軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

拉致家族を“政争の具”にするな!

 金元工作員が来日して、田口八重子さんの兄の飯塚繁雄氏と長男・飯塚耕一郎氏と面会した。今日は横田ご夫妻と面会したが、この面会の目的は一体何だろう?

 面会場所が前総理・鳩山氏の別荘だということも気にかかる。ルーピイ首相が起死回生の手段として拉致問題に熱心なところをアピールし人気回復を狙ったが、首相降板したため目的を達することが出来ず、今回の時期はずれ会談になったというのが一般的だが、それにしても私的別荘を使うとは「公私混同」ではないか?
 鳩山氏も北に深い関係があり、それは夫人が「金星人」ではなく「金○○」だからという噂があることと無関係か?事実ならば本気で奪還に向けて戦ってほしい。

 鳩山氏が本気でこの事件を解決しようと計画していたというのであれば、総理退陣後であっても菅本部長が「特命全権大使」として指名し、拉致問題解決に当たってよいはずだろう。≪ただの人≫でさえ法務大臣が務まるのである。中井公安委員長では役不足、だからこの唐突な“行事”は奇妙だといわれ、鳩山氏は本気じゃないと言われるのである。


 鳩山氏の別荘を使ったのは警備上などと言い訳しているが、むしろそんな田舎のほうが危険であろう。金元工作員一人のためにチャーターした航空機代を含めて、費やされた国費はいくらになったのか、ぜひ国民の目の前でレンホウ女史に仕分けしてほしい。


 菅首相拉致事件で重要な役割を務めたシンガンス受刑者の助命嘆願をしている。今回の選挙で落選した千葉景子氏も助命嘆願した一人であった。当時「嘆願書」に署名した議員は旧社会党議員を中心に128名にも上っている。その経緯は昨年10月末に上梓した「金正日は日本人だった」の第9章「日朝をつなぐ『闇の橋』」に詳しく書いておいたが、公表できない裏情報も多々ある。


 2002年9月17日の日朝首脳会談で、金正日自ら「拉致を認めて謝罪」し、地村さん以下4名の生存、めぐみさん、田口さんなど8人を死亡と公表したにもかかわらず小泉首相は「予想外の事態?」に絶句し何の手立ても取らなかった。
 その後10月15日に、地村さん以下5人が帰国したが、戻す、戻さぬで揉め、政府は結局5名を永住させた。この判断は間違っていなかったと思うが、奇怪なのはその後日本政府もつかんでいなかった曽我ひとみさんの夫・元米兵のジェンキンス氏と娘さんが日本に帰国したことである。
 被害者たちが帰国できたことは評価するが、問題は、あれから何年たっているか?
 ジェンキンス氏は脱走兵として米国で詳しく事情聴取されている。勿論帰国者たちも、全部が全部とは言わないまでも、帰国後事情聴取され、かなりの情報を政府はつかんでいるはずだと思うのに、政府はなんら奪還の手段を講じないばかりか、一ジャーナリストに情報を漏らす?愚さえ冒している。政府が動けない理由は何か?

 この問題に当初からかかわっている荒木氏のメルマガにもこうある。(そのまま貼り付ける)

≪[調査会NEWS944] (22.7.21)聞きっぱなしはやめよう   荒木和博

 本日軽井沢での飯塚耕一郎さんの記者会見で、金賢姫田口八重子さんや横田めぐみさん以外に見たことがあるような気のする人物がいるという趣旨の(正確な言葉は分かりませんが)話をしていたと伝えられました。「詳細は警察当局に言っている」と金賢姫は語ったそうです。

 「警察当局に言っ」たのはもちろん今回ではなく、昨年飯塚繁雄さんと耕一郎さんが訪韓して金賢姫に会った前後のことです。つまりそれから1年間、情報があっても事態は何も動いていなかったということになります。警察は、そして政府はこの間いったい何をしていたのでしょう。まさか「確認ができない」とか言って隠蔽してきたわけではないと思いますが。

