軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

「あたご裁判」に注目する

 講談社から上梓した「UFO」について、集英社の「プレイボーイ」誌の取材を受けたが、表紙に「ウヨウヨいます!」とあったのには苦笑した。週刊誌記者の見出しをつける才能には“脱帽!”。ただし写真は怖い表情ばかりだったから“失望!”。
次回からは「水着姿」にしてみるか?!

 
 平成20年2月19日午前4時6分ごろ、千葉県野島崎沖でイージス艦「あたご」に漁船が衝突した事件で起訴された二人の海自3佐(少佐)が、第1回公判の罪状認否で「世論が沸騰する中、ゆがんだ捜査が行われた」「検察の主張は私の罪を作るための虚構。作られた過失で刑事責任を問われるいわれはない」「原因は衝突回避の行動を取らなかった清徳丸側にある」と主張、無罪を主張した。
 小沢氏さえ起訴に出来ない?検察は、頭が痛いことだろう。もっとも、軍事に疎い機関によって「調査」された資料を基に判断するのだから限界はあるだろうから同情する。
 海軍が、コーストガードに調査されるという不名誉を余儀なくされた軍刑法無き「交戦権を否定された自衛隊」の悲劇だが、今回はようやく堂々と戦う姿勢を示したといえる。


 たまたま海保のヘリ墜落で示した6管の醜態に見られるように、事故の真因追求よりも、自己保身とメディアにあおられた空気にあわせようとする、この役所のいびつな事故調査と裁判に終止符を打ってもらいたいものである。
 このような、自衛隊側が一方的に「敗訴」する前例を作ったのは、昭和46年7月30日の「雫石事件」である。その後「なだしお事件」など、ことあるごとに自衛隊は「完敗」してきたが、その裏には、選挙区民の人気と票を気にする政治家の暗躍と、自衛隊が責任を取り、自衛官を処罰することによって自己保身を図る官僚、何よりも、補償金が国費で確実にまかなわれることを期待する被害者側の思惑があった。こんな「一将功なりて万骨を枯らし」てきた悪弊はそろそろ打破すべきである。


 JR西日本と官僚間の癒着、今回のヘリ墜落事故で表面化した隠蔽体質が俎上に登ることも期待したいが、何よりも海自(OBも含む)が一枚岩となって、真相究明に協力し、二人の「少佐」を支援することである。

『事故調査に情緒は通じない』 

 今後は、広報室事件?で私が受けたような色々な「圧力」が彼らに加わるだろうが、それを隠蔽しないで公開してほしい。遺族の情緒的な感想にも左右されてはなるまい。
 亡くなった治夫さんの甥が「あたごも清徳丸も両方が動いていたのだから、無罪などありえない。認めるところは認めたほうがいい。公正な判決を期待したい(産経)」と語っているが、そのとおり。「両方が動いていたのだから、清徳丸にも非があったはず。無罪ではないはず。その点を「認めたほうがいい」し、同僚の漁師も「首相も防衛相も『国が悪かった』と頭を下げに来た。あたごの艦長も涙を流して頭を下げていた。今になって『漁船のほうが悪い』と主張するなんて・・・」といっているが、雫石事件でも増原長官と上田空幕長が頭を下げて辞職した。しかし事故調査してみたら、全日空機のほうが『訓練空域に進入』して『追突していた』ことが判明した。
『今になって・・・』といってみてもそれが真相なのだから仕方あるまい。しかし雫石事件では追突された訓練生は無罪放免になったものの、なぜか教官が有罪になった・・・

 群馬少女殺害事件では、17年後に“犯人”の無罪が確定した例もある。地元漁業関係者の中には補償金が心配な人もいるのだろうが、頼りにすべき当時の政府はいまや野党、さて、審理がどのように展開するか大いに見ものである。


 ところで実にいい写真が昨日の産経に出ていた。パキスタンの洪水被災者支援で急派された陸自第1次隊の50人が、ムルタン空港に到着した時の写真である。

『“軍人”ではない陸軍将校』


 出迎えた子供たちと握手する隊長?の風格が実にすばらしい。子供たちもきっと頼りがいがある、と感じたに違いない。

 こんないい表情をした日本人男性が少なくなった。連日TVに登場する政治屋の顔とは比較にならない。
 陸自は国内では牛や豚を屠殺して埋める作業、水害出動と、夏休みもなにもあったものではないが、国民はきっと見ているから、今の日本の政治屋や外交官には出来ない任務であることを肝に銘じて日本“軍”の真価を発揮してきてほしい。無事の帰国を祈りたい。

なだしお事件

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ルワンダ難民救援隊ザイール・ゴマの80日 [我が国最初の人道的国際救助活動]

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サマワ便り―陸自第10師団のイラク派遣

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ペルシャ湾の軍艦旗―海上自衛隊掃海部隊の記録

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自衛隊エリートパイロット 激動の時代を生きた5人のファイター・パイロット列伝 (ミリタリー選書 22)

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実録 自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO

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