軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

マスコミの“ご都合主義”

 相変わらず、三浦逮捕劇に混じって「あたご」事件が続いているが、今や防衛大臣更迭のためにメディアは死に物狂いのように見受けられる。
 海保の“指揮下?”を逃れて、当直士官がヘリで防衛省に報告にいった行動が悪いという、たまげるような記事や報道がそれを示している。
 一体マスコミ各社は、自分達の社員が犯罪を犯したとき、社員を自ら取り調べもしないで警察に引き渡すのだろうか?勿論、現行犯でしょっ引かれた後であれば警察の取調べに従うほかはないだろうが、インサイダー取引をした社員も、第一に部外機関の取調べを受け、その後一時保釈されて戻ってきたときに「社内調査」をするのだろうか?その間、記者会見では「本社は全く知りません」で通すのだろうか?その昔、新聞記者が横断歩道を渡っていた医者を撥ね殺した時、当該新聞は夕刊の片隅に小さく「医師跳ねられ死亡」とベタ記事を書き、記者の職業を「会社員」と改ざんした。しかも氏名には「さん」付けだった。流石に怒った遺族が新聞社に抗議し、それを週刊誌がすっぱ抜いた。


 腹を立てたご遺族は「もし自衛隊の人が事故をおこしたら、“自衛官”と書くでしょ。どうして“うちの記者”と書かないの」と電話で抗議したというから面白い。
 ところが自衛官の「善行」に対しては、例えば朝日は「自衛隊員」ではなく「捜索隊員」とわざわざ書き直す。

 中日新聞では、人命救助した「元自衛官」は「通行の『会社員』」となり、表彰式では『お手柄の男性』となるのである。いちいち自衛官の肩書きを「別の肩書き」に変える努力にむしろ“敬意”を表したくなる!

 ことほど左様に、マスコミは『自衛隊』が大嫌いなのである!我々から見れば『異常すぎる』のだが、彼らはそれが『正常』なのだから、水と油、いちいち構ってはいられない、ということになる。 そこがまた彼らの付け所でもあるのだが・・・。今回の「イージス事件」もその線上にあることを、石破大臣は十分考慮に入れて対応すべきである。
 自分の組織防衛には「自己防衛本能」がうまく作用するのだが、これが政府や「防衛省」であると彼らは許せないらしい。しかし、このような「自己中」はおかしいとして、その後確か産経が主導して「公平」に取り扱われるようになったはずなのだが、継承されていないらしい。

 その産経が、今朝の一面トップで「航海長聴取問題か」「イージス事故・防衛省対応は自然」と書いた。「防衛省が、海上保安庁の捜索前にあたごの当直士官だった航海長をヘリコプターで省内に呼び、事故に関する聴取を行っていたことを一部のメディアや政治家が問題視している。だが、組織、とりわけ軍事組織が、早い段階で状況把握することは鉄則である」と書き、「憲法軍事法廷など『特別裁判所』の設置禁止条項がある限り、防衛省自衛隊は将来にわたり、こうした批判を受け続ける筈だ。・・・軍事法廷のない自衛隊は、世界有数の装備を有する『警察』の道を歩み続けるのだろうか・・・」と“皮肉”った!。まさにここに問題があるのである。
 自衛隊が“軍隊”でない限りいつまでもこのような異常状態は続くであろう。そして同盟国も、そんな『警察』部隊に高度な機密を流すことはしなくなるだろう。
 イージス機密漏えい事件では、自衛隊内部の規律の緩みや教育の不徹底を散々罵倒したくせに、今度は防衛機密に接することは許されていない「保安官」や「警察官」に、高度な機密情報を「公開」させようとする、そんな矛盾に気がつかない?ほどマスコミは“興奮”している。
 そんなに自国の防衛省の『隠蔽体質』が気になるのなら、発行部数を『隠蔽』している新聞各社はどうなのか?
 古紙再利用問題では、各社とも奥歯に物が挟まったような記事で製紙会社を非難したが、新聞紙の古紙利用のからくりについては各社「談合して口を噤んで」いはしないか?
 新聞販売店が困っているのは、再利用のための「古新聞」回収率が大幅に落ちていることだという。発行部数水増しの裏には、古新聞の回収が命綱であり、その命綱が皮肉なことに中国に持っていかれて妨害されているからだそうだが、真実はどうなのか?800万部などといわれている「発行部数」の実態は、案外50%前後なのかもしれない。
 過剰な「架空の」発行部数は「広告主」獲得のための重要な手段であり、事実を公表すれば広告は減る。更に、新聞代値上げを控えてこられたのは、印刷時点から見積もりに入っている、つまり最初から「再利用する部数の量」にあったからであり、それが回収できなくなればどうしても「古紙」の部分を正規の用紙で補填せざるを得まい。そうなれば新聞代値上げは必須になり、値上げすれば読者は減り、広告も減る。各社とも頭が痛いことだろう。そんな内部事情はおくびにもださず、正義漢ぶって他人を非難しているが、新聞各社の経営難、偽善はいずれバレルことだろう。
 自己防衛?と隠蔽体質はメディア各社の方が数段上であることを自覚して、防衛省も「自己防衛」に徹して“戦って”欲しいものである。

 ところで昨日は、来日した上海国際問題研究所長一行6名と、夕食会を含めて6時間討論してきた。オリンピック裏話など、興味ある内容だったが、今日は割愛する。
 また、私が体験談を連載している雑誌「丸」の4月号が届いた。たまたま、空幕防衛課勤務時代の「私服と制服」組の連携振り、当時流行った「総合的安保論」のまやかし、NLP問題について、所感を書いているので、ご一読いただければ幸いである。