軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

わが国は「紛争当事国」である!

 昨日の産経新聞の読後感を少し書いておきたい。

1、中国船領海侵犯
 8日、中国の調査船が約10時間にわたって尖閣諸島沖を領海侵犯した問題について、産経は『主張』に「極めて深刻な主権侵害だ」と書き、今朝も桜井よしこ女史が「中国にクギを刺せ」と「麻生首相に物申して」いるが、政府は手をこまねいているように見える。
 何度も書いているが、中台共同して「攻める」には、尖閣が最も適しているのである。この周辺海域がにわかに緊張し始めた根底には資源エネルギー問題があり、石油の高騰(2003)、石炭・鉄鉱石などの高騰(2004)、中国(+インド)の需要拡大に伴ってにわかに騒がしくなった。
 ついで東シナ海問題に発展し、国際海洋法条約のEEZの境界画定基準の不一致とEEZと領海をめぐる問題が起き、日本は「暫定中間線」を設定するよう提案したが、中国は「協議で境界画定(距離ではなく人口比率で!?)」しようとして話し合いは全く進んでいない。そんな中、彼らは勝手に領海法を制定してしまった。つまり、自分の海にしてしまったのである。だから海南島近海で起きた米海軍のEP-3と、中国海軍のF-8戦闘機との接触墜落事故を「米軍機の領空侵犯だ!」と言い張るのである。
 8日の「領海侵犯」に対して日本外務省が抗議すると、中国外務省は「尖閣諸島は古くから中国固有の領土」だから、「中国が主権を有する海域で正常に航行して、何が挑発と言えるのか」と反論し、「調査船をいつ再派遣するかは中国側の事情だ」とにべもなく、更に海洋局の副隊長は「尖閣諸島海域の管轄を強化する」と言った。
 先日の日中安保対話で「なぜ中国の島を日本の海上保安庁が警備するのか?」と中国側関係者が発言したが、既にその“兆候”は現実味を帯びてきている。
 尖閣を巡る領有権問題の発端は台湾にあるのだが、尖閣は台湾のものだという主張の根拠が揮っている。
 日本統治下時代に尖閣で起きた「殺人事件」の犯人を、宜蘭県の裁判所で裁判することを日本政府が認めたから、尖閣は台湾のものだというのである。
 もっと特異なのは、中国の占有理論である。つまり(1)尖閣は台湾の所有である。(2)台湾は中国の所有である。(3)故に「尖閣は中国のものである!」というのであるから話にならない。
 中国国内では日に日に騒乱状態が激化している。台湾でも、馬総統の人気がた落ちで、反対デモが盛んだという。大陸・台湾双方の政府にとって『尖閣問題』は、恰好の「不満のはけ口」になる公算が大であり、唯一共同作戦が可能な目標である。
 当然わが政府は自覚していると思うが、わが国は「ロシアと北方領土問題」を、「韓国とは竹島問題」を抱えていて、これらの国とは「紛争当事国」の関係にある。
 そこに「もたもた」していると尖閣を巡って「中国とも紛争当事国」になる、と私は警告してきているのだが、何とも早一退役OB如きでは「ごまめの歯軋り」に過ぎない。


2、防衛省「アパとの関係で全職員調査」
 そんな中、田母神論文問題で、防衛省が全職員に対して論文募集を行ったアパグループとの関係を調査しているという。野党・民主党の要請によるというからまた驚きだが、そんなことをやっている場合か!
 防衛事務次官の記者会見で、記者が「尖閣の領海侵犯問題」を追及しても「第一義的に海保の問題」と繰り返す有様。一体防衛省の仕事は何なのだろう?自ら発行している「防衛白書」を熟読玩味したらどうか?
 前次官は「ゴルフ・マージャン・カラオケ・焼肉」が任務だったようで国民の顰蹙を買ったが、急遽その後を継いだ今度の次官は「自ら身内を監視調査する」のが仕事だと勘違いしているように見える。「山田洋行」事案の様に、国民の血税である防衛予算を掠め取って政治資金にするようないかがわしいものの調査ならいざ知らず、羹に懲りて膾を吹いていては、尖閣列島は掠め取られてしまう。
 省内からは「プライバシーの侵害だ」「民主党に要請されたからといって、強制力はないはず。そこまでやる必要はない」との指摘も出ているというが当たり前である。
 こんなことをやっていると“左翼弁護士達”が隊内の不満分子と組んで、訴訟問題を多発させ、防衛省の機能が麻痺することになりかねない。もっと目を見開いて国際情勢を認識し「本来の任務に邁進してもらいたい!」と思う。
 民主党も、そんなばかげたことをやっている暇があったら、自分の身の回りを整頓したほうが良いだろう。10日発売の「文芸春秋」誌に「民主党『マルチ疑惑』焦点の男」という記事が出ているが、10日の産経には「民主党を中心とする『健全なネットワークビジネスを育てる議員連盟』設立の経緯などを説明」しその上で「山岡賢次国対委員長について(1)マルチ業者から受けた献金の振込先が不可解(2)業務停止命令を受けた業者のパーティーに出席した」などと指摘、「政官業癒着を批判してきた民主党だけに、マルチ疑惑について真摯に説明責任を果たす必要がある」と書いた。
 防衛省員とアパとの関係よりもこちらの方が重大問題ではないか? 情報によると、民主党のお歴々の全員集合写真が、このマルチ違法業者の宣伝パンフにカラーで掲載されていて、民主党の対応次第では公表される可能性があるとも言う。自民党の癒着暴露に専念してきたツケが自分に降りかかってきたのだ、と言うのだが、そういう状況から察すれば、防衛省職員とアパとの関係「調査要請」は、自らの疑惑を回避するための「煙幕?」なのだろう。しかし、作戦的にはあまりにも古過ぎる。防衛省はそんな野党のなりふり構わぬ第二次大戦型の「煙幕作戦」に右往左往することなく、国の主権確保と国民の保護に敢然として邁進してほしい。


3、『日本の再生』こそ世界を救ふ
 10日の「正論」に伊原吉之助・帝塚山大名誉教授が書いた一文は実に示唆に富んでいる。「蔓延る賎民資本主義」「野蛮国へ退化するか」「みそぎによる浄化を」との中見出しで分かるように、強欲資本主義の横行、特に米国、ロシア、中国・・・。日本の「勤勉実直・薄利多売・見ず知らずの他人を信用してかかる高信用社会」と、「原住民も黒人も排除した『市民』だけで造った人造共和国、移民社会だけに下層民を信用しない」米国。その米国の占領政策で日本は「家も近隣社会も国民共同体もバラバラに分解し、欲惚けと邪魔臭がりに基づくやらずぶったくりの利己主義が蔓延して、今や野蛮国に退化しつつある」というのである。
「美と崇高への献身、謙虚で強くて慈愛に満ちていたあの立派な日本と日本国民は何処へ行った?」と嘆き、「日本は欲惚けと邪魔臭がりと引篭もりから脱却し、生きる喜びに目覚める秋である。物的欲望は最小限に抑え、仲間との絆に基づく連帯と心の豊かさを求めるべき秋である」と提言する伊原教授の言葉に、麻生総理は是非とも耳を傾けて欲しいものである。原稿は正漢字・歴史的仮名遣いだが、引用文は勝手に当用漢字を用いた。更に念のため文全体を貼り付けたから是非ともご一読あれ!

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