軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

もって他山の石とせよ

今朝の産経9面の黒田記者の記事には深く考えさせられた。読みにくいところもあろうかと思うが、貼り付けるのでまずご一読願いたい。

弛緩した韓国軍内部の実態報告である。上官に「おじさん」と呼びかける兵士がおり、マスコミは過去の軍事政権時代を否定するため「部隊の不祥事」を競って暴露し、軍に対する“悪者イメージ”を広げ、軍は世論の批判を過剰に気にして「安全第一と事勿れ主義」が蔓延した。
軍当局は「厳しくつらい軍隊」ではなく「楽しい軍隊」をPRし、部隊の娯楽施設や隊内食などもっぱら楽しい話を広報してきた。
そして近年は「『軍が戦闘集団というより行政機関化』し、指揮官たちは現場より執務室を好み、昇進が関心のサラリーマン化が進んだという」「指揮官たちの事なかれ主義や保身には当然、過去2期、10年にわたる対北融和政権の影響が大きい。北朝鮮に対しては『対決ではなく対話と協力』が強調され『北を刺激するな』と言われては士気低下は避けられない」と黒田記者は指摘している。


自衛隊でも昭和40年2月に、第2次朝鮮動乱が勃発したとの想定で研究しようとした「三矢研究」演習秘文書を、新聞記者が幹部の机上から“勝手に持ち出し”て当時の社会党岡田春夫議員に提供、衆議院予算委員会で問題となる事件があったが、「紛争が起きた場合の行動において現行法規では対応できない問題点」にまで踏み込んで研究していたことが仇となったのであった。
つまり、真剣に国防を考えていた自衛隊を特ダネ目当ての記者と、自己顕示欲旺盛な政治家が利用したのであったが、盗まれた幹部が処罰されるという事態に懲りた自衛隊では、以後この種研究は非常に消極的になり、任務は適当にお茶を濁して波風立てないことを第一にする風潮が芽生えた、と私は感じてきた。田母神事案をいうまでもなく、今の防衛省自衛隊内にはちょうど韓国軍の現状に似たところがある。


更に今では、国民のだれもが全く予想さえしなかった『左翼政権』が出現し、自衛隊はその指揮下で「暴力装置」扱いを受けているが、三島事件時と同様だれもそれに体当たりしようとはしない。
韓国同様、自衛隊もまた「戦闘集団というより行政機関化」し、「指揮官たちは現場より執務室を好み」、「昇進が関心のサラリーマン化が進んだ」と書かれないようにしてほしいものである。


この記事を他山の石として国民の輿望に応えてもらいたいものだが、やはり憲法で交戦権を否定されたままでは、いくら日米共同演習で技量を積んでも、画竜点睛を欠くのは避けられまい。
今のままでは栗栖元統幕長の言通り「超法規的」に対処しなければ国土防衛はおぼつかないのだが、最高指揮官は子ども手当、トマト農家訪問、党内うちゲバ対処で国家安全保障なんぞどうでもいいように思っているとしか思えない。
しかし、繰り返して言うが、だからと言って絶対にお隣の軍隊と同じになってほしくない。


2000年8月、日韓研究会で訪韓した時、6月の金大中金正日会談は「ノーベル賞目当て」だと韓国側から知らされ意味不明だったが、翌日訪問した空軍基地幹部たちは、金正日に打ち込まれた楔で、軍内の士気が低下することを非常に心配していた。
10年たってその通りになり、天安沈没、延坪島砲撃となったのである。今更いくら米軍と共同演習しても≪後の祭り≫だろう。


わが自衛隊が置かれた国内環境はもっとひどい。自民党政権時代にも、組織は単なる『集票マシーン化』し、自民党から出馬した制服組も憲法に体当たりするものは一人として出なかった。投票した隊員は常に“期待を裏切られてきた”のである。

しかし、世界最強の米軍からそれなりに評価されてきたのは、過去の先輩方と、自衛官各自の自覚と技量が、周辺アジア諸国のそれに比べて格段に高かったからだと私は感じてきた。しかし、『左翼政権』の指導と日和見な役人たちの監視の下、「暴力装置」は国民の期待に応える成果を上げることができるか?非常に気がかりである。
「百年兵を養うは、一日これを持ちいんがため」であることも忘れず、後輩たちには“臥薪嘗胆”してほしいと思っている。


ところで、昨日は都心に出てラジオ放送の収録をしてきた。家内と昔なじみのお蕎麦屋さんで楽しい夕食をとったので、下町に根付く、日本文化というか健全な家庭について書こうと思ったのだが、今日は黒田記者の記事を先にすることにし、次回にほのぼのとした下町風情を書こうと思う。また、渋谷の本屋でいい資料を見つけたので購入した。難しい文章よりも、写真は多くを語っている証明である。
これもまたじっくりと分析したいと思う。


ついでに届いた本などをご紹介したい。
軍事関連書籍を世に広めようと孤軍奮闘している「かや書房」から、朝鮮戦争の詳細な記録である「韓国戦争」が連続出版されているが、その最終巻の第6巻である。「休戦」が主題だが、今回の事変の裏にある事実を知るには非常にためになるからぜひご一読いただきたい。


次は陸自幹部学校戦術教官であった家村元2佐の書である。彼も現役終了、これからは≪兵術研究家≫として活動してほしいと思う。

中国はなぜ尖閣を取りに来るのか

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真実の日本戦史 (宝島SUGOI文庫 A い 2-1)

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真実の「日本戦史」戦国武将編 (宝島SUGOI文庫)

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韓国戦争〈第3巻〉中共軍の介入と国連軍の後退

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