軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

散るぞ悲しき!

 昨夜は九段会館で開かれた旧陸軍軍人会に招かれて、梯久美子さんの講演を聞いてきた。梯女史はご承知の硫黄島戦のノンフィクション「散るぞ悲しき」(大宅壮一賞受賞)の著者である。
硫黄島が問いかけるもの」との題で、取材や映画製作に関連した「裏話」をしたが、会場を埋めた大先輩方は昭和36年生まれの彼女が「硫黄島の死者からの問いに真摯に応えようとする姿」に感動していた。この著書は既に海外7カ国で翻訳出版されているという。ますますの活躍を期待したい。

 ところで、先日は韓国からの漂流物被害を書いたが、今朝の産経一面トップには沖縄へ漂着する「中国ゴミ13倍増」と出ていた。実は韓国からもそうだが、中国からの漂着物の方が異常に増加していて、西日本の海岸線は危機状態だ、というのが私に資料を送ってくださった環境問題研究者の本音だったのだが、産経がその本質を報道してくれた形になった。
 調査をまとめた山口防大教授は「中国では大半の人が漂流、漂着ゴミの実態を知らない筈。日本からこうした実態を情報発信していくと共に、政府レベルで海への不法投棄などの取締りを働きかける必要がある」と指摘しているが、彼らは東シナ海に投棄すればゴミがどこに流れていくか位の知識は当然持っていて、しかも流れ着いた先の「お人よし国」が手弁当で処理してくれることも十分承知しているから、せっせと海洋に投棄しているのである。その昔、日本海側で座礁した「ナホトカ号」というロシアの船から大量の重油が流れ出して、日本海沿岸が広く汚染されたことがあったが、自衛隊や住民が総出で回収した。茨城の港でも、北朝鮮の船が座礁してスクラップになったことがあったが、これも「人が良い」住民の税金で処理された筈である。
 ロシアや北朝鮮が出来たことだ!中国人民もバスに乗り遅れてはならない!というつもりかどうかは知らないが、ゴミの実情を彼らに情報発信する程度では解決しまい。毒入りギョーザ事件に対する応対がそれを示しているではないか。
 海兵隊員の少女暴行事件でこれほど大騒ぎし、知事が米国大使に厳重注意し、市町村議会は決議文を突きつける沖縄県も、中国からの膨大な漂着ゴミに対してはまったく反応していないらしい。やがてマングローブが全滅し、珊瑚が被害を受けても、普天間基地代替施設建設で痛む珊瑚やジュゴンに比べれば、中国からのゴミなんぞ、許容範囲なのだろう。
 コメントに米国と特定アジアに対する沖縄や朝日の対応振りを比較したものがあったが、まさにその通りであり、これを偏向と呼ばずして何というべきか。
 中国の毒入りギョーザ事件捜査は中国国内で揉めているようだから静観するとして、変だなあ〜と思っていたことに関する回答が産経24面に出ていた。作家の高橋三千綱氏の「今週のご意見番」というコラムだが、「JT会長さん、ギョーザ中毒被害者救済を」と題して、「そういう一連の騒ぎの中で、われ関せずとしているのは、問題のギョーザを輸入した『ジェイティフーズ』の親会社であるJTだ。事件は自分達の会社を離れて、外務省と農水省、それに警察に移っていると、そ知らぬを決め込んでいる。たとえ毒は中国側で混入されたとしても、輸入会社としての責任は厳然としてある。
いかにも対応が無責任主義の官僚と同じである。それもそのはずで、JTは特殊法人であり、株式の50%は財務省が持っている。だからJTは財務省(旧大蔵省)の大切な天下り先で、事務次官クラスとなると、会長として天下りしている。今回の事件でも全く顔出さない現在の会長は、あの涌井洋治氏だ。大蔵省主計局長時代、石油卸商の泉井某から、シャガールの絵をもらったことがばれて、事務次官に到達できなかった御仁だ。それがいつの間にかJTにもぐりこんでいたのである。推定年収4000万円。この6月で丸4年の天下り生活になる。涌井氏に申し上げたい。この事件で一番忘れてはならないのは、今も苦しんでいる大勢の被害者なのだ・・・」
 これでこの事件の取り扱いが極めて遅く、先に株が取引され、首相も奥歯に物が挟まったような対応しか取れない意味が理解できた。勘ぐれば、中国の天洋食品という国家企業に相通じるものがある。双方共に同じような対応振り・・・いやはや・・・。
 高橋氏や梯女史のような作家は、取材と資料整理に長けている。多くの国民は「ノーパンしゃぶしゃぶ」といっても既に忘却のかなた、一連の官僚汚職・腐敗事件のことなんか忘れてしまっている。
JTといってもピンとこないのではないか?前身は「日本たばこ産業」とか何とか昔は言った公社である。今では健康上問題になっている「タバコ」を取り扱う「特殊法人」である。ニコチンを商売にしているだけあって、有機リン関係の「毒」にも鈍感らしい。
 3面には桜井よし子女史が「『国民主役』言う資格なし」と福田首相に手厳しい論評をしている。道路財源問題など、国会で追及された首相が「正直言って私には分からない」「国交省によく聞いていただきたい」と答えたことに対する怒りである。「斯くしてツケは全て国民に回される。この欺瞞だらけの構図を見ない福田首相には、国民が主役、消費者が主役という資格はないのである」と桜井女史は言うが、国民もそろそろ目を覚ますときではなかろうか。
 
 矢弾尽き果てて任務を果たせなかった栗林中将は「散るぞ悲しき」と詠んで部下と共に散華した。
多くの散華して行った英霊が、今、この国の乱れきった現状を見たら、「散ったことぞ悲しき」と嘆くのではないか?
 19面には、平将門首塚に関する「聖地巡礼」と云うコラムがあるが今日は「畏敬の念持つ大切さ」として、首塚にまつわる物語が出ている。
「将門を祭った神社は江戸を守るために遷座したが、塚までは、流石に動かすことは出来ない。幸いなことに、江戸時代、あたりに屋敷敷地を与えられた大名はみな、塚を築山と見立てて大切に保存した。だからこそ泰平の世が長く続いたのか、はたまた泰平の世だから塚を大切に出来たのか、それは受け取り方次第だろう。
 関東大震災後、塚は崩され、発掘までなされた。その後の日本は大東亜戦争へと突き進み、壊滅的な敗戦を迎える。「畏れ」を失った人間と国家にどんな運命が待ち受けているか、将門は無言で我々に教えてくれているような気がしてならない」と桑原記者は書いた。
「畏れ」を忘れ、「供養」を無視する傲慢さの結果が、やがて証明されるときが来るのではなかろうか、と私も思っている。

散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

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常に諸子の先頭に在り―陸軍中將栗林忠道と硫黄島戰

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父・山口多聞―空母「飛龍」の最後と多聞「愛」の手紙 (光人社NF文庫)

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靖国公式参拝の総括

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