軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

何かがおかしい「櫻田論文」

 七日産経「正論」の、櫻田論文を読んだか?という声が頻々と入った。「空幕長論文の正しさ・つたなさ」と云う題の櫻田淳東洋学園大学準教授の論文である。
 要は「(この論文は)『正しい議論』と『賢明な議論』が自ずから別種のものであることを筆者に再確認させた」という書き出しで始まるのだが、「歴史認識の開陳は、政治(活動)家や歴史家、或いは思想家ならば手掛けるかも知れないけれども、航空軍事組織の総帥としての職務とは、全く関係のないもの」だから賢明さを欠くというのである。

 それぞれ専門分野があることは勿論否定しないが、個人が歴史的意見や信念を持つのは何も歴史家の専売特許ではなく、自由である。それを櫻田氏は「日本は侵略行為をしたのではない」と云う主張を「そもそも、貴官がそれを言って何の意味があるのか」と反問し、終戦時の陸軍大臣阿南惟幾の言や「軍人勅諭」を挙げ、「武官としての『本分』からも疑義のあるものではなかったか」という。
「(自衛官たる)貴官がそれを言って何の意味があるのか?」という言論専門家の驕り?は別にして、ここで私は、阿南陸相の逸話と「軍人勅諭」を持ち出して「何の意味があるのか?」と逆にお聞きしたい。

 つまり彼は“自衛隊内部でも”「武官としての本分」を身につけるためにも、「軍人勅諭に学べばよかった」といっているのである。ありがたいご指摘だが、これが状況が違えば、「今時軍人勅諭などという時代遅れの思想を、『軍事組織の総帥になる者のための教育の場で』教育しているとは驚いた!軍国主義、右翼主義思想の復活に驚きを禁じえない」と書くのではないか?

 産経の「正論」の場だから、読者を意識してか田母神論文を「支持するでもなし」「非難するでもない」中途半端に終わったのは、彼自身が保守派に属するという意識があるからだろうが、都合の良い時に「軍人勅諭」や、「旧軍人の美点」を持ち出すのはいただけない。自衛官の身分は、ご承知のように、時たま“制服を着たサラリーマン!”と揶揄される様に「国家公務員・特別職」に過ぎず、軍人勅諭を「公的に教育する」、そんな「軍国主義」に凝り固まった組織では無い事を良く認識していただきたいと思う。
 勿論、自衛官といえども人間、「私的」には個人の“趣味”で十分勉強している。海軍兵学校の「五誓」が今でも生きているように。
 櫻田先生の折角の論文が、ご都合主義だと誤解されないように祈りたい。

 さて、11日の国会の議論が楽しみである。政治の世界に疎い田母神氏が、その“しきたり”や“独特の文化”に惑わされること無く、「武人」として率直な発言をすることを、多くの隊員はもちろん、OBも見つめている。
 麻生総理は、この場での対応いかんで、大きなダメージを受けることになるかもしれない。国会での「村山談話」と「集団的自衛権問題」についての総理の所信表明で、明らかに支持率は激減しただろうから…。しかし、ある意味で11日が起死回生のチャンスでもある。生かせるかどうか…


 今日は、元奉天特務機関員だった門脇氏から届いた「あけぼの」の中の、門脇翁の所見には考えさせられるので、2文引用しておくことにする。

【「自信喪失の日本
 内外情勢が逼迫する今日、日本の政界は内弁慶ばかりで、外国に押しの利く人物が、政財界にも見当たらない。内ゲバの闘士揃い。
 日本はある種のかなり長い衰亡期に入ったのではないのか。今の若い層から、その殻を破る気配が醸成されることも望み薄の感。これに戦後育ちが70歳になり80歳になったら、世界に通用する政治の運営はできないのではないか。
 中国は中華民国の始めから内はなっていなくても、個人的には大国の代表として勤まる人物を排出してきた。日本人は商才は利くが芸が細かい。一人一人の人間も。

 「品性、徳性
 やっと涼しくなったと思う間もなく先が気になる今日の秋風である。人の心は自然のこの動きより激しく宛てにならない。その上落ちることはあっても好くなることは無い。
 個人がそうであるから、ましてや近代社会では物質万能、個人民族間にとっても、品格とか徳性というものが、人間界から姿を消した。人間の持つ価値観からなくなったと云えよう。アメリカはその冨を世界に誇ったが、その経済力にかげりが見えると、世界中から軽く見られ始め、今やアフガン、北鮮に手を焼いている。中共は威張っているが元々の唯物主義者。徳とは無縁。】

 そして次のような写真が紹介されている。「中国の新聞」からだそうだが、こんな写真を掲載する中国は「自由主義国?」と見紛うばかり・・・


 ところで友人がコメント欄が「お祭り!」というので開けてみたが、トラックバックを消されたから「言論弾圧だ」とお怒りの方が居る。
 トラックバックには良く大陸からの奇妙な(読めない)文や、「アダルト」宣伝が入ってきていて、うっかり開けるといやだから、適宜機械的に消去している。勿論、題名だけでは判定できないものが多いのだが、「解散権」は私にある!
冗談はさておき、多分そんなわけでこの日に入っていた変なものと共に機械的にチェックを入れて操作したからだろう。次回からは、変な文と一緒にならないように送っていただくとありがたい。
機械的操作」は操縦者としては危険操作なのだが、既に操縦桿を手放して11年余、ご了承あれ!

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