軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

普天間基地存続?

 昨日は同窓会で「米軍基地問題」について裏話をしてきた。開始前の夕食中、会の役員をしている美人後輩からビールを注がれ、ついつい飲んだら一気に顔が上気した。退院以降の禁酒・節酒の効果覿面!、ずいぶん弱くなったと思ったが、お陰で錚々たる満員の同窓生の前で“不適切用語?”を意識しないで“がんがん”話ができた。少し喉が渇いたが体調は回復に向かっている!
 昨日の私の話は、

1、沖縄の基地問題=“75%”は大嘘!
2、普天間基地移設問題の経緯
(1)継続使用契約はほぼ終わっていた!
(2)“外人部隊”が大活躍!
3、現状の問題点
(1)軍事的観点から
(2)沖縄県が抱える財政・産業問題
(3)振り出しに戻った移転先
5、今後の見通し=結び

という項立てだったが、14年前に私が個人的に整理した内容がまだ通用するのだから不思議だったが、特に“内地”では殆ど報道されていない裏話ばかりだったから、皆さん目が点になっていたようだ。
 
 私は「普天間返還」が軍用地地主に何の相談も無く唐突に時の橋本首相から持ち出されたとき、地主間に大きな動揺が走り、自民政権に対する疑念と、今後の生活手段確保のため「呉越同舟常態」になったことを話したのだが、現地を知らない“大本営”は、岡本“偵察将校”に任せて事態を楽観視していた。

 当時大々的に現地新聞が報じていたのは、楚辺通信所(象のオリ)の明け渡しを要求している地主の知花氏が中心だったが、楚辺通信所の地主総数は443人で契約完了地主は442人、つまり、知花さんたった一人だけが契約に反対していたのであり面積の99・96%も契約済みだったのである。ちなみにこの方はかって日の丸を焼き捨てた筋金入りの運動家。
 普天間基地もそうで、2328人中1624人が契約済み、704人が反対していたが、その面積は6049坪で、全体のわずか0・45%に過ぎなかった。いわゆる一坪地主に翻弄されていたのである。
 当時「反対地主3000人集会が開かれた」と朝日新聞などがトップで報じていたが、契約反対地主3000人の内訳は沖縄県に1478人、県外は1509人で、他に外国人が13人、不明が2人というものであった。
 契約を済ませ安定した地代収入を引き続き当てにしている大方の地主達は知花氏はじめウチナンチュー以外の無責任な一坪地主達に怒りを覚えていたのだが、そこに「普天間返還」が宣告されたのだからたまらない。返還は普天間だけに留まらないだろうと地主会は混乱に陥った。


 そんな裏話だったから殆ど理解できなかったのだろうが、この頃地元紙には健全な地元住民の意見も出ていたのだが無視されていた。
 例えば「基地全部無くていいのか?(琉球新報6・1012)」という弁護士の意見、「深い基地依存体質=5千億以上の経済効果(沖縄タイムズ8・11・15)」などで、沖タイは「基地で働く従業員8000人」と雇用の実態を書き、基地取引業者や地主に払われる関連収入だけで1600億円以上・・・」と書いた。とりわけ安定した軍用地料を当てにした沖縄の3銀行はそれを担保に軍用地ローンを組んでいて約200億円の融資残高があり、基地ごとに融資上限が定められ嘉手納だと30〜35倍の融資が長期の返済期間で受けられるという。
また軍用地の中には黙認耕作地もある。軍用地代をもらいながら使用も可能という不思議な土地だ。中にはこうした耕作地を転貸しして、賃貸料を取る地主もいるなど、基地との関係はあまりにも深い」と結んでいるが、冗談じゃない。地代のすべては国民の税金である。橋本さんのポケットマネーから出ていたわけではないのである!

 だから、登記簿記載事項がかなりあやふやな摩訶不思議な軍用地である以上、普天間基地が返還されその実態が白日の元に曝された場合、日本中の声なき声は怒りに震えるであろう。如何に沖縄戦で犠牲になったとはいえ不健全極まりないからである。橋本さんはこうした隠蔽されてきたパンドラの箱を開けてしまったのである。

 だから普天間問題は進展しないのだ、と私は考えているのだが、日米核密約を暴いた民主党だから、これらの不明朗な“黙認事項”も暴いてもらいたいものである!

