シルバーウイークは、高速道はかなりのCO2を排出したようだが、私は久しぶりに読書三昧に明け暮れた。大東亜戦争の真実を求めて、各種資料を乱読しているのだが、非常に考えさせられることが多い。いずれ原稿に纏めたいと思っている。
ところで鳩山新首相は、国連外交で華々しくデビューした。相手が何を考えているか分からない時は、対抗戦略が立てられないから、各国首脳は興味深々で会談したようだ。これもまた戦略の一つなのだが、民主党は十分分かってやっているのだと思いたい。“うまくいくと”うまく相手を巻き込むことが出来るだろうから、自民党政権時代より面白い結果が期待できないこともないが、相手は海千山千の情報大国、軍事大国、次第にわが方の「化けの皮」がはげて、以後、小ばかにされないように望みたい!
ところで“野党第一党”の自民党は、未だに総裁選で内輪もめしている。
今朝の産経抄子は、戦国時代の武将・蒲生氏郷の逸話から「今や野に下った自民党の先頭に立って、与党民主党に挑む総裁こそ、『たぎり立った人』が望ましい」。「『メディアの扱いが小さい』とぼやきながら総裁選を戦っている3人の候補者は、いささか物足りない」と書いたが、いささかどころか全く頼りにならない。だいたい3人とも顔にしまりがない。三人の候補者は、自民党の現状をどう認識しているのか?
先日のブログのコメントに《青空〉氏が、保守同志の分裂、足の引っ張り合いを挙げて、我々自身が《自民党》をひきずり下ろしたのでは?と反省しているが、私は過去の経験から、この党の実態は決してそんな生易しい状態ではなかった、と感じている。
今朝の産経5面の写真を見るとそれがよく分かる。この重大時期に、未だに「自民党本部」という閉ざされた空間内で公開?討論会を開催しているのである。
産経抄子は「氏郷だったらとっくに、馬を走らせていることだろう。行き先は、群馬県長野原町の八ッ場ダムの建設予定地に決っている」と指摘し、「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きてんだ」という刑事ドラマの主人公のセリフで締めくくったが、全く同感である。
これが戦後長期間にわたって、支持者の“好意?善意?”をいいことに、生ぬるい湯に浸かりきった、腐っても鯛どころか“腐りきっためだか”だったことの証明であろう。
上の産経の写真から国民、特に自民党支持者は何を感じるだろうか?失礼を省みず書かせてもらうが、こんなひ弱で、状況判断力もない緊張感のない「候補者」たちが属する政党に我々は生命と財産を預けてきたのである。
以前書いたかと思うが、部隊視察と称して自衛隊基地を訪問するのは良いとして、つぶさに現地の状況を確かめようとするのはむしろ「共産党」であり、自民党は、ツアーを楽しんでいるだけに過ぎないように見受けられたものである。
特に沖縄時代はそうだった。現場では、米軍が困惑しており、県民感情は揺れており、海上保安庁は尖閣問題で多忙を極めていた。いくら現状を上申しても、のほほんとしていて、さっぱり現場の隊員たちの心情を掴もうという意欲は感じられなかったものである。
そして帰京するとお決まりの国会議事録を送ってくれるのだが、「視察報告」なる議事録のほとんどは、我々が提出した「現地報告書」そのままであり、しかもそれらは両院から随行してきた両院所属の役人が纏めたものであった。
国会議事録を調べてみるが良い。そんな馴れ合いの国費による“観光旅行”感想文が、まことしやかな議事録として残っている筈である。そんな殿様旅行三昧で、何が「一朝有事の際に国民の先頭に立つ」心構えが出来るものか。
事が起きた場合、我々自衛隊はただちに指揮所を開設し、主要幹部が情報収集に当たるが、待っていてもつかめないことが多い。そんな時、特に一刻の猶予もならないと判断された場合には、私は自ら「自転車」か「司令車」を運転して現場に飛んだものである。そして現地から幕僚に指示した時もあった。
もちろん大半は、機転が利く幕僚たちの情報で指揮所内で掌握できたものだが、それでも情報班長や、安全班長を現場に向かわせ、極力詳細な事実関係を掴むように努めたものであった。
その昔、雪が積もり始めた入間基地で離陸に失敗したC-1輸送機が「滑走路を逸脱」した事故があった。当時広報室長だった私は、主管部門の運用課から届く情報を鵜呑みにして、記者クラブにピンナップしたのだが、何かがおかしい。
そこで現地入間基地の広報班長に聞くと、単なる「オフランウェイではなく、離陸失敗でC-1は大破している」という。ただちに電話をそのままホットラインにして、情報を適時入手したのだが、運用課からの情報と著しく異なっていたから、現場情報を第一にして処理することが出来た。
当時は輸送航空団司令部は、鳥取県の美保基地にあったから、指揮系統を重視していれば、全く情報は入らなかったし、入っても混乱するばかりだったのである。
軍事担当者としては、指揮系統を無視するのはご法度なのだが、緊急時にはそうは言っておれないことが多いのである。平時の「広報活動」だったから新聞に誤報を発表せずに済んだ程度で終わったが、もしも戦時だったら、無益に兵を殺すことになっていただろう。
今、自民党にとってはまさに「有事」以外の何物でもあるまい。しかし、現場を無視して、自分の城に閉じこもり、○×の札を上げてバラエティーショウを楽しんでいるようでは、この党は本当に分解しかねない。それが日本国にとってどんなに恐ろしいものなのか、それさえ自覚がないのだから、読者の《青空》氏には悪いが、この際徹底的に膿を出さない限り、この党の起死回生は望めないと思う。
ナポレオンは、巨大な軍を率いてヨーロッパ中を駆け巡った。いちいち部下を幕舎に集めて、指示している暇はない。そこで各武将達に「砲声のする方向に向かえ!そこが戦場である」と指導した。だから砲声がすると部下はただちに駆けつけたから、常にナポレオンは、敵に勝る兵力でヨーロッパを席巻した。
政治も経済も、底流に流れるのは「戦の精神」である、と私は思っている。口では「命懸けで」といい、「安全保障」を叫び、「防衛の重要性」を説くふりをしながら、決して本気ではない。裏では選挙協力を要求し、防衛予算を「GNPの1%」に制限し、自衛隊がかかわる事故が起きると、常に選挙区を優先して自衛隊を悪玉にして税金である補償金で埋め合わせる、そんなあくどい生活にとっぷり浸かってきたのだから、戦の精神、ましてや戦国武将の蒲生氏郷の逸話にとても及ぶ筈がない。
自民党再生までの期限は来年の参院選挙までである。既に“敵将・小沢陣営”は、次々と手を打っていると聞く。せめて「めだか」から「鰯」ぐらいに成長して欲しいものだが、それともいっそ解体して、健全なグループと合体し、本来の「鯛」に戻るのが早いのかもしれない。政権をとった!とはしゃぐ民主党の先行きも不透明なだけに、メディアの関心は当分自民党には向くまい。早く戦闘態勢を整えないと、十月一日には“ご近所”で一騒動あるかもしれない。○×の札を掲げて遊んでいる暇はないのである。
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