軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

田母神問題と領海侵犯と

 今日は午後にやることがあるので掻い摘んで表題中心にメモしておきたい。

1、昨日APAの表彰式があったが、参加した友人から「田母神将軍が日本国が悪い国だという人が自衛隊のトップとなり日本国が素晴らしい国だというひとが首になる。こんな国家ってあるのでしょうか?防衛省の稟議は3か月かかるのに自分の更迭は2時間で決まった。ということは防衛省も捨てたのものではない、やれば即決できるのだ!」と発言して拍手喝采。ついで「鳩山由紀夫氏が元谷氏邸でのワインの会で、田母神氏の話に腹をすえかね途中退席したというのは大ウソであり、あのウソから見てこんな男を首相にしたら即逃げると確信できる!何分政治家はウソつくのが当たり前かもしれないが!」と言ったから再び大喝采!田母神将軍は実にユーモア溢れる人物で誰からも好かれる人格だ!」とメールが来た。
 それに比べて、日テレ系のニュースで彼と対談した防大9期卒の森本敏氏は悪評で気の毒なくらい。私もTVを見たが、随分変わったな〜人相の変化にまず驚いた。更に驚いたのは9期生にしては防大教育を誤解していて、15期生に太刀打ちできないように見えたが、テレビ出演が多くなると『バランス感覚』が研ぎ澄まされるということか?と考えた。


2、今朝の産経『政論探求』欄に「田母神論文が突きつけたもの」と題して、論文審査に携わった花岡氏が、国会の参考人招致で「政治の世界が文民統制の意味合いに無知なことを証明してしまった。政治の側が居丈高に押さえ込むのが文民統制ではない」「民主党が政権をとった場合、自衛隊との関係がどんなものになるか、暗示しているようでもある。もっと言えばそれは民主党政権担当能力にかかわるのだ。防衛省に残された課題は、この一件でいたずらに大騒ぎして政治問題化させた『内局トップ』の更迭だ。それなくしては、自衛体内部はおさまるまい」と書いたが、事実、今までは「国会で問題になるから・・・」と自衛官の口封じをして「世は全てこともなし!」と事なかれ主義に徹してきた内局が、今回は逆に世間を騒がせる「大事」を発生させてしまったのだから、その責任は重大である。花岡氏が言うように私服側も制服並みに責任を取ったらどうだ?


3、こんな“混乱”を見透かしたように、8日の午前8時過ぎに、尖閣諸島を中国の調査船2隻が領海侵犯した。巡視船が退去勧告したが、午後5時20分と30分過ぎに退去したというから、この間実に10時間。調査船は十分に目的を達して“退去”したのであろう。
 政府は一応抗議したようだが、麻生首相は「『はなはだ遺憾だ。明らかに領海侵犯だから』と不快感を示した」という。個人的に不快感を示そうが示すまいが、中国にとっては『そんなこと関係ない!』のであり、やがて尖閣に押し寄せてくるだろう。そのとき政府はどうするか?自衛隊に出動を命じても「守るに値しない国のために誰が『地球より重い個人の生命』を捨てると思うか?ましてや村山元首相が『謝罪した相手』、「昔侵略して多大の迷惑をおかけした国」に、非情な仕打ちは出来ない、と今回政府は自衛隊員に指導したのではないか!自民党青年部にでも『出動』してもらう以外にはないだろう。

 中国国内の騒乱は、危険水域に達しつつある。そのときのはけ口は『尖閣(彼らが言う釣魚島)』である。日本の政府関係者は気がついていないようだが、中国の若手研究者や軍人は「自分達の領土をなぜ日本の海上保安庁が守っているの?」という感覚である。
 不快感をいくら示そうとも、そんな彼らには「糞の役にも立たない」ということを知るべきだろう。


4、『正論』に鳥居民氏が「山本五十六の書簡発見に寄せて」と題して、開戦時の秘話を書いている。「昭和16年12月1日の御前会議の前日に海軍軍令部に勤務する高松宮昭和天皇に向かって、『今艦隊進発の御裁可をすることは非常に危険です』と言上し、アメリカとの戦争を回避したいのが海軍の本心なのだと説いた」ことを書いている。
 つまり戦争回避のためには「最後の聖断のみが残されておる」という昭和16年10月11日付の山本五十六が同期の堀悌吉に宛てた書簡は、「山本の『聖断』の願いは堀から内大臣秘書官長の松平康昌、宮内大臣松平恒雄に伝えられ、彼らはそれを内大臣木戸幸一)に告げたはずだ。間違いなく木戸は連合艦隊司令長官が『聖断』を望んでいることを知っていた筈だ」というのである。天皇は知るよしもなかったが、高松宮の『直諌』を知った木戸はこれは連合艦隊司令長官のぎりぎりの最後の訴えだと即座に気がつかねばならないはずだった」「ところが木戸は戦いを回避したいと今更、口に出せるはずのない永野(軍令部総長)と島田(海軍大臣)を召すようにと天皇に言上した。・・・木戸はアメリカと戦争をするしかないと決意していた。だからこそ、彼は山本の願いを押し潰した。高松宮の『直諫』は歴史の中の小さな挿話では決してない」と鳥居氏は結んだが、十分に考えられることである。
 天皇が軍を統帥するとは、軍人が直接天皇に作戦計画を含めて言上する、と一般には考えられてきたが、天皇周辺には木戸のような取り巻きが居たのであり、彼らが軍に対して好感を持っていない場合には、情報や判断が“捻じ曲げられて伝えられる”という危険性を示しているが、そのようなことは十分に考えられると思う。

 戦後の自衛隊は旧軍とは別の組織として建設された・・・と森本氏は田母神氏に言ったが、それは旧軍に対して嫌悪感を持っていた旧内務官僚達の動きが拍車をかけていたと捉えるべきで、それが『悪しきシビリアンコントロール』の形態として旧防衛省に代々伝承されてきて居るのだと私は思っている。そして防衛省になっても未だにそれが残債?として残っているというべきであろう。
 そんな構造が今回の田母神更迭事案の根底にあると思うのだが、鳥居氏が指摘するように戦前の「シビリアンコントロール」にも、そんな恐るべき“対立”があったとしたら、この問題は永久に解決できない問題だというべきかも知れない。

 とまれ私は今、平河総研のメルマガで「大東亜戦争の真実」を各種資料に求め続けていて、ルーズベルト側近のソ連のスパイ(アルジャー・ヒス、ジュリアス・ローゼンバーグ、I・F・ストーンら)までたどり着いたのだが、いずれ日本国内の天皇周辺にいた“勢力”についても調べたいと思っている。

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