軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

オバマ・リベラル政権?

 今朝の産経2面に、古森記者が「オバマ政権記者を続々登用」と題して、昨年の大統領選で「主要メディアの多くが民主党オバマ候補を支持する姿勢をとったが、この選挙戦の報道に当たった記者たちがいまオバマ政権に高官として入り始めた」ことを、その種のメディア筆頭のN・Tが報じたことを伝えている。
 08年の大統領選で、「共和党側は主要メディアの記者たちがオバマ候補と民主党を支援する偏向報道をしていると非難したが、この非難は真実となった」「主要メディアの記者たちは民主党に同情的だという保守派の長年の苦情に根拠を与える形となった」とN・Tは認めたのである。
「米国の大手の新聞やテレビでは記者や編集者が圧倒的に民主党リベラル支持の傾向が強く、08年の大統領選では特に個人のレベルでオバマ氏への礼賛や支持が多かった」が中でもN・Tはその傾向が強いので「ニューヨーク・オバマ・タイムズ」と皮肉られてきたそうだが、「記者たちはオバマ政権への参加を『この政権への就職』という形で報じたことは注視される」と古森記者は書いた。
 確かにCNNを見ていた限りでも、それは少し?行き過ぎだと感じられたものである。やはり天下の公器を使った、公私混同の『就職活動』だったわけだ。


 米国民は今回、リベラルな民主党を選んだが、米国民は「マッカーシー」の忠告を学んでいないらしい。
 これは1938年、ウィテカー・チェンバーズが共産党と決別し、ルーズベルト大統領に政権内部に共産党の活動網が存在することを説明し、国務省高官のアルジャー・ヒスとその弟ドナルドなど、20名以上の名前を挙げたのだが、ルーズベルトは『バカも休み休み言え!』と相手にしなかった。そしてルーズベルトはヒスをヤルタ会談に大統領補佐として随行させた。

 ヒスはその後、トルーマン時代にも高官として政権中枢にいたが、大戦後、マッカーシーによって国務省内にいた57名の共産党スパイのリストが公表され大問題になる。この時N・Tは、ヒスの弁護に大奔走した歴史を持つ。
 N・Tのみならず、ハリウッドの映画界も含めて、リベラルたちは猛然とヒスを擁護したのだが、その全貌は「リベラルたちの背信アン・コールター著:栗原百代訳:草思社)」に詳しい。
 日本でもこれと同様な現象は既に起きている。だから、むしろ気をつけるのはわが国の方だが、議員様の選挙活動も、国家のためではなく、米国リベラル派記者たちと同様、個人の『就職活動』なのだから悲しくなる。


 5面には中央アジアから、米軍の拠点が消滅する可能性について報じられているが、キルギスの基地が閉鎖されると、今後のアフガン紛争解決は難しくなるだろう。それを見越して中ロなど『上海協力機構』が中央アジアの実権をめぐって、米と対決しつつある。オバマ政権は、16ヶ月以内にイラクから米軍を撤退させ、その中から3個旅団をアフガンに増派する計画だが、今後中央アジア情勢からは目が話せない。
 そんな中、胡錦濤主席はアフリカを訪問、援助をちらつかせて影響力拡大を図っている。他方温家宝首相は、ケンブリッジ大学で白人から『靴』を投げられた。「あの靴は間違いなくメイドインチャイナだった!」と言ったらブッシュ並みのユーモアで受けたろうが、首相にはそんな余裕は無かったらしい。これからは、要人の演説会場には『裸足』でしか行けなくなるかも・・・


 ソマリア沖に“海賊退治”に派遣された中国艦隊は、追尾する潜水艦を攻撃しようと一時緊張状態にあったというが、海賊が潜水艦を持っているはずはないから、やはり海賊退治を名目にした中国海軍の「外洋における海洋戦術訓練」だと見たほうが良かろう。

 そんなこんなで世界は緊張しつつあるのに、我が国会には「さぎ」が飛んでいるらしい!

 特に面白かった?のは、政府と人事院との“戦い”である。「内閣人事・行政管理局」への機能移管をめぐって、谷人事院総裁は政府と徹底対立しているそうだが、「その組織防衛への執念は徹底しており、今後も法案作成過程での抵抗をにじませる」と産経は書いた。
 ちょっと待ってもらいたい。そんな程度の批判でいいものか?航空幕僚長が職務に無関係な「歴史認識」を公表したとたん、政府は電光石火「理由も無く首を切った」のに、人事院総裁が、政府の指導に徹底抵抗しても何も譴責を受けず、むしろ官僚からは「英雄視」され、メディアもそれを面白おかしく伝えているのは一体どういうことか?
 官僚機構は政府の指揮下にあるのであって、それに歯向かうことは、民主主義のルールに反するのではないか?それは丁度軍事組織が「シビリアン・コントロール」に従わないということと同じく大問題ではないのか?
「私服の役人」だったら許されるが「制服自衛官」は許されないのか?「制服」だって「国家公務員特別職」、アンフェアーである。
 事の次第はどうであれ、政府に従わない官僚は、即刻首にしてしかるべきだろう。彼だけは首に出来ないのだったら、田母神氏を復職させるべきである。
 甘利大臣は「アンナ不遜な官僚は見たことが無い」と憤りを隠さないそうだが、大臣が話をしようとしても、谷氏は「事務方と同じ見解ならば会う必要はない」と面会をたびたび拒否しているという。どちらが「上司」なのだろうか?大臣も政府も、舐められたものである。
「武人は清く」「文人は陰湿」と短絡的に言う気はないが、この国の組織のどこかが壊れているような気がする。
 クリントン国務長官初来日と言う「黒船入港」を控えて、何とも頼りないこと限りない。


 送られてきた「明日への選択」誌にも、古森記者が「オバマ新政権で日米関係はどうなるのか?」というインタビューに答えているのでご紹介しておく。「日米関係のミニマムは守るが・・・」「アメリカは『内向き』に」「錯綜する中国への期待と警戒感」「歴史認識問題では厳しい局面も」「米国の指導的立場は変わらない」「日本は積極的に主張すべし」と述べているが、果たしで我が政府に主張できるかどうか?
 岡田主任研究員の『民主党とは一体どんな政党なのか?』も大いに読ませる。

リベラルたちの背信―アメリカを誤らせた民主党の60年

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正論 2009年 03月号 [雑誌]

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自衛隊エリートパイロット 激動の時代を生きた5人のファイター・パイロット列伝 (ミリタリー選書 22)

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