軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

秒読み段階に入った2008年危機

 昨夕は、桜林女史の出版記念会に参加して、久しぶりに多くの盟友と歓談して来た。彼女の著書「海をひらく」は掃海部隊の秘話を集大成したもので、このような「歴史に埋もれた部分」に光を当てる作業は大切なことだと思う。南極観測船「そうや」に続く今回の「掃海部隊」、次のテーマは海軍航空隊の秘話を是非!と資料を渡しておいたが、才能豊かな彼女に大いに期待している。
 会場で話題になったのは次期首相の“健闘”だったが、失言癖?はあるものの、明るさに期待できる、というのが専らの所感、これまた大いに期待しておこう。

 ところでメディアは解散と衆院総選挙の時期に話題は移っている。一に政局次第だが、「10月21日公示、11月2日投開票」説が急浮上しているという。米国大統領選挙までに決着しておこう、ということらしいが、いよいよ2008年危機も秒読み段階に入ったことを痛感する。

 国連総会も始まっており、早速25日には麻生新首相も総会に出席するが、世界はグルジア問題などで厳しい状況下にあることを自覚していって欲しいものである。
 ロシアは「イラン問題」の協議をボイコットしたし、欧米とロシアとの対立は顕著になっている。レイムダック化したブッシュ大統領の国連「最後の演説」が残っているが、テロとの戦いでどちらかというと「一国主義」を邁進した米国も、複雑化した国際情勢と国内金融危機を見据えて、国連の枠組みを“尊重”する姿勢に変化せざるを得ないのだろう。つまり「世界の警察官」として、地球上のあらゆる地域に“干渉”して来た米国だったが、いささか疲労して息切れし始め、不干渉主義に戻りつつあるように見える。つまり、外ばかり見ていたが足下が危うくなってきたということなのだろう。
 それがわが国の防衛を“お任せ”してきた同盟国の現状であることに気がつかねばなるまい。「自分の国は自分で守り、足らざるを同盟で補う」という戦略の基本的なルールを忘れた国は滅びるということは歴史が証明している。わが国周辺に紛争の種は尽きない。
“駄々っ子”北朝鮮は、IAEAの査察を拒否して要員を追放、監視用カメラ20〜25台も強制撤去、1週間以内に核物質を注入するという。
 その北朝鮮は、首領様の健康状態悪化で身動きが取れない有様。産経によると、米国情報機関が(1)精神的障害はないが身体的な障害がある(2)無力化状態(意識不明)が長期化する(3)死亡する、の3パターンに分けて、権力継承シナリオを分析中と伝えられているが、わが国の担当機関も鋭意分析中であろう。わが国はそれに加えて「拉致問題」を抱えているから複雑である。しかし、外務省には「拉致問題が解決しなければ北に支援はしない」という原則が確立している。問題は何時になったら日本政府は本腰を入れて被害者を取り返してくれるのか?という家族と国民の切実な願いと無策に関する怒りである。
 首領様が死亡してはじめて「解決に進むのか」、それとも逆に「一層混沌として有耶無耶になるのか」
 新内閣の顔ぶれには、そのあたりが見えないのが心配だが、いずれ遅かれ早かれ「北朝鮮の後継者問題」は表面化するだろう。その際には機を失せず行動して欲しいものである。

 南西方面では、東シナ海問題、尖閣問題が中国との間で紛争の種だが、これは一方的な相手の要求に過ぎない。沖縄を訪問している台湾の李登輝元総統が、仲井真知事との昼食会の席で「尖閣は沖縄に所属する日本領」だとの持論を展開し、馬政権は「漁業権とは関係がなく、政治的にやっているだけ。(日本は)神経質にならないほうがいい」と述べたという。全くの正論だが、これに対して台北駐日経済文化代表処は「李元総統の個人的見解」とし、「(尖閣が)中華民国(台湾)の領土であるとの一貫した立場に変化はない」と表明した。おそらく中国政府も李発言に何か難癖をつけてくるだろうが、そんなことより拡大しているメラミン入り粉ミルク事件は、一人っ子政策を取っている中国にとっては、親たちの「怨念」が結集して、国内騒乱の種になり兼ねまい。
出来レース」の五輪が終わったとたん、経済失速、国内騒乱では、2010年の上海万博にも暗い影を落とすことになる。国内問題を海外に転嫁する癖があるこの国の行動は、継続して監視しておく必要がある。
 グルジア問題で欧米と対決姿勢を崩さないロシアとわが国は、北方領土問題で「紛争当事国」の関係にある。勿論「竹島」を不法占拠している韓国とわが国は「紛争当事国」である。北朝鮮は言うに及ばず、台湾もまた嫌日?の「馬政権」が支配した。まさに四面楚歌!周辺の「危機」よりも、わが国自体の危機回避策を早急に確立しなければならない。

 そんな中、今朝の「正論」欄で、先日豊後水道南端で海自が「国籍不明潜水艦」を見失ったという報道に関して、中国軍事専門家・平松茂雄氏が「『世界一』が泣く海自の失態」と題して書いた文には悲しくなった。とりわけ「インド洋での給油活動に海上自衛隊の重点が移り、日本近海の護衛艦の数が減り、これまでのような軍事演習が出来なくなっている」点を指摘し、そのうえ「原油高による燃料不足で、毎年秋に実施される軍事演習を今年は中止」というが、インド洋上での給油活動をしている間に「中国の日本周辺海域での活動は拡大し活発化しているのに、海自が自国の海域を守るための演習が出来なくなっているとは由々しい事態だ」「海自は自国の海域防衛という本来の任務に立ち戻る必要がある」というのだが、国際関係上から給油支援は必要だろうから、問題はそれに“かまけて?”自国海域防衛という任務をおろそかにするな!という平松氏の警告だろう。

 皮肉なことに、原油高で自国の訓練は自粛?させられる反面、高価な油を他国の軍艦に給油する。普通の国だったら、緊急時に備えてもっとわが国の防衛費を増加せよ、という声が聞かれるものだが、原子力空母の配備に、放射能漏れを危惧したいつもの団体が「反対行動」をするさまが報道されるお国柄である。
 その空母甲板上に「はじめまして」という人文字が書かれていたが、そんな同盟国や自国軍隊に冷たい対応を取るメディアばかり目立つこの国は、2008年危機を乗り越えられそうにないような気がする。国が滅びればメディアも同時に滅びるのだが、その自覚はないようだ。例え任期は短く?とも、麻生新首相の、近づいている危機に対する「外交・防衛」上の英断を期待したい。

海をひらく

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イラク原子炉攻撃!

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竹島は日韓どちらのものか

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崩壊日本国再生論

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