田母神前空幕長の更迭問題は、淀んだ世間に一石を投じ、多くの意見が噴出しているが、ある意味で目的の一つは達せられていると見るべきだろう。
中には、顔を隠して言いたい放題の者も居るが、それが「言論の自由」を満喫している証拠、その自覚が無いくらいこの国の言論は自由なのである。中には「想像」でものを決め付けているものも多いが、それまた「憲法」で認められた自由の一つ、大いに腹の底から意見を吐き出すが良い。
ところで今朝の産経2面に「防衛省幹部7人処分」と出たが、その中に気になる部分があるから、私の体験から「独断と偏見」で解釈してみようと思う。
1、麻生首相は浜田大臣を官邸に呼び「再発防止を徹底し、同省の監督責任を明確にするよう指示した」
つまり、言葉を変えれば、「物言えば唇寒し」であることを徹底せよと聞こえる。
その昔、田村OBが小沢氏、金丸氏をバックにして、自民党から参院選比例代表として出馬したとき、陸と空の将補がこれに対抗して「民社党(当時)」から突然出馬したことがあった。驚いた自民党は庁の幹部を呼びつけて「野党から出るとは何事か!」と怒ったという。つまり、自衛隊という組織は自民党の独占票田だと勘違いしていたのである。
栗栖陸将の時もそうだった。野党たる民社党から出馬した遺恨を晴らすためか、いわゆる“天下り”をさせず、退官した栗栖氏は「孫の子守り」をしていたから、あまりの子供じみた嫌がらせに驚いたある私立大オーナーが「研究所」を開設して、栗栖氏に軍事の研究を継続させたものである。今回は「アパ」がやるのだろう…?
麻生首相の「指示」に私は当時を彷彿としているのだが、総選挙にどう影響するか?
2、田母神氏を「定年退職」にした理由は「辞職に当たっての手続きに応じてもらえなかったため」だという。
将官に昇任する際、「上からの指示に従って辞職する」との誓約書を書かされる。後進に「道を譲る」ためと諒解して私もサインしたのだが、現実はそうとも限らない。
おそらく田母神氏が手続きに応じなかったのは、次に田母神氏を「懲戒処分にしなかった理由」が「思想的な面がかなり強く、処分規定に当てはまるものが少ない」と判断したからだと書かれている様に、「処分規定」に当てはまるものがない以上、田母神氏が「応じる」必要は無いのだから正当である。むしろ、田母神氏は「不当解雇」として争うべきであろう。
3、浜田氏の再発防止策は「幹部自衛官の教育では今後(先の大戦の侵略を認めた)村山富市首相談話をはじめとする政府の歴史認識を踏まえた適切な教育を進めていく」ことだという。
これこそ憲法違反の「思想統制」ではないのか?勿論、国家組織の中にあるものとしての「節度」は守るべきだが、自衛官は国防の専門家として「戦史などを含めた」先の大戦の実情を十分研究“させられて”いる。
巷にはびこる一端の?評論家よりも深い研究をしているものが多い。それが“高官たち”に少ない様に見えるのは、一旦傷が付くと昇進に差し支えるから穏便に?振る舞っているからであり、階級的には「低い」者のほうが良く勉強して論文なども発表しているのである。田母神論文を「学術的ではない」などと揶揄するコメントもあったが、学術論文ではなく「懸賞応募」論文であり、内容は私が見たところでは「幹部教育」に適した内容のものだと思っている。平易で理解しやすく、紙数に限りがある中で一般的な理解を求めた文である。素直に読んで見るが良いと思う。
4、5面に「野党、田母神氏を招致へ」として、「政府批判を強める姿勢」の一環として
田母神氏を国会へ招致し、「政府・防衛省の任命、監督責任を追及していくことで一致」したという。
勿論与党側は「招致に反対する方針」だが、国会の場で、田母神氏に堂々と意見を述べるチャンスを与えて欲しいと思う。同時に「村山談話」「河野談話」について、政府の見解を改めて問い、侃々諤々の審議をしてほしい。
最後に、産経13面の「談話室」の意見を掲げておきたい。実に共感するところ大だからである。米国大統領も間もなく判明する。いよいよ2008年最後(いや、北朝鮮情勢が控えているが)の一大イベントの結果が出るのだが、これの行方もゆめゆめ油断せず注目しておこう。
≪「政争の具に使う情けなさ」大学生・田中理恵子(19)
「わが国が侵略国家だったというのはぬれぎぬ」とした論文を発表して防衛省の田母神俊雄航空幕僚長が更迭された。さまざまな問題が山積している中で政府側がこれ以上、政権運営に波風を立てたくないと配慮したからか。しかし、それでいいのだろうか。
政府側が根拠とした平成7年の「村山談話」については賛否があり、先の大戦についての評価も分かれている。「談話」を否定するような考えを表明しただけで更迭というのは、行き過ぎでは無いかと思う。
政府の見解と異なるという理由で更迭というのなら、見解に沿った人物しか政府の要職につけず、また一度出した見解は二度と変更することができないことになる。
現職空幕長がこのような論文を発表することの是非も問われているが、民間の懸賞論文に個人として応募するのを否定するのは言論弾圧といわれても仕方がない。
現職者も含め、自由な意見・論議は保証されるべきだ。目先の政局にとらわれ、ただ穏便に済まそうとする与党や、政権揺さぶりの材料にしかしない野党に情けなさを感じる」≫
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