軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

鳩山流「少女歌劇」演説!

 体調を考慮して、二日おきくらいにブログ日記を書こうか、と思っていたのだが、このところ、十二指腸潰瘍回復効果抜群な「お笑い政治劇」が続いているから、今日もPCの前に座っている。


 昨日の首相の施政方針演説は、少女歌劇を見ているようで周りは白けていたが、ご本人はなんとも真剣だったから、実に面白かった。
 今流行の若いお笑い芸人の中には、観客よりも自分が笑ってしまうから効果半減する事があるが、私はお笑いを提供する者は、至極真面目な語り口で聴衆を笑わせるのが芸というものだと思っているから、その点では昨日の鳩山首相の長時間にわたる“真剣な”芸には癒された!


 今朝の産経には、「いのち守る政治、実行に移す」という見出しが躍り、≪いのちを、守りたい。いのちを守りたいと、願うのです。生まれてくるいのち、そして、育ちゆくいのちを守りたい≫という鳩山首相の語りだしを、≪あまりに詩的な首相の言葉に、野党席からのヤジと与党席からの大拍手が議場で交錯した。複数の閣僚は思わず、失笑した≫と書いたが、産経によるとこの“原稿”は、劇作家で内閣官房参与平田オリザ氏によるものだという。平田オリザ氏を知らないのでインターネットを調べたらウィキペディアにこう出ていた。

≪平田 オリザ(ひらた オリザ、男性、1962年11月8日 - )は、日本の劇作家、演出家。青年団主宰、こまばアゴラ劇場支配人、内閣官房参与大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授、首都大学東京客員教授日本劇作家協会理事。桜美林大学文学部助教授、桜美林大学総合文化学群教授、東京大学教育学部講師、早稲田大学文学部講師などを歴任した・・・
 2009年10月15日、鳩山由紀夫内閣内閣官房参与に任命される。所信表明演説の草稿を、他の参与らと共同で執筆。作風は、現代口語演劇理論なるものを提唱。(中略)
  平田は「人間の日常はドラマティックな出来事の連続ではなく、静かで淡々とした時間が多くを占めるが、人間のそのものの存在が十分に劇的であり、驚きに満ちている」という理念から来ており、これまでのありのままの日本語から乖離した演劇理論を見直して、日本人のあるべき自然な言葉を、舞台上に再構築し、それを見つめ直していこうという意思が込められている。 ただし、演劇になじみのない者には、何が起きているのかわかりにくいのではないか、と批判されることもある。(中略)
 大阪大学教授就任後は、大阪の文化活動にもかかわっている。大阪創造都市市民会議発起人、シューレ大学アドバイザーとしても活動した。なお、小、中学校時代のクラスメイトにデーモン小暮閣下がいる≫


 これでこの少女歌劇のような所信表明文のなぞが解けた。国民の生命財産を預かる「政治家」としての言葉ではなく、劇作家の作文なのである。「演劇になじみのない」私などには「何が言いたいのか」わかりにくい言葉であったが、鳩山首相の施政方針演説でなかったら、あるいはその内容について素直に受け止めることが出来ただろう。

 読み上げた首相自身が演説後に≪理念型で具体性が乏しいという批判が来るのではないかと思いながら、演説をした≫と語っているのだから何をかいわんや、あながち私の感想も外れてはいなかったことが分かる。
 しかし、この鳩山首相の感想はいただけない。平田氏の“作文”に「具体性が乏しいという批判が来るのでは?」などという資格は鳩山氏にはなかろう。ならば自分の言葉で語るべきで、自ら文を書くべきであった。そんな感想は脚本家・平田氏に対する侮辱である。


 沖縄には≪いのちドゥ〜たから≫という言葉があるが、「で、命をどのように守るの?」という問いには首相はさっぱり答えていない。何よりも、政治家が施政方針に「愛」を24回も語るなど、演歌の世界じゃあるまいに、施政方針演説には決して馴染まないだろう。


 中でも違和感を覚えたのが、阪神淡路大震災時の遺族の話の引用だった。地震発生時に、為政者としての責任があった時の県知事は、有馬温泉にしけこんでいたので自衛隊災害派遣要請もできなかった!と現地の方が怒り狂っていたことを思い出す。その後彼は勲一等に叙勲されている。これを昔の軍人は「一将功なりて万骨枯れる」と言った。
 瓦礫の下の子供さんの足が冷たくなっていくのにどうしようもなかったというご遺族の話しは誠に気の毒だが、では鳩山首相だったら何が出来るか、どうしてくれるのか?という事を国民は聞きたいのである。


 更に思わず吹き出したのが「労働なき富」「雇用を守る」「働く意欲のある方々」のため、などという言葉が、月に1500万円の「子供手当て」を母親から受け取り、汗水たらして働いた経験もない首相自らの口から飛び出したことである。これは平田氏の言葉であることが分かった今では良く理解できたのだが、労働者経験のない首相ご本人も忸怩たる思いでこの文を読んだのではないか?


 野党席の最上段には、自民党の歴代首相らが腕組みして居眠りしたり、のけぞって眠っている姿が映ったが、今まで彼らが読み上げていた「官僚の作文」の方が、より現実的に感じたのは私だけだろうか?もっとも、これら老害議員こそ「必殺仕分けの対象にすべきだった」という家内の言葉には実感がこもっていたが・・・

 この演説が空疎だったのは、おそらく外交、安全保障的視点が抜けていたからであろう。諸外国だったら噴飯ものだったのではないか?
 今朝の産経で「少女歌劇」的演説だった背景が分かった以上、取り立ててクレームをつけることはしないが、いつまでこんな「少女趣味」演説に生きがいを覚えているような方に、われわれ国民は命を預けねばならないのか?と心細く感じる。「いのちを守りたい」と願っていただくのは勝手だが、実行手段に欠けている以上誰も信じまい。
 それとも、5月までに、北朝鮮で地獄の苦しみを味わっている同胞・拉致被害者の「命」を救ってくれるのだろうか?「いのちを守る」と首相自ら約束した以上、大いに期待しておこうと思うが、問題になるや、これも「勝手に平田氏が書いた文だから、私は知らない」と逃げる可能性が非常に高いと私は感じている。
 こんな首相の言葉を信じることなく、国民は「自らのいのちは自ら守る。決して政治は守ってくれない」と自覚することが大切だ、と思わされた施政方針演説だった。

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