軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

対岸の火事か、超法規か?

北の砲撃事件がTVでワイドショーの格好のネタになっているが、この国はやはり極楽とんぼの生息地だけのことはある。どうせ「対岸の火事」、自分に火に子が降りかからないと実感しないのは日本人の常らしい。

着弾した弾が「野戦砲弾」か「榴弾」か、放物線を描こうと直射であろうと、そんなことはどうでもいい。「断固たる措置をとる!」と叫ぶだけでは「ならず者一家」の決心は変えられないということだ。ましてや他人事のような「事件の解説」程度じゃ国民は納得しまい。


被害者である韓国も、これ以上の「断固たる措置」はとれないだろう。すでに機会を逸したからである。
今頃になって米国も空母などを派遣して米韓共同演習をするという。「天安号」“撃沈事件”で怒った米韓は、直ちに黄海で演習する!と言ったものの、“北の保護者”からクレームをつけられ、先に演習を実行されるや、実施海面を日本海に移動させた。この時点で「勝負はあった」のである。


もちろん、被害者の韓国は北を威圧するためにも、国民をなだめるためにも、現場周辺海域で実施したかったに違いない。しかし“スポンサー”はそれほど熱意はなかったから、対中配慮を優先させて日本海に場所を移し引き下がった。
今頃ノコノコ出かけても、北はせせら笑っているに違いない。
「来るなら来て見ろ張子の虎!なんなら米艦艇周辺海面に一発ぶっ放してみるか!」


アフガンで動きが取れず、その上イスラエル・イランの動きもおかしい。もっともイランにある低濃縮ウラン製造のための遠心分離機5800基が“何らかの技術的問題”で一斉に作動を停止したから、その間に北を一時的に威嚇するのも一法だが深入りは避けたい。やはりアメリカの視点はアジアより中近東、欧州である。
そのEUも経済危機、国内では何よりオバマ人気に陰りが見える。だからここで一旗揚げて、自由陣営の旗頭として日韓の米国離れを防ぐ気か…。しかし、彼にそれだけの勇気があろうか?だから今度もさほどの効果は期待できまい。


ロシア訪問中の温家宝首相とメドベージェフ大統領は、中露間の「戦略的関係」を強調したが、中露国境地帯、特にロシア極東方面への中国人の進出は止まらない。人的侵略である。旧満州地方は風雲急をつけているのだが、日本は気が付いていない。
砲撃情報をTVで知るていどの危機管理意識しかない首相だから、知らないのは当然だろうが、今の彼らの頭には「政権維持」しかないのである。国際情勢なんぞ、知ったことか!というところだろう。リストラされたら“ダダの空き缶!”だもの…


今日の産経には、実に面白い論評が出ていたのでご紹介しておく。その1は友人・河添女史の「辛口コラム」。その2は元友人、石井氏が「談話室」に寄せた「アピール」である。

河添女史は「暴力装置」発言に対して激怒しているようだが、発言元の「ゲバ学生」だって若いころは“戦争ごっこ”にうつつを抜かしていたのである…。ただ若い女自衛官よりもはるかに責任感が欠落していただけだが。


石井氏は日本政治の現状を「劇団化」してわかりやすく解説したもの。北の砲撃を「神風」と表現するような政府与党じゃ、日蓮上人や特攻隊員の罰が当たる!年内総辞職か?!私は菅一座を下した後に「座頭市」一座を招いてほしいと思うのだが。


やられっぱなしの韓国民の間に不満が鬱積しているようだが当然だろう。金章洙元国防相らは「空軍機で直ちに北の海岸砲陣地を破壊すべきだった。軍事挑発には比例した対応が原則」と語っている(産経)が正論である。
今まで「やられっぱなし」だったから北朝鮮の態度がでかくなり、行動が大胆になっていることに気が付いていない。尖閣問題もその“好例”である。子供のころ、九州の田舎では臆病者の行動を「関西人の口喧嘩」と笑っていたものである。九州では「口より手の方が先」だったから…
こう書くと南北間が緊張し戦闘行為がエスカレートする、無責任発言だ…と人道的見地から評論する先生方がいるだろうが、北の金様だって怖いものがたくさんあるのだ。臆病者ほど強がるのは世の常、金章洙元国防相発言に私は同感である。


過去を振り返ってみるがよい。有名なチェンバレンの融和政策を挙げずとも、1986年4月15日にレーガン大統領が発動したリビア爆撃は、リビア最高指導者のカダフィー大佐殺害を目的にしたものだったが、間一髪彼はそれを逃れた。しかしその後彼はすっかりおとなしくなったではないか…

領土・主権問題では、1982年4月2日にアルゼンチン軍がフォークランド諸島へ侵攻した際、イギリスのサッチャー首相は毅然たる武力対決を決定して、即時フォークランド近海を戦闘地点として封鎖、クイーンエリザベス号を兵員輸送に使用してまではるか南米の最南端、フォークランド諸島に攻撃をかけたのではなかったか?


わが国のように、北方領土はロシアにとられたまま、竹島も韓国に実効支配され、尖閣までも中国に取られそうになっているのに、声さえ上げようとしない国家は珍しい。まさに絶滅寸前の「希少国家」だろう。さらに100名以上もの同胞が拉致されているというのに、政治家たちはブルーバッジをつけて“おしまい!”じゃ「ヌケガラ政府」と言われても仕方あるまい。


ところで「暴力装置」構成員諸官、特に西部方面では態勢保持に努めていることだろうが、最高指揮官・菅首相からの命令が下りてくるまでにミサイルは着弾している。そうなれば「民間人2名死亡」じゃ済むまい。
報道を見ていると、民間人が死ねば一大事らしいが、自衛官が死んでも「当たり前」の様らしい。ま〜そこは覚悟してついた任務、拗ねることなく「頭が腐っていても」ゆめゆめ油断することなく、栗栖統幕議長の“精神”に学んで任務を完遂してもらいたい。国民の大半(もちろんOBも)は君たちを信頼し、頼っていることをお忘れなく!

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