軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

“中華思想”を忘れていないか?

今回の尖閣侵犯事件に関する記事などを読むと、隣国「中国」は、古来中華思想を戴く国だということを忘れているのではないか?というものに出会うことがある。


例えば、9日土曜日の産経新聞「土日曜日に書く」欄の「霧散した北京五輪の理想」というコラムにもそれを感じる。
2年前の北京五輪で掲げられたスローガン「ひとつの世界、ひとつの夢」。「あの絢爛豪華な開会式や閉会式で強調されたスローガンを中国指導部は忘れたのだろうか」「『世界大同』の理想主義を謳った五輪スローガンと事件(尖閣問題)後の中国政府の対応の間の落差は余りに大きい」と鳥海論説委員は書いた。
しかし中国人のDNAは自分が世界の中心だという『中華思想』で貫かれていることを忘れてはならないだろう。


釈迦に説法だが、「中華思想(ちゅうかしそう)とは、中国大陸を制した朝廷が世界の中心であり、その文化、思想が最も価値のあるものとし、朝廷に帰順しない異民族の独自文化の価値を認めず、『化外の民』として教化の対象とみなす古代中国大陸に存在した考え方。中華主義華夷秩序ともいう」とある。


北京五輪で『ひとつの世界』と叫んだ意味がわかろうというものである。「俺のものは俺のもの、人のものも俺のもの」といって憚らない彼らは『開会式で、世界は俺のもの!』と叫んだのである。
その意味が理解できないほど日本人は“お人よし”であり、性善説に満ちているといえる。五輪のスローガンと尖閣事件後の北京政府の対応には『落差』は始めからないのである。


イラク、アフガン、中東に手を出して身動きが取れない米国は、一時的に中国ににじり寄って『ステークホルダー』と持ち上げたが、世界第2の軍事大国、経済大国になったとおだてられて傲慢さを増した中国に『中華思想』を嗅ぎ取った。
この国には、『ひとつの山に2匹のトラは住めない』という格言があることにも気がついた。図に乗った中国が『世界制覇』を目指し始めていると世界が警戒し始めたのである。


その揺さぶりのひとつがノーベル賞授与であり、南シナ海にゲーツ国防長官がエンゲージしたのである。中国とは犬猿の仲であるヴェトナムは、ASEAN拡大国防相会議で、ゲーツ米国防長官を取り込んだが、米国にとっても南シナ海はインド洋、ペルシャ湾につながる戦略上の要である。地域の利益と結びつき、南シナ海を『自分の海』だとする中国に対する反撃態勢が示された。我が北沢防衛大臣が、目立った働きをしなかったのが惜しませる。いいチャンスだったのに・・・


私がよく引用する『風土(和辻哲郎著)』のなかで和辻は、
「シナ大陸の大いさは、直接にはただ変化の乏しい、空漠たる、単調な気分としてのみ我々に現れる。言いかえれば、我々はかかる『大陸』との交渉において、単調にして空漠たるおのれをすでに見いだしているのである。ところでこの風土の中に代々生きてきた人間は、かかるおのれをのみ常に見いだし、それ以外のおのれを見いだす機会に恵まれないのである。そこで受容的忍従的な性格は、この単調空漠に堪え切るところの意思の持続、感情の放擲、従ってまた伝統の固執歴史的感覚の旺盛となって現われる。これはインド的人間の性格とちょうど対蹠的なものである。インド的人間を特にその感情の横溢において特徴づけるならば、シナ的人間は特にその無感動性において特徴づけられるべきであろう」と喝破している。


そのような『無感動性』を特徴とする国が、今回の『尖閣侵入』の不法性と横暴さを世界に印象付けたのだが、続いて劉暁波氏に対するノーベル賞授与に対して、近代国際社会ではとても受け入れがたい『非人間的処置』で対抗している。如何にこの国が『中華思想』にとらわれて、「四方の海皆同胞」というおおらかさが理解できない国柄であるかを如実に示してしまった。
共産主義思想という、没人間性イデオロギー国家だけが頼りのこの国は、ロシアと北朝鮮ににじり寄りはじめたが、日本統治下で『和』を体得した朝鮮民族にどのくらい通用するか見ものである。孤立無援の北は、今は背に腹は代えられない窮地に立っているから、仲たがいできないだろうが・・・。


尤も、朝鮮半島も「小中華思想」の国である。そんな『近隣アジア諸国』に囲まれていることだけでも、今回の事件を機に日本人は再認識すべきだろう。
少なくともわが国周辺には「平和を愛する諸国民」等存在していないのだから、「公正と信義」に信頼することは一から無理な相談だったのだという事を・・・
中華思想にほれ込んでいる官房長官には無理だろうが・・

風土―人間学的考察 (ワイド版岩波文庫)

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