軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

治にいて乱を忘れていないか?

 21日は早朝から関東平野を横断して茨城県に向かい、水戸市にある茨城県神社庁での夏季講習会に参加してきた。午前10時〜12時、午後1時〜3時の4時間講演、20分間質疑応答だったが、日の丸が翻る荘厳な会場で、130人を越える熱心な参加者を前に『我が国の防衛と周辺情勢』と題して“防衛漫談”をしたのだが、我が国を取り巻く戦略環境について、少しはご理解いただけたように思う。
 質疑では大戦経験者から、靖国問題中韓内政干渉自衛隊を束縛しているのは憲法9条では?というご意見が出されたが、的確な指摘に感心した。

 昼食時に宮司さん方から、日本人の特性が失われていく有様に不安を感じておられるというお話を伺ったが、特に核家族と家族構成上、日本人としての歴史観、文化、習慣がどんどん消滅していくという危機感には同感であった。

 家族共働きの現状から、親が不在の子供達は“放任”されていて、躾はじめ日本人として人間としての基本が植えつけられないという。昔はおじいちゃん・おばあちゃんが孫の相手をしつつ、自らの体験を語り聞かせる事によって伝統が継承されていたものだが、それがなくなりつつあるという指摘は日本の将来を占う一つの視点であろう。

 たまたま昨日会った知人が同じようなことを言った。孫に正しい日本文化を話して聞かせていると、娘(母親)が『お父さん、本当のことを教えないで』と言ったという。小学高学年の孫は、色々な疑問をおじいちゃんにぶっつけてくるらしいのだが、“正しい話”を学校で発言した場合『うざい奴』として煙たがられ、仲間はずれになるというのである。
 つまり、教科書では教えられていない日本の正しい近現代史を学校で話すと、昔は『知ったかぶり』として敬遠されることはあったが、今では全否定され、うざい野郎だと目をつけられるというのである。
 例えば孫が友人宅を訪問する場合に「玄関では履物をちゃんと揃えておくものだ」と教え孫がそれを実行しただけでも、昔は『偉い!』と友人からもその親からも褒められたものだが、今では「うざい奴」として冷笑されるというのだから驚く。
 だから、正しいことを知っていても『知らぬ振りするように』親が指導するから子供は皆と調子を合わせて履物もそろえない。知人は、娘は子供が『仲間はずれにされないように』配慮しているのはわかっているのだが、果たしてそれで良いのか?と悩み、あきれて絶句するのである。

 いやはや、私は「240世帯あるわが集落で、祭日(憲法記念日を除く)に国旗を掲げる家は我が家だけ!」と失望落胆しているのだが、今やそんな場合じゃない、と思い知らされた。神社・仏閣、風習、伝統・・・大事なものがどんどん失われていくことを、心ある国民は心配しているのだが、我が国の指導者達は揃って『不感症』らしく思われる。


 ところで、予想通り、実力行使を放棄しているわが国籍のタンカーが海賊に襲われたが、政府に打つ手はなさそうだから海賊たちは笑いが止まらないだろう!
 その上来年一月にはインド洋から海自部隊を引き上げる予定だというし、空自のC-130部隊も引き上げ予定だという。公明党が何といおうと自民党は国家利益を守るため、毅然として継続させるべきだと思うのだが、果たして福田首相にその勇気はあるのかどうか? まあ、父親譲りの『超法規』で継続してくれるのではないか?とかすかに期待しているのだが、そうでなければ自由諸国からはもとより、世界中から信用されまい。海賊もテロリスト達も、無抵抗なところをどんどん襲うだろう。
 ムシャラフ大統領が辞職したパキスタンではすぐさま治安が悪化した。テロリストにとっては強硬派・ムシャラフ大統領の辞任は「大歓迎」だったに違いない。このまま治安が悪化し、核弾頭がアフガンのテログループに流れたら・・・。
 イランも、折角治安が回復し始めたイラクも、そのとばっちりで、すべては元の木阿弥になりかねない。イスラエルはどこが何を言おうと、自国の主権を確保するため、単独行動に移りかねない。国家国土が消滅する危機を抱えるイスラエルは真剣である。イスラエルは『核保有国』である。
 五輪でメダルを期待され“金メダル宣言”までして景気よかった「Hジャパン」の、チヤホヤされた覇気のない選手達とはわけが違う。負けてもコマーシャルで食っていけるような甘やかされた“選手”には、そのガッツはとても理解できまい。今更頭を丸めても無意味である。女子ソフトボールの金メダルは実に見事だったが、これが現実の日本人男性と女性の地位逆転を象徴していると考えるのは考えすぎか?
 そんな中、攻撃は最大の防御ならぬ、「防御は最大の攻撃」と女子ソフトボールの応援にFAXを送った人がいるとTVで知って、自衛隊の『専守防衛』の精神が、スポーツ界にまで浸透したか?と驚いたのだが、運動会と『戦争』はわけが違う。闘争心なき男は男ではない!と元戦闘機乗りの私は考えているのだが、個人的には何とも情けない限りである。
 各界揃って、イスラエル人のつめの垢でも煎じて飲むべきだろう!

