軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

解散、総選挙。日本はどうなる?

 昨日は昼前から半日、新宿で雑誌社の取材を受けた。主題は「朝鮮半島問題」「F-X問題」だったが、私の解説に編集長は深刻な顔をして「この国は一体どうなるのか?」と言った。国際関係を継続的に見ている人には当然の疑問だろう。

「秋にはこの国始まって以来の大難が降りかかるだろうが、国民の殆どは気がついていない。もちろん政治家も。有権者が勘違いすれば、歴史始まって以来の苦難が始まるだろう」と私は答えたのだが、予言者ではないから「責任は持てない!」。しかし、選挙という民主的手段の行使という点からだけで見ても、台湾やイランという“好例”がある。一旦“そうなってからでは遅すぎる”、ということである。


 しかし、日々のニュースに目を通しているだけでも、経済不況はもとより、中国国内の大乱、北朝鮮の政権崩壊、中近東の紛争激化などなど、オバマ新大統領の手腕発揮までにはまだまだ時間がかかりそうなことはよくわかる。
 まさに今や自分のことは自分で片付けなければならない時だが、わが国だけは対外的な配慮は一切なく「政権交代!」と国内で叫ぶだけで何の戦略も方針も見えないから、一寸先は闇である。


 昨年まで私は「2008年危機」を唱えていたが、台湾問題も、北京オリンピックも、米大統領選も、○ではなく△か×の選択になってしまった。つまり、悪い方向に決着したのである。

 つぎは2010年の上海万博を機にアジアがどう変動するかだが、江沢民前主席は、上海万博を成功裏に終了したあとの2012年に、武力を使ってでも台湾を併合する、と語ったことがある。

 民進党政権が倒れ国民党政権になったが、これは台湾国民自らが選んだこと、しかし、台湾を併合しない限り中国共産党の「完全制覇」はないとすれば、その頃に何らかの動きがあると考えて間違いあるまい。チベットウイグル等、少数民族に対する「見せしめ」にもなるからである。


 ところが予期せぬ事態が起きてきた。北朝鮮の崩壊が迫ったことである。しかも悪いことに、親中派金正男ではなく、金正日将軍は日本からの帰国女性との間に生まれた二人の男子のうちの3男を後継者に選んだというから、中国の読みは外れたことになるが、将軍が自ら選んだのか?病人の彼に意思表示はできるのか?疑問が残る。

 若い後継者があの国を統率できる筈はないから、一時期親中派として粛清されたが、いまや実権を握っているといわれる義理の弟が采配を揮うことになりかねない。これに対して米韓はどう対応するか?半島情勢は極めて流動的だから、今頃選挙に現を抜かしている時間はないのだが、麻生首相は21日にも解散し、8月30日の総選挙を決断したという。
 少なくとも、選挙ではこれらの「不穏な情勢」にどう立ち向かうかという決意を国民にはっきり示して欲しいと思う。

 今朝の産経3面に、麻生首相が「どの党がみなさんの生活を守るか。日本を守るか。これが争点だ。私は逃げずに国民に信を問いたい」と語ったとあるが、堂々と国民にこれを強調して話しかけて欲しいと思う。

 8月30日が選挙というから選挙期間中に「8月15日」が控えている。この日に靖国を参拝し、国のために命を捧げた尊い英霊の御霊に対して、心から感謝の祈りを捧げ、『日本をどう守るか』その将来についての決意表明をしご加護を祈念すれば、起死回生ののぞみはないとはいえないだろう。

 上海万博を控え、国内騒乱で動きが取れない中国も打つ手はないし、内政干渉している余裕はあるまい。日本国民ももやもやした「戦後の呪縛」に決着をつけて欲しいと願っている。小泉氏が国民に「受けた」のは、郵政民営化よりも靖国参拝を強行したからである。
 逆にあれほど靖国を奉っていた安倍氏が見放されたのは、首相になるや参拝を掲げていた靖国に行かず北京に行ったから、国民は裏切られたと感じたのである。
 困った時の神頼みではないが、孤立無援の麻生首相は、真剣に英霊の前に頭を垂れてみたらどうか?それでもダメだった場合には潔く進退を決すればよい。日米関係に極めて重大な危機が迫っている秋である。国家安全保障を最優先に、国民を説得して欲しい。


 そこで今の日本では歯牙にもかけられていない存在である元自衛官として、僭越ながら、次に掲げる『統帥綱領』をお読みいただきたく、提示させて戴くことにする。


『統帥綱領』第一章「将帥」
「統帥の中心たり、原動力たるものは、実に将帥にして、古来、軍の勝敗はその軍隊よりも、むしろ将帥に負うところ大なり。戦勝は、将帥が勝利を信ずるに始まり、敗戦は、将帥が戦敗を自認するによりて生ず。故に、戦いに最後の判決を与うるものは、実に将帥にあり」

 解説は不要だろうが、念のため付け加えておこう。
「軍の意思は将帥の意思であり、軍の勝敗は主として将帥の意思に支配される。
ゴールを征服したのはローマ人ではなく、シーザーである。
無敵のローマを震駭させたのはカルタゴ軍ではなく、ハンニバルである。
インドまで遠征したのはマケドニア軍ではなく、アレクサンドロス大王である。
ベーゼル、イン河畔に進撃したのはフランス軍ではなく、チェレンヌである。
三倍の優勢を誇るヨーロッパ連合軍に対し、七年の長きにわたって国を防衛したのはプロイセン軍ではなく、フリードリッヒ大王その人である」
フランス軍が強かったのではなく、ナポレオンが偉大だったから部下はどこまでも付いていったのである。


 さて、麻生首相は“将帥”として「全組織の人々が奮い立ち、その全能力を発揮するように」できるかどうか?
間違えて欲しくないのは、私が言いたいのは「崩壊寸前の自民党の将帥」としてではなく、歴史と伝統ある「日本国の将帥として」の話しである。

統帥綱領

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作戦要務令

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状況判断―まず計算し、しかる後これを超越せよ

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世界軍事情勢〈2009年版〉

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