 これまでもそうですが、いくら情報を収拾してもそのままでは何の意味もありません。隠すなら具体的な救出の手はずを進めるか、それができないなら家族はもちろん、国民にも知らせるべきです。せっかく厖大な労力をかけて情報収集のために彼女を呼んできたのなら、明確な成果を出さなければ意味がありません。最も優先されるべきは「救出」であり、そのための情報収集です。そのことを忘れてはいけません。

 ご参考まで、前に流した田原総一郎氏の裁判における陳述書をもう一度引用しておきます。再びこうならないことを望むのみです。

                                  • -

 私(田原氏)は、(北朝鮮から)帰国後の平成19年11月8日、外務省にて、外務省幹部4人と拉致問題について話し合いました。(中略)私が、ソン・イルホ大使が「8人以外に複数の日本人が生存している」と話したことを伝えたところ、外務省幹部は「同じ話を聞いているが、8人以外の複数の日本人が帰国しても、北朝鮮に対する世論が好転することはないと判断したため、その話はなかったことにした。」などと話しました。
===============≫

 私も退官後、この問題に多少かかわってきたが、関係者の努力で全国ネットが完成すると、チャンネル桜が呼びかけた≪ブルーリボン≫は瞬く間に全国に広がった。
 その後リボンはバッジになったが、議員諸侯は競ってこれをつけて仲間入りし始める。勿論、西村真悟氏や土屋敬之氏のような“本物”は別にして、バッジをつけることで票を意識する?と思われるような議員が目立つようになった。

 私は防大以来38年間、制服を着て国家国民のためと信じて戦闘機に乗り続けてきたが、結局自衛隊は、政治屋にとっては「政争の具」以外の何ものでもなかった、と虚脱感を覚えたものである。
 今回の軽井沢の鳩山別荘会談も、実は「シンガンス助命嘆願実行者」たちが蔓延る現政府による「政争の具」以外の何物でもない気がする。
 もしそうだとしたら彼らの行為は背信行為であり、家族に対する大罪である。

 自衛隊が政争の具扱いされても我々は平気であった。それは事に臨んでは身の危険を顧みず職務を遂行する決意があふれていたからである。

 しかし「拉致事件」はそうはいかない。我々のように武器も持たず、夫として妻として、兄弟として、平和に過ごしていた庶民が、一夜にして北朝鮮というごろつき集団に肉親を引き裂かれたのである。彼らを救うのは「国家」しかないにもかかわらず、その国家は、彼ら彼女らの生命を守ろうともせず、今や己の保身に躍起になったルーピイたちに奪取され、彼らの「政争の具」にされている。

 今回の金元工作員との面会が腑に落ちないのは、荒木氏が書いたとおり、事件後すでに30数年たっているにもかかわらず「見たことがある」とか「見た気がする人物がいる」とか「日本の警察に話している」程度の会話しか家族が聞けないことである。
 国民はきわめて異常だと思わないのだろうか?

 政府は勿論だが、これを追っかけまわしてワイドショーに仕立て上げているメディアも「他人事」、対応振りはかなり異常である。
 その昔、北の犯罪が浮かび上がったとき、大半のメディアは否定したことを忘れてはなるまい。罪滅ぼしの意味もこめて、真正面から「奪還」に向けて北と日本政府を追求してみるが良い。

 そうあってほしいと思いつつ、今朝の横田御夫妻の中継を見たがいたたまれなかった。
政府もメディアも、ご家族を正視できるか?

 何も感じないというのであればそれは「けだもの以下」であり、万死に値する。

日本が拉致問題を解決できない本当の理由

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家族〈’08〉 (光文社文庫)

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拉致はなぜ防げなかったのか (ちくま新書)

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北朝鮮帰国事業 - 「壮大な拉致」か「追放」か (中公新書)

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