軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

四面楚歌!

 雨がやんだので国旗を掲げて新聞を取ってきた。一面トップは「小沢氏東京12区に『国替え』?」という見出しである。彼ほどの大物になると、どこから出馬しても当選するというのだろうか?選挙民を馬鹿にするにもほどがある、と素人の私などは思うのだが、浜松に“落下傘降下”して当選したチルドレンもいたから、政治の道は理解に苦しむことばかりである・・・

 今朝の産経24面の「透明な歳月の光」欄に曽野綾子女史が、「一番怖い政治家・精神と生活が見かけ倒し」と題して、シンガポールで世界のニュースを見た感想を書いている。
「BBCとCNNで、世界のニュースはだいたいわかる」が、「日本の話題はほとんど出てこなかった」「つまり日本人はそれだけ指導者がなくても生きていける自制心のある国民だという証拠と思えばいい。スト、地震、飢餓、国会乱闘、何もない国だからニュースの映像を取るのもむずかしいのだろう」と皮肉り、そこで帰国後週刊誌で知識を補充し、「総裁候補の麻生氏が『俺は昔から金持ちやってたから』と言ったと週刊誌は批判ぎみだが、麻生氏は事実を述べているだけだ。政治家は金持ちの方がいいに決まっている。一面では、というのは、貧しい生活の実態を知らないのは困るのだが、政治で儲けようとする人はもっと困るからだ。金があれば利権漁りをする率が減るかもしれないと私は単純に期待するのだ。精神と生活の実態が見かけより貧しい政治家が何をやるかわからないから一番怖い。
 一方マスコミは、政治家であろうと誰であろうと、ひとりの中に善悪が同時に内在することに耐えられないと扇動者に堕する」と、なかなか含蓄のある文章である。


 ところで昨日午前6時56分頃、高知県足摺岬沖の豊後水道周辺の領海内で、潜水艦の潜望鏡らしきものを、周辺海域を航行していた「あたご」が発見、捜索を続けたが約一時間半後に見失ったことがわかった。
 発見したのが、先日漁船との衝突事故で、海難審判を受けている「あたご」というのも皮肉だが、撃沈していたらどうだったろう。
 事故後、艦長交代、乗組員入れ替え、“事件”後の集中指導等で息つく暇もなかったであろう「あたご」乗組員は、多分練成訓練中だったのだろう。
「艦長ら二人が約1キロ先の潜望鏡のようなものを艦橋から目視で発見」と記事にあるから、早速教育成果が現れた?ようだが、最高指揮官“不在”では指揮系統が迅速に機能したのかどうか?「あたご」が、事故に懲りて膾を吹かなかったことは期待出来そうだが・・・
 防衛省は日本領海内を潜望鏡を出して航行していたところから、「意図的な領海侵犯だった可能性が高い」と発表したが、取り逃がしたのでは何とも早心細い。

 空自OBに過ぎない私にも問い合わせがあったが、詳細は報道以外には知らないのでコメントのしようがなかった。しかし面白いことに「撃沈すべきだった」という意見が多かったのは、日本人にかなりのストレスが溜まっている証拠かもしれない。
 潜水艦の国籍については、いずれ判明することだろうが、可能性が高いのはロシアと中国である。ロシアは航空偵察活動を活発化させているから、海中活動も活発化していてもおかしくはない。
 しかし侵犯場所から推察すれば、中国海軍である公算は高いといえよう。その目的は何か?いわずと知れた東シナ海方面の今後の作戦に関する情報収集であろう。
 それとも「最高指揮官」に振られた自衛隊員の士気を確かめに来たのかもしれない・・・
 
 今年最大の危機であった台湾海峡周辺事態は、台湾の「自主的退歩」で回避されたが、これは大陸にとっては「併合」と同様の大戦果だと認識されている。後は時間をかけて料理するだけ、彼らは念願の「台湾統一」に成功したと認識しているから次は東シナ海である。先日の会議で「尖閣(釣魚島)は中国固有の領土である」と彼らは平然と言い放ち、沖縄(琉球)はその昔「朝貢国」であったし、沖縄トラフまでは中国の領海である。東シナ海に「日中中間線」などは存在しない、と言い張った。
 その考え方の延長線上に今回の「潜水艦による領海侵犯」があるとすれば、「人の嫌がることをしない」などという妄言を吐いている余裕はなかろう。直ちに厳重な警戒態勢を取るべきである。しかも「偶然?」にも、「露、大陸棚領有を主張」「海底資源・北方領土周辺にも触手?」という報道が4面に出ている。「ロシアが200海里の排他的経済水域EEZ)を越えるオホーツク海中央部について、その海底が自国の大陸棚であると主張する調査報告書を作成し、年内にも国連に提出する」というのである。
 オホーツク海ソ連時代から彼らの「戦略的要衝」であった。米国が黙認するだろうか?11月の米国大統領選挙を前に、相当な揺さぶりをかけ始めているようだが、次期大統領はこれにどう対応するか?
 このロシアの「大陸棚領有」論は、間違いなく中国の東シナ海領有論の強力な掩護となる。外務省は何か手立てを打っているのだろうか?

 今回の「国籍不明潜水艦による領海侵犯事件」では、多分、米国原潜が密かに追尾しているに違いないから、いずれその正体はばれるだろう。それでなくとも、当該潜水艦が帰港したときに正体が明らかになる。残念なのは、そのような戦略情報をわが国は「自前で入手することが困難」なことである。

 北方領土竹島は不法占領され、竹島からは「アマチュア無線電波」が、わが国のレーダーサイトなどに向けて「妨害電波」として発信され、対馬は「観光客」に占拠?され、そのうえ四国南方海上は国籍不明潜水艦に「領海侵犯」されている。
 やがて尖閣東シナ海問題が浮上するだろうが、そうなればまさにわが国は「四面楚歌」、次期首相には、己の私服を肥やす“貧乏人”になってもらっては絶対に困る、ということになる。
 北朝鮮に何らかの異常事態が発生して半島のバランスが崩れ、韓国が“それどごろ”ではなくなるか、中国国内のバブルが崩壊して胡錦濤政権が“それどころ”ではなくなるか?
 元寇の時の「天佑神助」に期待するばかりが日本精神ではあるまいに、国内政治を見ている限りでは、BBCもCNNもニュースとして取り上げない、なんとも「波穏やか」なアジアの大国・日本の今日この頃ではある。

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