軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

戦争は他の手段を持ってする政策の継続!

 北朝鮮が「拉致再開調査を拒否」した。中国政府に「メリットがない」として拒否する考えを伝えていたことがわかったという。
 福田退陣後に中国高官が北朝鮮に質した際「仮に調査委員会を立ち上げたところで、どんな結果になっても日本国民は納得する筈がない。結局(北朝鮮にとって)再調査は何のメリットにもならない」と述べていたらしい。

 小泉訪朝時に、金正日自身が彼らが凶悪犯罪である「拉致を認めた」。しかし、そんな犯罪者が被害者からの要求に「やすやすと」応じる筈はなかったのだが、今回の「メリットない」発言で北朝鮮の真意は明瞭になった。誰が見ても当初から犯人である彼らに「被害者達」を返還したり、事実調査することに「メリット」があるはずは無かった。

こう書くと、だから帰国した5人を北朝鮮に戻すべきだった!と北朝鮮を支持する輩が日本側に出るので、北朝鮮も“心強かった”に違いないが、今回も、これを受けて日本政府は「対北朝鮮戦略の練り直しを迫られることになった」「米国のテロ支援国家指定解除を契機に北朝鮮側は日本を無視する姿勢を鮮明にしており、麻生政権は展望が開けない対北朝鮮政策に腐心している様子が伺える」と産経は書いた。

 その中で漆間官房副長官が「大事なのは北朝鮮が本当に困る圧力をかけられるかどうかだ。今後、工夫する必要がある」と述べ、「これまでの制裁措置が効果的だったかを検証しつつ、必要であれば新たな制裁措置の発動を検討する考えを示した」という。漆間副長官が言うとおり「北朝鮮が本当に困る圧力」が何か、よく分析する必要がある。

 現役時代によく教育された「戦争論」には、「戦争とは、相手にわが意思を強要する為に行う力の行使である」と書かれている。更に「この力は、相手の力に対抗するために、技術と科学を創意工夫して準備される」「すなわち物理的な力(精神的な力は国家や法律における概念としてしか存在しない)は、敵に我々の意思を強要するという目的を達成するための手段である」と続く。
 そして「従って戦争は、政治的行為であるばかりではなく、本来政策のための手段であり、政治的交渉の継続であり、他の手段を持ってする政治的交渉の遂行である」とクラウゼヴィッツは言い残している。

 是非一度「戦争論」に目を通していただきたいが、漆間副長官は元警察庁長官経験者の筈だから、こんなことぐらい十分に弁えていることだろう。

 北朝鮮が「怖い」のは「軍事力」である。国境を接する中国も、ロシアも、何より米国の軍事力を恐れている。(日本の軍事力ではないのが癪だが・・・)
 先日横須賀を出航した米原潜「オハイオ」には、154発のクルーズミサイルが搭載されていて、日本海から北の主要目標に狙いを定めている。

北朝鮮が恐れる第7艦隊とジョージワシントン


オハイオ出航!(産経新聞から)
 数年前は、ステルス戦闘爆撃機が韓国の米軍基地に進出し、縦横無尽に北朝鮮の上空を「訓練飛行」したことがあったが、当時の米空軍パイロットは自信満々、「後はピックルボタン(投下スイッチ)を押すだけ」と言ったものであった。そのころの北朝鮮は実におとなしかった・・・

 産経23面には、北朝鮮に拉致された疑いが濃い32人の氏名が公表されている。10代〜30代の同胞が、恐るべき非人道的な「テロ行為」で、北朝鮮に拉致されている。
 荒木代表は今回確度が高い情報だけでなく「あえてハードルを低くした」のは、「非公開、不確定な情報も一部開示することで新たな有力情報が得られ、救出につながることに期待をかけたためだ」という。

 CNNやBBCでは、金正日重病説につき麻生総理の国会発言を大きく取り上げて報じているが、今日の産経3面には「金総書記の警護強化」「外部と遮断」との見出しで、韓国「中央日報」が報じた韓国当局の分析を伝えている。
 警護担当部隊は「最精鋭」といわれる「第6局」だけが担当しているというが、「死去していないのは間違いない。だが、正常でないことも確かだ。現状では完全な回復は少し難しいとみられる」と韓国政府高官も語っている。
 年内にも周辺で大きな情勢変化があるかもしれない。さて、麻生総理の「戦略」如何?

戦争論 レクラム版

戦争論 レクラム版

『戦争論』の読み方―クラウゼヴィッツの現代的意義

『戦争論』の読み方―クラウゼヴィッツの現代的意義

韓国戦争〈第1巻〉人民軍の南侵と国連軍の遅滞作戦

韓国戦争〈第1巻〉人民軍の南侵と国連軍の遅滞作戦

韓国戦争〈第3巻〉中共軍の介入と国連軍の後退

韓国戦争〈第3巻〉中共軍の介入と国連軍の後退