 約一時間の説明の後、質疑応答になったが誰も手を挙げない。仕方なく?同窓会会長である朝日新聞元社長・箱島先輩が代表して「今後の見通し」を質問した。

 この14年間細々と合意点を求めて続けられ、ようやく2国間で合意に達した辺野古沖案も、鳩山さんが振り出しに戻してしまった以上、普天間基地返還問題は「無かったことにする」以外解決の道はあるまい、と私は答えた。

 つまり作戦計画を立案する際見積もる「わが可能行動の見積もり」からすれば、
1、県外か県内かでは県外はありえない。
2、県内では嘉手納や伊江島防衛庁が十分検討した結果削除され、辺野古沖に決ったた経緯がある。
3、更に「浮体工法案(メガフロート)」は沖縄県にメリットがないとして削除、埋め立て案と内陸案も「安全」と「騒音」対策上、埋め立て案以外無いことは分かりきっていた。しかしそれじゃ「海面を先行取得しても儲からない!」
 
 そこで防衛庁辺野古沖に苦心の作であるV字滑走路案を立てて一応の決着を見たのだったが、これを鳩山さんがひっくり返してしまったのだからその責任は極めて重い。


 さて改めて同様の見積もりに入ると、最終案(V字案)を変更すれば今度は14年間も蛇の生殺し状態だった米海兵隊は反対するだろう。ではやはり元に戻す(V字案)しかないのか?
 ところが今度は、知事はじめ地元沖縄県民が意地でも猛反対するだろう。いずれにせよ行き詰ってしまった。

 そしてこの問題が解決しないと民主党は分裂を招くだろうが、社民党が出て行っても、既に水面下では公明党がにじり寄っているから、数は満たされそうであるから、“実力者”はどんな手を使うか?
 夏の選挙に問題はないと判断して、強引に折衷案としての「陸上案」を持ち出すのか?
 しかしまとまるまい。陸上案を推進している議員も居るが、この案では普天間移設の課題である「安全」と「騒音」問題は解決出来まい。

 四面楚歌、鳩山さんは自ら墓穴を掘ってしまった。出来ることは「棚上げ」、つまり「普天間移設凍結」以外にないのではないか?というのが私の「原案」である。


 ところが面白いことに産経(他紙は見ていないので)が誰の差し金か知らないが、おとしどころと思える“アドバルーン”を揚げている。今日は「普天間は存続?」という前原沖縄担当相の答弁、6日には「返還後、自衛隊が管理」という摩訶不思議な記事。自衛隊のどこがどう管理するのだろうか?上空の航空交通管制の実態も知らないで・・・。


 講演会終了後、同級生数人とお茶を飲みながら語りあったのだが、この問題は軍事問題、日米問題、政治問題と正面から捉えて分析すると間違いやすい。私は新著「金正日は日本人だった」を纏めていた時、事実は小説より奇なることを思い知らされたのだが、この手の問題は「金と女と酒」を下敷きに分析すると良くわかる。
 この場合は「金」である。防衛庁案に反対するのは土地の先行取得に遅れた連中かここに移設されてはメリットが無い連中だろう。
 では新に内陸案を推薦する連中は、自分にもっとも有利な場所に誘致し、安定した地代を確保しようとしている連中ではないか?と疑うべきだろう。

 先頭に立って折衷案を推進している者は儲けを意識した不動産屋か建築業ではないのか?そしてその裏には金に目が無い議員たちの姿がちらついている。

 どちらにしても、沖縄県民(一部は潤うかもしれないが)の将来を考えて行動しているとは思えない。魑魅魍魎が金目当てに動いている図式がこの問題解決のための方程式だろう」と言っておいた。

 当たるも八卦、当たらぬもまた八卦だが、ご参考までに「雑誌テーミス」2000年5月号の興味ある記事を貼り付けておこう。今も昔も魑魅魍魎たちの行動パターンは大して変わってはいない筈である。

金正日は日本人だった

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