軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

小泉元首相、政界引退

 お付き合いいただいている方が、旧軍の方が多いから当然といえば当然だが、このところ訃報が続く。陸士48期卒、元明治薬科大学長も勤められた高橋正二氏がこの夏亡くなったと24日に友人から聞いた。高橋氏には、講演会で色々体験談を伺ったし、お手紙でご指導もいただいた。95歳だったと思うが、記憶も鮮明で見事の一語に尽きたから、今しばし現役で国のためにご尽力頂きたいと思っていた・・・。
 たまたま、一昨日は、大西滝治郎中将の従卒だった山本兵長が8月末に89歳で亡くなった、と御長男から葉書が届いた。
 松島基地司令時代に、近所に住んでおられた山本氏はよく畑仕事に行く前に官舎に来られて昔話をして帰られたものであった。畑仕事は朝の7時頃から取り掛かるそうだから、私にとっては「明方」の来訪者であった。
 基地は山本氏から「大西滝治郎中将の制服」を寄贈されていた。貴重な品だったが、展示してある「広報館」は、バラックのみすぼらしい建屋で、本来ならば靖国神社に展示すべきものだと思ったが、同じ町内の山本氏の意思に沿って基地で保管していたのである。 しかし、戦後世代の隊員たちの殆どはそのいわれも知らないし、第一、大西中将の形見と言っても知らないほど時代は変わっていた。
 ある時、山本氏が寄贈した服に参謀肩章がついていない!と怒って司令室に来られたのがお知り合いになるキッカケだったのだが、探させたところポケットに入ったままになっていて恐縮したものであった。
 広報館の整備費等は予算計上できるはずもなく、施設隊が気を利かせてバラックを修理保持している有様だったが、ショーケースなどは、町内の店から譲ってもらった中古品などで、私はあまりにもみすぼらしいので、せめて絨毯でも敷くように指示し司令室の絨毯をはがして広報館に敷け、とまで言ったことがあった。
 その後、たまたま司令室の絨毯を張り替えることになったので、それを実行したのであったが、それ以降、感激した山本氏は畑に出る時にいつも官舎に立ち寄って下さることになった次第である。
 航空機を使い果たして戦力を失った「航空部隊」ほど情けないものはない。フィリピン決戦に備えて飛行場地区に複郭陣地を構築しても、武器は僅か。残った操縦員をいかにして台湾に移動させるか、大西中将が苦労していた頃のニッパハウスの生活ぶりをうかがって涙したものである。
「回想の大西滝治郎(門司親徳著)」の175ページに、「朝食に、彼(山本兵曹)がどこからか玉子を仕入れて長官に出すと、実施部隊に玉子などあるかな、と長官がひとりつぶやいたという。朝晩身近に使えて、こういう長官の言動を見聞きしていた山本兵曹は、全く長官に心酔していたのである」とあるが、子供がいなかった長官ご夫妻も、「山本、山本」と可愛がってくれた、と山本氏は思い出しては良く泣いた。
 この「玉子」は、山本兵曹が山を降りてゲリラを避けながら村の農家から「購入」してきたものであった。昭和20年に入ると、金は通用しなかったので「物々交換」だったという。住民が喜んだのは日本軍人の「肌着」で、特にふんどしは、切り刻んでハンカチくらいにしても良く交換してくれたもんです、とその時は思い出し笑いをしていたものであった・・・


 さて、25日に突然小泉元首相が政界引退とのニュースが飛び交った。「政治活動はやめない。国会活動をしないだけだ」と語ったそうだが、シーラカンスのように議席にしがみついている方々にはショックだったろう。

 今朝の産経抄氏は、「闇将軍」こと、田中元首相を例に挙げて、推測だとしながらも「田中元首相を反面教師としたような気がする」と書いた。私も「退陣した権力者は軽々に口をさしはさむべきではないという『哲学』」が小泉氏にはあったように思う。
 産経抄子は「最近、キングメーカーになりつつあるとされる森喜郎元首相も(嫌な思いをした)そのひとりかもしれない。空耳でなく『あんたも余計なことをせず、早く引退したら』といっているように聞こえるのだ」「まるで『闇将軍』の時代に戻りつつあるかのような自民党への警鐘だとすれば、なかなかの味のあるリタイアかもしれない」と書いた。

