軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

野口健と「英霊の声」

 梅雨が明けて本格的な夏の到来となった。読者の皆様に「謹んで暑中お見舞い」申し上げる。私も原稿用紙で500枚弱の原稿をやっと書き上げ、3本目に取り掛かる前の「一服中」。


 今朝の産経は充実していて話題豊富であったが、今日はお盆の15日、次のコラムに関する所感だけを書いておこうと思う。


 それは6面の「from Editor」欄の「野口健が聞いた『英霊の声』」である。念のため、全文貼り付けたのでご一読いただきたい。

 野口氏が遺骨収集事業に取り組み始めた切っ掛けが、アルプス登山で猛吹雪に閉じ込められ「死を前にして頭に浮かぶのは、懐かしい日本のことばかり。“帰りたい”という思いがこみ上げてきた、海外で戦った日本兵もそうだったんだろうな・・・」と思ったことだという。
 幸い帰還できた野口氏は「帰国後猛烈な勢いで遺骨収集について調べ始める」が、NPO法人「空援隊」とコンタクトしてフィリピンに飛ぶ。夥しい数の遺骨を目の当たりにしたが、日本に持ち帰ることは『国の派遣団にしかできない』ことを知り無念の思いだった時、『おーい、もう行ってしまうのかい。60年も待っていたんだぜ』という”声が聞こえた”というのである。
「国のために、家族のために命をなげうった人たちである。なのになぜ、祖国へ帰れないのか」。
 その後「空援隊」など“民間人”の努力で新方式を構築、「知名度が高い野口さんが加わったことで政治家や官僚もようやく重い腰を上げ始めた」というが、「国の命令で愛する家族を捨てて戦場に向かった国民」に対する、これが国の仕打ちである!
 40年間、国防の任についた田母神空幕長を、理由もなく切り捨てた感覚に相通じるものがあり、故に私は政府や官僚内に蔓延る、愛国心欠如の「異常さ」を許せないのであるが、英霊に対する感覚も全く変わってはいない。日本人?なのに、誰に気兼ねしているというのか?!恐るべき判断力不足、勇気欠如の”大人たち”の醜態を子供達は笑っている!
 

 それはさておき、多くの戦場に散った「英霊達」の声は、いたるところで聞かれる。

 いずれ落ち着いたら、三島由紀夫の名著『英霊の声』には到底及ばないが、これら国から見捨てられた英霊たちの無念の声だけでも、せめてお伝えしたいと思っている。
 生還した戦友たちの多くがそれを聞き、毎年行われる慰霊祭では、“自分だけが生き残ったと悔やみ続け”霊前で『許してくれ!』と嗚咽する姿を私は見てきたからである。


 硫黄島自衛隊基地ができ、自由時間があっても“外出”できない隊員たちは、自ら英霊達を帰国させようと、ボランティアで収集に当たった。収集した遺骨に感謝の誠を捧げ、本土で供養してもらうべく送るのである。もちろん、彼らの善行を取り上げて賞賛するメディアは殆どいなかったから、隊員たちの活動は国民に知られることはなかったが、黙々と先輩達の遺骨を収集し帰還させ続けた。
 今では厚生省管轄になっているが、実態は野口氏同様、隊員たちの努力である。

 そんな状態だったから、野口氏同様「英霊達の声」を聞いた隊員が多くいる。しかし、そんなことを「報告」しようものなら、異常者扱いされるのが関の山、口に出すのは「UFO目撃談」同様、信頼できる仲間内だけであった。


 こんな話もある。硫黄島から帰還するため「空席状態」で離陸しようとした輸送機が、異常に離陸滑走距離が伸びた。「ペイロード(荷物)」はほぼゼロなのに、満載時と同じくらいの離陸距離だったという。

 機長が上空で貨物室を確認させると、貨物係が「荷物室は空ですが、嬉しそうな声で充満しています」と機長に報告する。機長は“了解”し、その後「空」の貨物室に向かって「長い間ご苦労様でした!」と敬礼したところ、「ペイロード」は通常通りに戻ったというのだが、隊員たちは皆、その理由を察知し、暗黙に了解したという。

 
 またこんな話しも実際に聞いた。その昔、硫黄島勤務になった隊員が、世話になった上司が来島したので、帰りに余暇で造っていた「ガジュマルの木」の盆栽を贈呈したが、執務室に飾っていたその上司が原因不明の病気になったというのである。現代医学でも解明できなかったので、ついに夫人が『霊能者』に相談すると、「執務室の盆栽を直ぐに供養するよう」告げられる。驚いた夫人が実行するとご主人はウソのように回復したというのだが、ガジュマルの盆栽が本土に帰還するのを知った多くの英霊達がしがみ付いていたのだという。

 それほど人間の「念」というものは強いものであり、日本ではそれは「能」や「謡曲」の主題にされてきた。
 所詮人間は「生身」の存在、愛する人の元を離れ、絶海の孤島で無念の死を遂げた英霊達の『執念』は、生き残った者が『供養して差し上げる』べきものだと私は信じている。だからこそ、御霊をおくる宗教上の作法が尊ばれているのであり、この世からあの世へと「引導を渡す」べき存在があるのに、葬式やお盆にならないと思い出さない。
 ましてや“俗物化?”したこの国の為政者達は、その義務さえも果たそうとはしない。これでは国家危急存亡の折に、「後に続く若者」が育つ筈はない。
 
 1億2千万の日本人の先頭に立つ首相はじめ、政治家達の最重要な使命は、この国のために犠牲になった、多くの英霊達に心からの感謝の誠をささげることに尽きる。
 それなくして「政権交代」も「総選挙」もない。現状を見れば、未来永劫、脈脈と続く国家の永続性を忘れ、現実の刹那の瞬間しか目に入らない、ガキ共のお遊び以外の何物でもない。
 今日はお盆の15日、野口氏の『英霊の声』に感動した次第だが、来月15日には、英霊達が靖国の森でじっとこの国の行く末を見続けていることを、国民は忘れないで欲しいと思う。

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