 夏休みを満喫した(であろう)先生方は、本業である務めを九月の中旬に開こうとする政府に逆らっていて、やはり下旬にずれ込むだろうというのだが、それは『サボり』である。その間の歳費は当然返納してくれるものだと期待したい。何とものんびりムードの日本政界にイライラする。明日で終わる北京五輪の後の中国には異常な景気後退が予測されている。
 五輪期間内に『交通制限』『デモ制限』『電力制限』『生産制限』などで押さえつけられ、もろもろの被害を蒙った人民の不満が噴出し「大混乱」になりかねないが、それに対する隣国日本の対処方針は出来ているのか?
 情報によると、例えば北京五輪で消費された電力量は、国家運営に重大な影響を及ぼすほどのものだったらしく、今後の回復は綱渡り状態だ、という。電力供給は得意とする『口パク』では済まされない! ただでさえ電力不足に悩まされていた中国の主要都市である。閉会式が終わり電力分配が始まっても、それに応じるだけの『燃料』がないらしいから、石油、石炭はもとより、冬に向かう暖房用の燃料まで火力発電に流用しよう?というらしいから、世界中の森林が危険な状態になる、との予測さえある。本当だとしたらたまったものではないが、この国は毛沢東時代の『大躍進』で、非科学的な「大躍進」を組織だって実施した実績がある。万一そうなれば、何が環境保護だ、ECOだといいたくなる。中国にとっては『背に腹は代えられぬ』のだろうが、世界、特に周辺諸国にとっては迷惑この上ない!
 まあ、いずれにせよ一空自OBの心配するような規模のものではないが、『治にいて乱を忘れている』かのようなわが指導者達の姿を見ていると、病み上がりのことはツイ忘れて、やはり気がかりになる。


『大相撲』や『神社仏閣』に象徴される日本国独自の文化伝統の破壊、教育の退廃のみならず、急転する世界情勢に対応する物理的準備が出来ているのかどうか?
 身命を捧げて祖国に殉じた諸英霊は、没落していく祖国の姿に憤懣やるかたないであろう。ただでさえも靖国参拝をしない首相、『過去の大戦で近隣アジア諸国に多大の被害と迷惑をかけた』と衆参両院議長から、こともあろうに両陛下の前で『罵倒』され続けている諸英霊はたまったものではあるまい。
 非常識な彼らに対する“天罰”は時間の問題だと思うが、せめてその前に、予想される混乱だけでも回避する責任を果たして欲しいものである。
 防衛省に限らず黙々と勤務についているであろう各省庁の担当者各位の、治にいて乱を忘れぬ精神に期待したい・・・

おじいちゃん戦争のことを教えて

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おじいちゃん戦争のことを教えて―孫娘からの質問状 (小学館文庫)

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心のふるさと―我が民族存亡の一大事に思う (1981年)

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ライシャワーの見た日本 (徳間文庫)

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