『主張』も「政界の世代交代を促進し、日本の政治潮流を変えるきっかけになりうる決断として評価したい」「自民党出身の首相経験者が古希(70歳)を前に自らの意思で引退生活に入るのは、小泉氏が昭和30年の結党以来初めてのケースになる。多くの首相OBは、退任後も衆院に長らく議席を占め、岸信介田中角栄両氏らは隠然たる影響力を保持し続けた。現在も6人(小泉氏を含む)の首相が現役の衆院議員を務めている」と書いたが、改めてその数に驚く。
 功成り名遂げて今更何を?といいたくなるが、多分「老人性自己顕示欲」の他にも「何か」を満たす「美味しいもの」があるのだろう。
 小泉氏は、誰も実行できなかった最長老の中曽根氏の「首に鈴」を付けた初めての首相であった。中曽根氏の首を取った自分が椅子にしがみついたのでは名が廃る!そう考えたのだとするならば今回の引退を大いに評価したい。
 ただ、「主張」が後継者に次男を指名したことを「画竜点睛を欠く」と指摘していることをどうとらえるか?『古い自民党をぶっ壊す!』として国民の大いなる支持を得た小泉氏である。果たしえなかった部分を息子に託す気か?

 他方、首相に就任直後に、始めての大舞台である国連で演説をした麻生新首相は、なかなか堂々たる演説で好評を博した。
 演説中に同時通訳の機械が故障して、最初からやり直すシーンがあったが、クサルことなく「この機械は日本製ではないから」と満場を笑わせ拍手を取ったのは見事であった。
 時間の関係で会議場には空席が目だったが、それでも演説終了後、各国代表が駆けつけてきて握手を求めていた。こんな日本国歴代首相は珍しいのではないか?

 他方国内では、そんな好意的『スポットライト』を浴びている麻生首相が面白くない勢力がいて、中山国土交通相の“失言”をとらえて、まるで鬼の首でも取ったかのように『罷免要求』している野党関係者がTVに出ていたが、何とも早その人相に『オーラ』がないこと!見ていて気の毒になる。
 民主党幹事長は『本音が失言に表れた』といい、共産党は『言語道断』と息巻き、社民党党首は『閣僚としての資質に多大な疑義がある。人権感覚がない』とお怒りだったが、大臣は『本音』を言ってはならないらしい。多分、本心を隠して、適当な『ウソを並べる』虚言癖がない議員には、大臣は務まらないらしい。「ウソは泥棒の始まり」と母によく言われたものであるが『閣僚の資質』とは多分そのことを指すのだろう。
『人権感覚』とは何を意味するのか知らないが、きっとご本人も分かっていまい。百年一日のごとき『妄言』を吐くこの方達こそ、時代遅れも甚だしく、早く消えて欲しいものである。
 小泉氏が何であのように人気を博したのか?国民の心にわだかまっている『本心』を、ずばずば口に出し、中国、韓国が嫌がる『靖国参拝』を強行したからである、と私は思っている。そんな国民の『目線』さえ感じないで、ただひたすら時代遅れの“教条主義”を貫いているお方こそ、議員バッジをはずすべき時代遅れの方々であろう。
 中山発言の真意は、表現がどうであったにせよ、国民の大半は『理解』している。大阪の橋下知事を見るが良い!老醜をさらした歴代知事には太刀打ちできない活力を、大阪府民に与え始めている、と私は感じている。

 何とか麻生内閣を傷つけ、選挙で自分達に有利な環境を作ろうなどと、姑息な考えを弄していれば逆に大敗する。柳の下に鰌はもういない、と忠告しておきたい。


 中国は、国内各所で起きている騒動を気にも留めず、「中国の進歩を世界に示すショーウインドー」として有人宇宙船『神舟7号』を打ち上げた。「船内に微生物やハイブリッド米を持ち込み化学実験も行う」という。
 地上の国内では、メラミン汚染ミルク問題で、多くの乳幼児が健康を害し、親たちが不安におののいている。中国国内ばかりか、世界中にその「害毒」が拡散し、食糧危機が再燃している。そんな地上の混乱や人民の苦労なんぞ気にも留めず、宇宙で「微生物実験」とは、まさか、「B・C兵器の実験」を行う気ではないのか?
「ハイブリッド米」は、メタミドホス抜きだろうか?
 ひたすら人道を無視し、国威発揚に専念している軍事大国がお隣にあり、経済危機は世界中に広がり、同盟国・米国の大統領選挙も極めて微妙になっている、そんな渦中にありながら、ひとり浮いた存在に見えるわが国の政情は非常に気にかかる。
 古希を迎えんとする“一老兵”の身をも顧みず、何度でも警告するが、今こそ「挙国一致」で国難に立ち向かうべき時であることを忘れてもらっては困る。

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