軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

与那国島に陸自配置!

 昨日は午後、柏市まで出かけて防衛講話をしてきた。気心の知れた身内の会合だが、国家防衛の実態を危惧し、周辺情勢を知ろうとする意欲が、田母神旋風で更に加速されたようで心強く思った。
 土曜日の午後なのに、小講堂には100名近くの方々が集まり、川村氏と私のプレゼンテーションの後は熱心な質問も出たが、場所を変えた2次会では、テーブルを囲んで『熱烈な議論』が沸騰した。
 気がつくと午後8時を過ぎていて、西東京の仙人の棲家に帰るのに最低二時間を要するから、議論半ばで解散したが、こんな熱のこもった議論風景を、国会議員の方々にお見せできないのが残念だと思った。


 ところで今朝、新聞を見て驚いたのだが、産経一面トップに表記の見出しが躍っている。
「政府は4日、日本最西端に位置する沖縄県与那国島陸上自衛隊の部隊を配置する方針を固めた」というのである。
「配置する部隊は、レーダーなどで船舶の航行情報を収集する沿岸監視隊となる見通しで、規模は数十人。防衛省は、那覇市に司令部を置く陸自第一混成団(約1800人)を今年度末までに約300人増強し旅団に格上げし、その後、旅団から与那国島に部隊を新たに置き、レーダーサイトも設置する」という。

与那国島全景
この島を『防空識別権が縦断している!』 

 しかし「実戦部隊の配置は、島内に演習を行える十分な土地がないことや、中国、台湾を刺激しないよう配慮した結果、見送る方針だ」というから、いつものことながら「画竜点睛を欠く」計画である。
 国家防衛政策で「周辺諸国を『刺激しないよう』配慮する」という意味が私にはどうしてもわからないのだが、中国の核兵器や軍備増強、原子力潜水艦配備、そして空母建造など等、いつも『刺激されっぱなし』の日本が、そんな軍事大国を『刺激しないよう配慮する』というのだから、軍事大国・中国は「軍事力も使えない弱小国が『配慮する』とは生意気な!。舐めるなよ!」と思っているに違いない。

 第一混成団は、演習のたびに「運搬費」をかけて本土に移動し、本土の演習場で演習している。「演習期間」の長さは本土の師団などと同じ『長さ』だが、実態は洋上をフェリーで移動するのに費やされ、練度向上はいまいちだ!と幹部は嘆いていた。
 演習場がないわけではない。米海兵隊が使用している立派な演習場は沖縄本島にあるから、そこで共同演習したほうが安上がり、その上米海兵隊との「他流試合」も出来るから一石二鳥ではないか、と言うのだが、沖縄のメディアと反戦団体を“刺激しない”ためか、誰も触れようとはしなかった。

 空自戦闘機開発でも、周辺諸国の脅威にならないように『足を短く』『空中給油装置、爆撃コンピューター』を取り外した愚かなころの思想と少しも変わっていないのである。これが気が弱い『シビリアン』の実態なのだが、軍事に理解がある浜田大臣はこれをどう改革するか!

 現役時代、李登輝総統選挙妨害を企図した中国のミサイル演習などで、出漁を控えさせられた与那国漁民は、実に5000万円以上の損失をこうむったのだが、政府は補償もしてくれなかった。

 ある時、陸自部隊は機会あるごとに現地視察をしている。連絡調整官たる私にも実態を見て、自衛隊部隊配備を検討して欲しい、と言う要請で島を視察したが、島民達の真剣な防衛意欲には感動したものであった。
与那国島には海保の支部もない。海自の魚雷艇部隊か、空自部隊をと思っても飛行場(当時は1000メートル程度の滑走路)もない。せめて陸自部隊一個中隊でいいから駐屯して島を守って欲しい」というのである。

 私は「出来るだけ滑走路を延長してほしい。そうすれば紛争時だけではなく災害時にもただちに輸送部隊などが駆けつけてこれるが、短いとそれも出来ない」と言ったのだが、今や2000メートルに延長されている。島民は真剣なのである。


 第一混成団長も、陸自の方面総監も防大同期だったので、ただちにこの要請を伝えたが、陸自は定員削減で四苦八苦している時だったから不可能だということだった。

 空自としても廃墟同然?の下地島空港を活用すべし、と現地を視察したが、ここも自衛隊共同使用に島民たちは真剣だった。その後、何度か新聞に島民の要請が報じられたが、その都度沖縄県の“特殊事情”で潰されてきた。「軍事目的使用禁止条項」がネックだったのである。

雑誌『丸』から
 こんなことをしている間に、この空港には“五星紅旗”が翻るぞ!と脅迫したが中央は全く気にもしなかった。当時の私の女房役の幕僚長は今や“有名な”田母神将補であったが、あれから早12年、やっと与那国島に部隊が派遣されるというから彼も肩の荷が下りたであろう。
 浜田防衛大臣が週明けにも視察するそうだが、是非とも島の人々を安心させて欲しいものである。島の前面は台湾、後方に尖閣があって挟み撃ちだ!と1700名の島民は恐れていた。

尖閣魚釣島とF-戦闘機
 今や島の周辺海域には中国の調査船や漁船が出没しているようだから、一層脅威は高まっているはず。国民の安心・安全を優先する政府らしく、この計画を速やかに実行して欲しいと思う。

中国の戦略的海洋進出

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中国の安全保障戦略

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自衛隊風雲録

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国防論

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