」にも批判が高まる。
8、これを察した、自民、民主など、双方から志を同じくする者が新党を結成する。つまり、政界再編が起きる!
9、笊の上の小豆現象が起きる!
 政治評論家ではない、全くの素人の岡目八目だが、福田支持派の派閥、顔ぶれは、自民党の名を借りた「本来野党集団」だから、国民は支持しないだろう。それは、今までの密室談合で選ばれた森内閣や、窮余の一策だった?自社聯合政権が、如何に国民を無視し、この国の進歩を阻害してきたかを見れば歴然としている。村山内閣時代のツケが、この国を蝕んでいることを忘れてはなるまい。
 言い忘れたが、“野党第一党”の民主党については、19日に国連安保理が「謝意決議」をしたその意味も理解できていないようである。民主党は意固地になっていて、これは日本政府が仕掛けた結果だとして評価しない政治家やメディア同様の態度を取っているが、あきれてものも言えない。
 今まで外務省が懸命に努力してもその壁を崩せなかった、安保理という「戦勝国仲間」が、ロシアが棄権しただけで今回の決議をしたのだから、外務省としては偉大な成果を挙げたことに変わりは無い。
 外務省が失敗すれば嵩にかかって非難する方々が、今回の成功を「日本の国内事情から根回しした成果だ・・・」とか何とか言い逃れて評価しない様は矛盾していて異常である。まるでオーム事件の時の「ああ言えばジョウユウー」を思い出す。特に民主党議員に言っておきたいが、「テロ特措法」は、米国の勝手な軍事行動を日本政府が、理屈をつけて支援しているものでは断じてない。週刊誌的(最も今では全国紙よりも内容が濃いところがあるが)知識で、政治をしてもらっては困る。こんなことだから一年生議員の「タイゾー君」から、「誰だって政治家になれる!」と反抗されるのである。
 御承知なかった様だから改めて書いておこう。通称「テロ特措法」は、「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」というのが正式の名称であり、あまりにも長すぎるからこれを短くして使っているだけなのである。9・11テロでは、日本人も犠牲になったことをお忘れか?

 さて、先日の元公安調査庁・第二部長による「最近の朝鮮総連の動向と今後の日朝関係」という講演は、日本国内に存在する「朝鮮総連」の闇の世界を浮き彫りにしていた。「朝鮮総連に対する627億円の債務返還訴訟と緒方元公安調査庁長官らの“詐欺事件”」は、既に国民の関心が薄れているようだが、組織存亡の危機にあった総連が、なりふり構わず取った一連の行動の裏に、安倍政権の強力な締め付けがあったことを忘れてはなるまい。
 組織存亡の危機に立った彼らの焦点は「公安調査庁解体!」にあったとする分析には背筋が寒くなる。
 パチンコをやらない私などには想像も出来ないのだが、極めて博打性が高い今の器材を、博打性が低い器材に「改修」を命じられた業界は、これまた危機存亡の淵に立っていたから、627億円ごとき“はした金”を捻出することが出来ず、そこでパチンコ業界に顔が利く、自民党議員(OBを含む)を使って、これを阻止しようと懸命だったようだが、仮に「627億円」の損害を出しても、やがて北との国交正常化が出来れば、2〜5兆円の「戦後補償金」が見込まれるから、それで元が取れる、と踏んで、一時的に総連関連施設の名義を「緒方氏」に委譲する計画だったとの分析は、今回の政変と極めて符合するところがある様に思える。
 つまり、今回福田氏が首相になれば、一気に「日朝ピョンヤン宣言」に基づいて、北との関係改善が果たされる。そこで己の損得勘定第一に福田氏を担いだ面々がいる、との指摘は、なんとも出来すぎた「シナリオ」ではないか!
 その上、田中森一氏が著書「反転」に書いているように、検察庁法務省の外局であって、裁判所のように正義を裁く役所ではない。常に政権側であり「国策捜査」が主任務である。従って特捜部は、あくまでも「時の政権の意のままに動く」機関であり、新内閣による対北朝鮮政策変更が、その後の日本政治に甚大な影響をもたらすことは必至である。
 そうそう、前述した「仮説」に、もう一つ付け加えておこう。
 順番は2か3に当たるが、「25日の首班指名」で、福田氏がそのまま総理に指名されるとは限らない。野党候補は「小沢氏」で統一されているから、共産党は密かに民主党と手を組んで、首班指名は勿論、次回衆院選でも協力体制をとると約束したという。
 残るのは公明党だが、さて、大急ぎでその対策を立案中だろうが、政権から離れないための秘策はあるのかどうか。いずれにせよ、オーバーな表現を使えば、23日は「戦後日本の最大の曲がり角」であることは疑う余地がない。国民は、好むと好まざるとにかかわらず、「年金!格差是正!」と叫びつつ、笊の上の小豆同様、傾いた側にすがりつく以外にはない。それでもガス室送りになることはなかろう・・・と思っているかもしれないが。

 気が滅入る話ばかりだったので、少し口直しを。
 友人から、書籍やパンフなどが送られてくるのだが、その中から2つ御紹介しておきたい!

 まず女優の村松英子氏の演劇「薔薇と海賊」の御案内である。11月2日から9日の話だが御参考までに。
 次は後輩の家村和幸元2等陸佐が監修したものである。私が実業之日本社から出した監修本と同じく戦史を「図解」で表現したもので、「戦史の常識」を興味深く味わえる。御一読いただければ幸いである。