軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中東危機と国連と日本

 26日から東北地方へ恒例の墓参りに出かけたが、今年は想定外の強風と大雪で苦労した。那須高原付近から雪、福島は積雪、住職様に挨拶したら「こんな大雪の中・・・」と驚かれた。墓に着くと不思議なことに薄日が差したが、墓前の花立の水は凍結している。新しい花もすぐに凍結か?と気になったが、一年のご加護に感謝して気分が軽くなった。

 地吹雪の中、仙台・作並温泉に向かったが、雪で視界が悪くのろのろ運転、仙台泉以北は吹雪で通行止めだという。手前で高速を降りたので影響はなかったが、一般道では互いに十分な車間距離をとる。雪国の知恵だと感心した。山形を結ぶ国道なので交通量が多いから、道路は除雪されてはいるが、良く滑る。久しぶりの雪道運転で神経が疲れた。

 宿の岩風呂は、木々の枝に積もった雪でまるで桜が満開のよう、舞い落ちるボタン雪の風情は絶好の「雪見酒だ!」と思ったが、禁酒で残念!
 世の中が不景気な中、自分らだけが温泉を楽しむのはいささか気が引けた。

 翌日は2〜30センチの積雪で、雪だるま状態の車を探すのに一苦労!融雪剤を散布する除雪車のあとを追随したら、車が真っ白!難行苦行しつつ石巻に出ると青空が出ている。日本海気候の特徴を思い知らされた。

 神社の大祭に参加し、大祓を受け気分を新たにしたが、神主さんが語る「来年を占う神々のお告げ」には気の引き締まるものがあった。争いごとも天変地異も人間の想像を絶するような状態が続くようだが、どんな事態に直面しても心を鎮め、慌てないようにするにはどうするか? 天上界でも地上界でも、善と悪の戦いが熾烈を極めているらしい。

 帰路も一部に雪の障害があったが、何よりも強風が凄まじく、山形新幹線は倒木で通行止めになったらしい。交通量が少なかったのが幸いして、夜中には無事に帰京できた。首都高速も、いつもこのくらいの交通量であればいいのだが・・・と思った。


 さて、帰宅して愛読紙「産経新聞」に目を通すと、日に日にページ数が少なくなっていて年の瀬を思い知らされる。26日、27日と26ページだったが、28日は22ページ、今日は20ページである。
 CNNやBBCはガザ地区の戦闘を連続報道しているが、とうとうイスラエルは、パレスチナ自治区ガザ地区全域で、実効的にこれを支配するイスラム原理主義組織「ハマス」の拠点に対して本格的な空爆に踏み切ったようだ。
 今朝の産経トップは「ガザ空爆両刃の剣」「イスラエル強硬 ハマス『闘争を』」と報じているが、イスラエルのバラク防相は「市民を守るために地上軍の展開が必要なら、そうする」と語り、「地上作戦を始める可能性に言及した」という。

 イスラエル政府は閣議で「6500人の予備役の招集を承認した」から、総人口約635万人、現役兵力は約16万8千人のイスラエル。予備役は40万人だというが、実質的にこれは「動員令」に近いものであり、本気で戦争を覚悟しているといえる。このイスラエルの覚悟をハマスはどう受け止めるか? 他方、ガザ地区の武力制圧で、袂を分かった“穏健派”のPLO主流派ファタハはどう動くか?

 産経は「主張」で、「事態の拡大をまず止めよ」として、国連安保理に期待しているが、政権交代期の米国と、一致しかねているEU、強い国を目指すロシアは動きが取れまい。来年早々、非常任理事国になる日本については「限界がある」としつつも、「信頼醸成を目的としたプロジェクトや、過去15年間で約10億ドルに上るパレスチナ民主支援など中東和平への環境づくりで特異な貢献をしてきた。これらを土台に更に地道な努力を続けたい」と書いたが、国連の“実力”をこの際良く観察するがよいだろう。

 国際貢献といえば「金しか出せない」わが国だが、不況下にある今、そんな余裕はあるまい。町には企業を解雇された自国民の「ホームレス」が溢れている。自国民救済の方が最優先であろう。「地道な努力」が何を意味するか知らないが、「話して分かる」国家・民族ではない。戦闘で被害を受ける「国民」にとってはお気の毒だが、それは自らの政府・指導者が「地道な努力」を傾けて解決すべきもの、この際、非常任理事国のわが国としては、国連の機能を発揮するよう働きかけるべきであろう。わが国は、国連の有力な出資者、いわばスポンサーでもある。それよりもまず、自国の体制を固めるのが先決で、万一、中東戦争が始まって、油をはじめわが国の生命線が侵される事態になったときにどうするかを考えておくべきである。
 この空爆について記者団に質問された河村官房長官は、「非常に残念だ。憎しみの連鎖が続き、あれだけの死者が出ているのは由々しきことだ」と述べ「平和を希求する日本としてなし得ることは何か、事態を直視しながら検討している」と語ったそうだが、イスラエルだって「平和を希求している」のである。
 どうも日本の政府関係者の発言は“他人事”の様に聞こえてならない。地球の反対側で「あれだけの死者」を出していることが「由々しいこと」ならば、自国民が30年以上も北朝鮮に拉致されていることのほうがよほど「由々しいこと」であって、それさえ解決出来る能力がない以上、地球の裏側の戦争を「事態を直視しながら検討」すると言われても、誰も信用しはしまい。自らのしかも罪無き自国民の「不幸の連鎖」をまず解決するほうが最優先課題のはずである。

 政権交代期にある米国では、ブッシュ政権最後の活動をしているようだが、来月の政権引継ぎがいかに旨く果たせるかがポイントだろう。共和党から民主党へ、政権交代が澱みなく行われ、来月20日のバラクフセインオバマ大統領がどんな構想を発表し、実質的活動に入るか?
 やはり世界の命運は米国の手にかかっているようで、癪だが、日本はどこからも期待されていないのではないか?

 次々にわが国周辺で起きている事態は、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」日本国民を試しているように思える。 戦後日本国民は、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と思い、「国家の名誉にかけ、全力を挙げてこの崇高な理想と目的を達成すること」を誓ったのではなかったか?

 世界情勢とわが国の係わり合いを見ていくと、どう考えてもこんな美辞麗句が並んだ「憲法」とは不釣合いの様に見えて、そんな実現不可能な憲法を、まず見直すことが来年の最大の課題のような気がするのだが。

憲法の常識 常識の憲法 (文春新書)

憲法の常識 常識の憲法 (文春新書)

日本国憲法を考える (文春新書)

日本国憲法を考える (文春新書)

ここがヘンだよ!日本国憲法

ここがヘンだよ!日本国憲法

イスラエル式テロ対処マニュアル

イスラエル式テロ対処マニュアル

イスラム過激原理主義―なぜテロに走るのか (中公新書)

イスラム過激原理主義―なぜテロに走るのか (中公新書)