軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

「帰って来た蛍」観劇所感

 昨日午後、青山の草月ホールで「帰って来た蛍〜神々のたそがれ〜」を鑑賞した。連休最終日、それも猛暑の中だったが、座席はほぼ満員、ご老人よりも若者たちが多く、それも若い女性が多かったのには嬉しくなった。

 私は特攻隊に関する映画、演劇は好んで鑑賞してきたが、イデオロギーにまみれたものや、表現がオーバーでぎこちないもの、時代考証がいい加減なものなど、満足のいくものは少なかった。

 2007年夏、石原東京都知事が製作に携わった映画「俺は、君のためにこそ死にに行く」が上映されたので鑑賞したが、その所感は07年6月1日のブログに次のように書いた。


≪平日とあってご老人夫婦などが約30人という閑散とした情況だったが、今まで日本で製作された中ではなかなか見られない“率直な”映画だった。それはごく自然に「靖国で会おう」と言って散っていった青年達の感情が表現されていたからであろう。

 当時の国民感情の一部も“率直に”表現されていて好感が持てたが、主人公たる「鳥浜とめ」さんの人物描写には少々違和感を持った。私はとめさんには直接お会いしたことはないが、聞き知っている限りでは、もっと「おおらか」で「正直」で、包容力があった方のように思っていたから、岸恵子という世界的大女優の起用は、その点で私にとっては馴染み難かった。私には、フランスの大女優的印象が強い彼女には、薩摩オゴジョを演じるのは無理だったのではなかろうか?と勝手に想像した。(「知覧特攻基地」知覧高女なでしこ会編:話力研究所刊などを読んだ限りの話だが・・・)≫
と書き、7月21日には、たまたま蕎麦屋で遭った特攻隊生き残りの方々の反応もブログに書いた。


 今回、率直に感動したのは、主役が見事だったことと、イデオロギーなどにとらわれない率直な国民感情を生かしていたからだろうと思う。

 この≪知覧≫にまつわる作品でトメさん役を演じたのは、次の5人だという。

奈良岡朋子 - 映画『ホタル』(富屋食堂主人・富子 2001年)。岸惠子 - 映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』(2007年)。伊藤つかさ - 舞台『帰って来た蛍』(2008年)。薬師丸ひろ子 - 土曜プレミアムなでしこ隊〜少女たちが見た“特攻隊”封印された23日間〜』(2008年9月20日、フジテレビ)。大林素子 - 舞台『MOTHER〜特攻の母 鳥濱トメ物語』(2010年) ≫

 しかし今回が一番素直に鑑賞できたように思うが、それは鳥浜トメ役の二宮さよ子さんがトメさん似であった事にもよるが、若き特攻隊員たちに対するわけ隔てないの“母親”としての感情移入がうまかったからだろうと思う。


 古希を過ぎた身だから涙腺が緩んでいて、どうにもかなわなかったが、ふと隣を見ると次男坊もびしょびしょ、周りを伺うと、みな泣いていた。それで安心して場内観察をしたのだが、前の席の若い青年も、その右の3人のかわいらしい女性たちも、みな泣いていたから私は安心して?めがねをはずしてハンカチでぬぐった。

 終演後、楽屋から出てこられた基地司令官役の伊吹剛氏に紹介され、堂々たる演技を賞賛したのだが、空自浜松基地を見学した際、資料館で旧軍の司令が発する実際の「命下」のテープを聴き、一瞬にして悟ったという。

 見学に参加した製作総指揮を取った柿崎祐治氏も、
≪現代の若き自衛官・・・将来の戦闘機のパイロットの訓練を拝見させていただいているとき、20歳くらいの彼らの表情や質問して返ってくる言葉が、かっての特攻隊員たちに思えてなりませんでした。教官も『現代の我々も日本を守る気概は、当時の方々となんら変わりません』といわれていました。現在にも至純は生きていたのです。その一方で、特攻で散っていかれた英霊は、現在の日本の姿を見て何と思うでしょう・・・≫
とパンフ冒頭に書いている。


 浜松基地見学に参加した10名の俳優さんたちも、T−4練習機のコックピットに座ってみて、この狭いコックピットの中で「20年足らずの人生を完結させるために」飛び立って行った若き彼らを偲んだといいます。
 司令官役の伊吹剛氏の演技を賞賛しつつ「ひとつだけ気に入らなかったのは・・・」と言いかけると彼は真剣なまなざしで私を覗き込んだから、「3人の憲兵です!」と肩をたたいて笑うと彼も破顔一笑した。憲兵は気の毒だがいつも“悪役”だから・・・

 勿論、陸軍特攻隊なのに機体が「ゼロ戦」だったこと、隊員が風防を開けたまま、右腕を機外に出していたシーンなどはご愛嬌だが、これは機材不足、ロケ地が海軍の鹿屋だったことによるもの。私のような「戦闘機オタク」しか気づかないだろうから誤差のうち。

 息子も感動、かなり“水分を消耗”したから、青山1丁目の地下街にあった銀座ライオンで“補給して”帰宅した。

 演劇は今日はお休み、明日から25日までだから、ぜひご鑑賞されることをお勧めしたい。上京できない地方の方はDVDが発売になるそうだから、ご家庭でじっくりとご鑑賞されるといいだろう。涙が流れても気にならないだろうから・・・
 来月、この大戦で散華した方々に感謝するため、そして英霊にこの国を立て直すご加護をいただくため、多くの若者たちに靖国に参拝してほしいと思う。


 

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