軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

日本船員の“命を守れ!”

 昨日は早朝から福岡に飛び、午後1時から3時まで会社研修の講師を務めてきた。JALのアテンダントの「笑顔のサービス」は何と無く痛々しかった。私には無能な経営者の犠牲者にしか見えなかったからである。

 久しぶりの福岡だったが、体調不安定なので同窓生達との“懇談”は遠慮し、2時間立ちっぱなしで講話した後、夕方の便で帰京したのだが、体力回復に若干自信が出た。勿論、講話中に喉が渇き、声がかすれる現象が出たし、脚力が衰えたか、帰宅後痙攣が起きたが、この程度ならまだまだ「大法螺」吹いて歩ける、と思ったのである。


 研修主催者は福岡の大手民間企業で、社長以下20人以上が熱心に聞いてくれた。高校の同級生が研修会を取り仕切っているのだが、幹部の教養として「歴史に学ぶ」と題して既に15回目の幹部研修会だという。
 この日は、午前中には別の講師が「幕末と明治維新を前にして」「幕末動乱と明治維新西郷隆盛勝海舟)」、午後は私の「大東亜戦争秘話」、その後は「多重債務者の発見方法と救済」と題する弁護士さんの話で研修会は終わった。


 講演終了後、取り仕切っている同級生とお茶を飲んで懇談したが、明治維新前後の歴史、福岡藩戊辰戦争の関連など、友人の口から関係者の名前がよどみなく出てくるのには恐れ入った。さすが新聞社の文化部長経験者だけのことはあり造詣が深いと思ったのだが、日本の現状分析は完全に意見が一致したので心強かった。

 彼の分析は、日本の現状は「米国の植民地」であるというもので、それを脱出するには自主憲法制定以外にないが、それには残念だが相当時間がかかる。あきらめずに努力する以外にない、というのだが、全く同感。しかし、帰京中の機内で、ふと「俺の目の黒いうちは無理ではなかろうか?」と悲観的になった。

 崩壊した自民党は、何故崩壊したかの自覚がなく、憲法改正から1歩も2歩も後退した要綱を掲げて再出発だという。だから小沢氏など民主党首脳も“野党”を舐めてかかっている様に思うのだが、自主憲法制定を掲げた新党が出現すれば、この夏には大きな変化が起きるのではないか?と思い、僅かに期待を抱くことにした・・・


 今朝13日の新聞に目を通すと、5面に「不適切発言で陸自幹部処分」とあり、防衛省は日米共同訓練の開会式で「信頼してくれ・・・」発言をした中澤連隊長を「注意処分」にしたという。全くこの役所は進歩していない。
 記事によると「政治や外交を軽視すると受け取られかねず、首相発言を批判していると誤解を招く発言だ」そうであるが、12日のコメンテーターK氏の≪民主がこの発言を政権に対する批判と受け取るってことはオバマに対する鳩山の発言が本当はただの、その場しのぎの口先だけだったってことを日本政府は認めたってことになる≫じゃないか。

 当の連隊長は「結果として誤解を招くような発言をし、申し訳ない」と釈明したそうだが、こういわざるを得なくされたのだろう。
 昔からこの役所はこの手で自衛官の発言を封じてきた。今回は文書による「注意処分」だったというから、内部規定でいえば比較的軽いものだが、注意していないと陸自内部で“上を伺って”、この後の勤務評定上、昇任に影響させるに違いない。ほとぼりが醒めたころを見計らって、復活させることを期待したい。
 少なくとも連隊員は勇気ある連隊長が“干されない様”に厳重に監視し続けて欲しいと思う。
 政府は何かあると「シビリアン・コントロールを危うくする」として、一部のメディアと一緒になって現役幹部の発言を“自粛”させるよう圧力をかけ続けてきた。しかし、今後はこの手の手法は効果を発揮しまい。


「シビリアン・コントロール」とは“政治が軍事に優先する”というものにすぎないのだが、これを自分に都合が良いように解釈して、例えば「田母神事案」に見られるような「シビリアン=役人」と都合よく解釈し、あたかも「役人優位」であるかのように自衛官いじめを強行してきた。しかし実態は「シビル・アンコントロール」なのである。
 無能な政治家がこれに乗っかり、事の真相をよく確認もせず役人の進言だけで処罰し、後でホエヅラかいたのが麻生首相と浜田防衛大臣だったことは記憶に新しいが、世論の反発を買って政権崩壊し、誤った解釈であることが実証されたではないか。
 
