軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

普天間移設問題が命取り?!

 昨夜はケーブルテレビで鳩山首相のぶら下がり記者会見を見たが、何を言わんとしているのかさっぱり理解できなかった。質問は普天間基地問題である。鳩山首相は「日米合意を無視せず、沖縄県民の声を重視する」といい、岡田外相は「日米合意を白紙に戻すのは困難」といい、北沢防衛相は「合意は重い」という。

 首相自身の発言もぶれにぶれていてつかみどころがない。日米合意は「無視しない」といい、あるときは「前提としない」といい、またあるときは「重い」という。まるで「怪人二十面相」である。

 肝心要の沖縄では、知事が政府に苦言を呈し、一部の反対派は、決りかけていた合意を白紙に戻すことによって、「これでやっと日米離反にこぎつけた!」と意気盛ん、中国は虎視眈々とそれを眺めている。


 コケにされたオバマ大統領は23時間で離日し、中国には4日間滞在、学生達との交流まで実施した。いまや、太平洋をめぐる「覇権争い」では、米中が2頭の龍になった。日本はJALに象徴される様に「沈む太陽」そのままである。普通の国の国民だったら「悔しい思い」を抱くのだが、今の日本人は“去勢”されているから、なんとも思っていないらしい。「別にいいじゃん!」というところか。

 経済大国も夢のまた夢、いまや3流国に成り下がり、そのうえイラク、アフガンに「むしりとられて」いる。国内では年間3万人以上の自殺者が出ていて、ホームレスが増え、若者の異常極まりない殺人ゲームが蔓延している。
 これら常軌を逸した社会情勢を伝えるメディアの陰で、着々と「日本解体工作」が進んでいるのに国民はさっぱり気づいていない有様。


 日本をめぐるアジアの近代史を垣間見て、私は今回その一部を出版したが、もちろん公にするのを憚る情報に多く接した。それは当然といえば当然のことなのだが、戦前戦中を中心にした日本の近代史を習っていない若者達に理解できるはずもなかろう。
外国人参政権」などという、前代未聞の憲法違反条項が、新政権の中央から「平然と」持ち出されても、これが恐るべき国家解体法案だという危険意識さえない。


 同盟国は、あまりにも情けない「侍の国」にとうとう幻滅を感じたようで、年末にかけて対日政策を再分析した後、来年早々新たな手を打ってくるに違いない。「安保ただ乗り」の「サルの惑星」並みの扱いになることは目に見えている。
 それが悔しかったら、早く「自立」することである。いいチャンスではないか! 小沢氏が唱えていた「普通の国」になるチャンスである!
 自国防衛を他国にゆだね、「核廃絶」を唱えてみても誰も信用するはずはない。第一、米ソ冷戦間の危機を、その米国の核の傘に守られてきたではないか。核廃絶を唱えながら、米国の核の傘の下でのうのうとしているキリギリス!というのが周辺諸国の日本観である。

 今、鳩山政権が行っていることは、明らかな「反米・離米政策」であり、日米安保破棄への第一歩である。その恐ろしいまでの影響を計算に入れていない首相の言葉遊びほど危険なものはない。自国防衛もままならない日本が、一朝有事の際に誰に頼るべきか、を分析してみるが良い。
 韓国が、北朝鮮が、ロシアが、台湾が、そしてフィリピンが手助けしてくれるとお思いか?

 
 アフガンに年間10億ドル、5年間で50億ドル出すそうだが、部族長が懐に入れる習慣がある社会に、何の効果があるというのだろう。「アリババと40人の盗賊」をよくお読みになるが良い。

“必殺仕分け人”とか称する目立ちたがり屋?が、官僚たちが積み上げてきた予算計画をめった切りして楽しんでいるが、確かに“実力者”と称する自民党のボス達の「な〜な〜」の馴れ合い予算編成撲滅の効果は一部にあったにしても、その一方で、やっと浮いた?税金を、惜しげもなく「アリババ」に注ぐような政策は、マニュフェストには書かれていなかったはずだ。

 今では自民に愛想を尽かして民主に投票した有権者の大半が悔やんでいるようだが、前から言ってきたことだが、これが「民主主義的ルール」なのだから、悔やんでも遅い。既に「ヒトラー」は水面下で活動し始めている。その危険性に気づいているのがほかならぬ「同盟国」のようで、年明けから驚くべき事象が多発する予感がする。


 中国では1970年4月、周恩来北朝鮮を公式訪問、4月に人工衛星打ち上げに成功、そして10月には大気圏内で水爆実験に成功し、カナダと国交樹立、11月にはイタリアとも国交樹立、71年9月には林彪毛沢東暗殺に失敗してソ連に亡命するが墜落死、10月25日に国連に加盟、同時に台湾[国民政府]が国連を脱退する。

 そんな最中の72年2月に、ニクソンが中国を電撃訪問、田中首相は大慌てで日中国交回復を図った。この当時の歴史的事実を再検討してみると、何と無く今の状況に似ている事に気がつく。


 この1972年という年は、米国ではウオーターゲート事件が勃発しており、日本社会には浅間山荘事件や、中ピ連の活動が活発化し、日本列島改造ブームで軽佻浮薄の様相を呈し始めていた。

 他方泥沼化していたベトナム戦争ではパリで和平協定が締結され、米軍は2段階方式でベトナムからの撤退が決った。つまり、世界最強の米軍は、小国ベトナムに惨敗したのである。

 10月に第4次中東戦争が勃発し、日本では石油ショックの上6大都市すべてに革新市長が誕生している。革マル派のうちゲバも活発化、社会のモラルは低下する。
 翌74年4月には、韓国で朴大統領が反政府デモを弾圧、8月にはウォーターゲート事件ニクソン大統領が辞任、そして10月には、文芸春秋誌が「田中金脈」を直撃、12月に田中内閣は総辞職する。


 別にこの流れに現代を無理に当てはめようという気はないが、わが国を取り巻く戦略環境はこれによく似ている様に思う。中国内部事情も不安定、いつ何が起きてもおかしくはない。オバマ大統領だってかなり人気は落ち目、アフガンへの増派問題は命取りになりかねないから慎重であるが時間は限られている。

 鳩山首相にいたっては「田中金脈」ほどではないにせよ、「個人献金問題」は命取りになりかねない。米国の対中外交、鳩山政権の「親中外交」、そしてスキャンダラスな背景を考えると、オバマ大統領の方から、第2の「ロッキード事件」の矢を放つ公算無しとしない。自分が生き残るための秘策?である。
 仮にそうなった場合、当時の田中首相は“クリーン三木”首相と交代して自民党は一息ついたが、さて、今そうなったら誰があとを継ぐ?誰も顔が浮かばないのではないか?

 巷には「菅総理」だとか、いよいよ「小沢氏の出番」だとか無責任なウワサが絶えないが、肝心な時に野党党首も自転車事故で休養中というから、なんとも日本政界は末期的症状を呈している。


 ご本人は気がついていないようだが、米国の“生き馬の目を抜くような外交手腕”が現実味を帯びてきたのは、いつに13年間も紆余曲折を経て辿り着いた「普天間基地問題」を台無しにした「同盟国」の裏切り行為にあるという事を忘れてはなるまい。残り少ない年末にかけての日米会合でこれに決着がつかなかった場合には、私の「妄言」も真実味を帯び「友愛」なんぞ吹き飛んでしまうことになりかねない気がしている。

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