軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

上海会議・その3

 3連休とあって我が国は成人式が話題になっているが、台湾の立法委員選挙では馬英九候補率いる国民党が大勝し、台湾人が推す民進党は極めて憂慮すべき事態になった。3月の総統選挙は国民党の政権奪取の公算が大きい。さて、台湾はどこへ行く? ダメージコントロールに入るべき我が国政界は、今後のアジアの変動について、十分検討しているのだろうか?今後の南西方面の緊張が伝わってくるようだ。
 ところで「大陸から軍事雑誌と新聞が送られてきたから」と私に送って下さった方がいて、雑誌のテーマは「中米核戦争」「自衛隊の戦力分析」などであった。昨年3月発行のものである。何と無く気にかかる・・・

 ただし、北京オリンピック開催については、中国国内でも色々問題が山積していて、遅々として進んでいない部分が多く「時期が来ると強制させる気だろうが、人民がそれにどう反応するのか?」という現地中国人の極めて興味深いコメントもつけてあった。
 先日の北京訪問時に、完成が遅れている現場状況について、案内してくれた研究者に聞くと「最後は人海戦術がありますから」と言った言葉が妙に気になった。いわゆる「出稼ぎ」である「農民工」の中には、給料がもらえず、悲惨な目にあっているものも多いらしく、不満が鬱積しているともいう。明日は、これら中台関係に関する小さな検討会があり、門脇氏と私が分析した意見を述べることになっている。
 そこで久しぶりに昨年11月の「上海会議」のつづきを書いておくことにした。

(承前)午前の部は1203に終了したが、コーヒーブレイクの時に、厳しい口調で東シナ海問題について発言していた中国の参加者が、私に達者な日本語で「日本人は物事を深く考えるが、中国人は深く考えない。例えば「火車」である。中国人は「石炭を燃やしている『火』を見て『火車』と呼んだが、日本人は石炭を燃やして『蒸気』を作り、蒸気で走るから『蒸気機関車』つまり『汽車』とつけた。中国人の考えは、頭と腹では全く異なる。頭で考えていても、行動は違う。先生方は中国国民のそんな性格を全く理解していない」と語りかけたのだが、唐突な話題でどう考えるべきか戸惑った。 続いて「ガス田問題に対する中国側の態度をどう思うか?」と聞くので、「色々文句をつけてきているが、私が見た限りでは、今のところ日中中間線を越えて日本側に侵入してはいない。口では勇ましいことを言うが、実際の行動は慎重だなあーと思っている」と答えたところ、再び中国人の「頭と腹」論を言ったから、何かのシグナルなのか、あるいは彼が述べた東シナ海に関する強硬論は「頭」であり「腹(本音?)」とは違うと言いたかったのか? 又は李女史の靖国論のことを言ったのか、真相は不明であったが、面白い問いかけではあった。

 昼食後、川村団長の司会で午後の部の第2セッション「朝鮮半島問題と東北アジアの安全システム」が始まり、まず中国の女性研究者が「朝鮮半島非核化現段階に対する評価と未来の見通し」について大意次のように発言した。
朝鮮半島の非核化は着実に進めている。米国にとっての目標は、完全破棄、無能力化と高かった。北朝鮮は積極的に動いたと見る。年内に無能力化は終わる。
 再び、核の運用をさせないというのが米中の期待であるから、プルトニウムの材料の申告を求めている。輸入したということは、開発の意思があるということでもある。
 米国は今年中に『テロ支援国家』を外すだろうと思う。11月16日までに通告、11月末までに議会に通知することになっている。ただ、米議会と民間がこれを受け入れるかどうか?北朝鮮問題は進展すればするほど新しい問題が出る。
 イスラエルがシリアを爆撃したが、米国は北にシリアに対する核物質の拡散について説明を求めているだろう。韓国は大統領選の前に会議を望んでいるが、それは選挙前に成果を誇張するのだろう。
北は米国との国交を望むだろう。韓国の次期大統領に誰がなるのか関心がある。
 金正日にとっては、米国の約束をどれほど信じられるか?核武装放棄が何を意味するか、金も分かっていないだろう。米中間のバランスをとるための戦略ではないか?」
 若手研究者はなかなか率直にものを言う。これは、自分の論文や考察を発表し、それが上からどのような評価を受けるか、つまり、登竜門、科挙の役割を果たしているからだろうと思われる。
 しかし、年が明けたが、彼女の「年内に北の無能力化は終わる」「米国は年内にテロ支援国家をはずすだろう」とした予測は見事に外れた。その原因は北に何か問題が生じたからか、彼女に聞いてみたいものである。
 これに対して我方の半島専門家・武貞氏が「北東アジア戦略環境、半島情勢と日中関係」と題して次のように意見を述べた。
「北は核兵器を放棄するか?開発の目的から推察して、放棄しないだろう。なぜならばそれは、半島の統一政策と関係があるからである。金正日核戦略によって韓国は戦意を失うからでもある」といったのだが、これは的中している。そして、北に対する中国の立場(中朝関係)についての六つの間違いを指摘し、「中国が恐れているのは、日本の核武装であろう」と締めくくった。
 中国は、北の核開発を断念させようとしているという発言は興味深かったが、日本のメディアではほとんど報道されなかったイスラエルのシリア爆撃を、きちんと分析しているのは大したものだと感じた。この攻撃の結果、北の核問題が頓挫し、米国が慎重になったのかもしれない。
 いずれにせよ、自国の安全保障上、周辺諸国核武装の芽を摘むために策をめぐらせている中国と、直ちに軍事力を行使するイスラエルに比べて、我が国の対応の違いが浮き彫りになった事は事実である。自衛力は“お飾り”なのである!

イラク原子炉攻撃!

イラク原子炉攻撃!

ジョークでわかる中国の笑えない現実

ジョークでわかる中国の笑えない現実