軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

国際安保は“3周遅れ?”

 産経とFNNの合同世論調査では、内閣支持率は11・4%に急落したという。不支持は80・2%だというから、低迷する支持率は止められないのかもしれないが、平成13年2月の森内閣は6・9%だったから、まだまだ下がある。

 ところが首相にふさわしい後継者として、小沢(13・4%)、小泉(7・9%)、与謝野(6・8%)、石原(6・2%)、舛添(5・4%)、渡辺(5・1%)、麻生(3・4%)[敬称略]とこれまたドングリの背比べだと産経は書いた。
 国際情勢が急変している最中、指導者不在では韓国が国防白書に「竹島は韓国領土であり、確固として守護するための万端の準備態勢を整えている」と書くのも分かる気がする。韓国にとっては36年間の「日本統治」に抵抗する今がチャンスである!
 先日の日露首脳会談でも、樺太はじめ北方領土について厳しいクレームはつめなかった。次は中国が尖閣を狙っている。


 ところで今朝の「正論」に、佐瀬昌盛防大名誉教授が「国際安保で一周遅れの日本」と題して、アフガンを巡る動きに鈍感な日本の姿勢を嘆いている。
 2月上旬のミュンヘン国際安全保障会議で展開された議論を睨んでの話である。
「アフガンでのタリバン掃討作戦の成否」が将来の米欧関係を左右するし、米国の決意表明の真価が問われる。しかし、ISAFに参加している各国は、犠牲者増大と見通し不十分で「厭戦気分」が漂っているが、戦線離脱国は出ないだろう、と佐瀬氏は言う。

 しかし日本から参加した浜田防衛大臣は、「ソマリア沖海賊対策に触れる短い報告」をしただけで「アフガンには事実上不言及。他の主要国出席者とは全く逆である。ソマリア沖への海軍派遣諸国では海賊対策は議論の段階をとっくに終了、現場での各国海軍間連携という実務処理の季節に入っている」から、浜田大臣が会った、シンガポール、英国、ドイツの国防相の本音は「『いまごろそんな議論をやっているの』だった筈だ」と佐瀬氏は指摘し、「わが国のアフガン支援は軍事面を除けば決して小さくない。アフガンに向けては、日本は米英に次ぐ財政的支援国だし、インド洋上補給活動もある。それがなぜ正当に評価されないのか。答えは明白。日本の『軍隊』がいるべきところにいないからだ。国際社会の判断基準はかくも単純なのだ」と書く。
 まさか浜田大臣がアフガンに関するわが国の財政支援を「さりげなく“嫌味”をこめて」アピールすることさえもしなかったとは思いたくないが・・・。

 佐瀬氏は、日本が憲法上の制約や、集団的自衛権が禁じられていることなど「弁解的説明は、やめた方がよい。対日理解ではなく、日本不可解しか高まらないこと請け合いからだ」と書いたが全く同感である。

 そして憲法解釈の「逐次拡大」が続けられてきたが、「『兵力の逐次投入』が兵法上の下策なのと同様、この『逐次拡大』も政治的下策である。なぜなら、どういじくろうと、欠陥解釈の骨格は不変なのだし、拡大のつど国際安全保障の現実はその先へ進んでいるからだ」とし、過去の麻生外相時代のNATO演説、安倍総理NATO演説、そして小沢民主党代表の『世界』論文などを国際社会は忘れていないと書いた。

 大臣などの『演説』や『論文』が「空手形」であることを知り尽くしている日本国民が、空虚な絵空事だと無視しても誰も何とも思わないが、世界は約束事だと見ていると言うことだろう。
 拉致事件に対する当時の官房長官の国会答弁を読み返してみるが良い。すべては「空手形」だったではないか。

 そして佐瀬氏は「国際的評価を望むなら、集団的自衛権憲法解釈を正して、殿からでもよいから日本の『軍隊』が『居るべきところに居る』こと。それではじめて、国際安保での対日評価は変わる」と結んだ。
 ペルシャ湾のときも、インド洋でも、陸自部隊のイラク派遣時にも、何度同様なことが指摘されてきたか。


 丁度麻生総理は訪米中である。産経の『主張』は「集団的自衛権に踏み込め」と書いたが、果たして総理にその勇気はあるだろうか?
 オバマ政権初の首脳会談、世界で一番目の賓客だと単純に喜び、“お土産”を手渡すだけだったら、国際安保は“3周遅れ”になり、麻生内閣の支持率どころか、世界の日本国支持率も急落する気がする。

 そんなことを考えていると、今回のアカデミー賞受賞の喜びや、先だってのノーベル賞受賞の喜びも、素直に喜べなくなる。乾坤一擲、麻生総理の奮闘に期待したい。

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