 ただ仄聞したところでは、それを良い事に制服組の中に役人に協力して暗躍した奴がいたというから尋常ではない。
 今回も、陸自トップがどのように動いたのか、または陸自出身である統幕長がどう関与したのか、その辺が見えてこないが、いずれ彼らを支える第一線の部下達の間から真相は聞こえてくるのだろう。しかしこんなばかげた言葉遊びはもう止めにしてほしいと思う。
 御巣鷹山に整備不良のジャンボ機が墜落して、520人もの乗員乗客が死亡した時、一部メディアが救援に向かった自衛隊に非難の矛先を向けてきたが、広報室長だった私はそれらの言われなき非難記事に対して「反論」したが、あの時も驚いたことにすねに傷持つ上司から発言を制限され、三沢に飛ばされた経験がある。彼は私に「内局幹部に迷惑をかけてはいけない」と言ったのである。当時を思い出し、あのときの状況と少しも変わっていない防衛「省」が残念に思われてならない。

 田母神事案が起きた時、「海賊退治協力」等米国は日本に色々注文していたが、日本政府は回答を避けさっぱり要領を得ずイライラしていた。その最中突如の解任劇であった。
 肝心な国際協力についてはのらりくらりなのに、「空軍大将の首を切る」のは電光石火だったというので、あっけにとられた海兵隊幹部が「さすがは侍の国、大将の首を一瞬にして切った!」と驚き、日本人教官に「武士道について教えを乞うた」話がある。

 今回の共同訓練でも、休憩時間は専ら米軍人たちから今回の件の解説を求められ、隊員たちは大変だろう。連隊長の訓示を聞いたのは自衛隊員だけではないからである。
 英語の出来不出来はいざ知らず、隊員たちは同盟国の仲間たちの疑問に真摯に答えてやって欲しいと思う。
 大臣がおっちょこちょいで実に情けなくなるが、後しばらくの辛抱ではないか?この件については今日の産経主張欄にいいことが書いてあるから貼り付けておきたい。



 ところで13日の産経22面に、衝撃的な写真が出ていた。これを見てなんとも感じなかった政治家や役人がいるとしたら失格である。おそらく自衛官海上保安官、勿論警察官も、実に不思議な感に襲われたに違いない。船団は何故攻撃を防がないのだろうか?と。この写真を良く見ていただきたい。

 SSの抗議船「スティーブ・アーヴィン号」から≪日本船団の監視船「第2昭南丸」にむけて、皮膚を刺激する薬品「酪酸」が入ったビンを多数投げ込み、一部が船体に当たって割れた≫その実際を撮影したものである。
 ≪飛び散った薬品が乗組員3人の頭部にかかり、防護ヘルメットの隙間から漏れて顔の皮膚の痛みを訴えた≫というが、これは悪辣な犯罪行為である。日本の新聞が「抗議船」などと表現するから日本人はそう思うのだが、これは国際常識的に見れば明らかに抗議船ではなく「テロボート」でありテロ攻撃である。米海軍だったら直ちに応戦したであろう。
 日本人は何故「敵側」に親切なのだろうか?
 重武装してわが国に侵入し、追跡した巡視船に武器で反撃した北朝鮮の「武装船」を、日本ではなぜか「不審船」と表現する。なにがどう誰にとって「不審」なのかは一切不明である。国民もそれを“不審”に思わない。

 SSのテロリストは、目にあたると失明の恐れがある赤外線で攻撃をし、照明弾を水平に発射しているというが、平野官房長官は「けしからん話で極めて遺憾だ」というだけで、首相が施政方針演説で「いのちを守りたい!」と絶叫したことには触れていない。ハナから首相の演説を信じていなかったのだろう。この政府は「国民の命を救いたい!」「命・命」と国民に向かって約束したのではなかったのか?
 首相の演説を“信じている”のだったら、直ちに日本船団の“監視船”に対して「とりあえず刑法の正当防衛、緊急避難条項を適用して、自己防衛すべし!」と指示すべきである。それをしないほうがよほど≪けしからん≫話である。

 全日本海員組合の近英男水産部長が、「国民がテロに近い暴力にさらされ、生命の危機を感じているのに、助けようとしない政府がどこにあるのか」と大きな声を張り上げたことは前回書いたが、是非海員組合にも、速やかに「正当防衛、緊急避難対処」で「船員たちの命を守る」工夫をしてほしい。

 例えば、テロリスト達が「酪酸弾」を発射してきたら、こちらも直ちに「酪酸弾」で応射する。レーザー光線を照射してきたら、こちらもレーザー光線で応射する。そして最後は“実力行使”で阻止すべきである。

「平時における抗議活動」などと自分勝手な解釈でテロリストたちの殺意ある行動を政府がいうように“斟酌”してやる必要はない。現に攻撃を受けている船員達の命を腰抜け政府に預けてはならない。
 国は今まで自衛隊に「必要最小限の自衛力」を押し付けてきた実績がある。海員組合も自ら「必要最小限の自衛措置」をとられるよう進言する。

金正日は日本人だった

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自衛隊エリートパイロット 激動の時代を生きた5人のファイター・パイロット列伝 (ミリタリー選書 22)

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一外交官の見た明治維新〈上〉 (岩波文庫)

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明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)

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幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)

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坂本竜馬の野望

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