1990年8月2日、イラク軍は隣国クウェートへ侵攻し8日にはクウェート併合を発表した。これに対し、諸国は第2次世界大戦後初めて一致して対イラク経済制裁措置を発表した。その6ヶ月後、ブッシュ合衆国大統領は同地域への軍派遣を他国へも呼びかけた。
これに応じた34か国による多国籍軍が編成され、1991年1月17日にイラクへ攻撃が開始された。
この時私は三沢基地司令であったから、同居している米軍の行動をつぶさに観察できた。軍需物資・死体袋の移動、兵員、特に軍医の移動、そしてやがて大型輸送機の飛来が激減した。
空自の定期便を利用させてほしいといってきたのもこのころである。
国内では戦争を予期した意見は少なかったが、私は米軍は間違いなく開戦する!と幕僚たちに告げ、秋以降、毎朝湾岸周辺の天候を報告させるようにした。そして1月17日、予報官が「今日は最適の条件であります」とブリーフィングしたから「いよいよ今日始まるぞ!」と言ったところ、幕僚たちは一斉に笑った。
そこへタイミングよく副官が入ってきて『テレビが湾岸戦争開始を伝えました』と言ってメモを渡した。トトカルチョでもしていたら大儲けできたのに…
≪当時、米国の新聞に出た漫画≫
この時日本は「血を流さない分90億ドルのお金」で対処したが、昨日書斎整理をして「文芸春秋(2010・8)」誌の中に、この拠出金の不透明さについて、元官房長官の野中広務氏が「小沢さんが仕切ったこのカネは日本では百三十億ドルといわれている。……日本では百三十億ドル支援したという記録が残っているのですが、アメリカで明らかになっているのは百億ドルだけです。一体、あとの三十億ドルはどこへいったのか?」と語っているのを見つけたのだが、確かにその後米軍幹部も130億ドルというと怪訝な顔をしていたことを思い出した。
野中氏が墓に入った後に、詳細なメモが公表されるらしいから期待しておこう。
16年前の1月17日は阪神淡路大震災が起きた日である。この時私は松島基地司令であった。救難隊のヘリコプターが派遣され救援活動に参加したが、隊員たちは不自由をものともせずよく働いた。現場の生々しい報告から、兵庫県の危機管理意識の薄さと反自衛隊感情の根強さに改めて驚いたものである。
産経によると既に震災の体験がない市民が4割になったという。6434人の犠牲者には改めて鎮魂の祈りをささげたいが、為政者たる者の責任感をもっと高めなければなるまいと思う。
≪神戸の追悼式会場=産経から≫
しかし、内閣改造した新閣僚の顔を見ると本当にわが国の危機管理に真剣に対処しようとする気があるのかどうか疑いたくなる。
与謝野氏の裏切りについては「君、裏切り給う勿れ」とでもいうのが精いっぱい、あきれてものも言えないが、古来日本人はこの手の身の処し方を忌み嫌う。
自分だけがいい思いをする身勝手さが、いかに薄汚い精神の持ち主か、唾棄すべき裏切り行為だとする思想で、忠臣蔵を見るまでもなく、最近の「謙遜?」した「タイガーマスク現象」を見れば理解できるだろう。成功は部下のもの、失敗は指揮官のものという、武士の精神が失われた証拠だろうと思う。
もっとも彼のDNAに武士はいなかったか??
私が言う“裏切り”とは、自民党比例で投票してくれた有権者の支持を捨てて、悪口を言っていた民主党に寝返った裏切り行為のことである。次回は有権者は彼にバッジは与えないだろうと思う。
ところで、ノーベル平和賞受賞者・劉暁波に関して依頼された友人の原稿を読んでいて、非常に興味深く感じた一文がある。それは「劉暁波の最終意見陳述」に対する陳礼銘の論評である。
劉暁波は「私には敵がいない」と“非暴力主義”を主張しているのだが、それに対して友人の陳礼銘は、「平和主義は暴政に反抗する唯一の手段ではない」「暴政の圧倒的多数は暴力によって倒されている」とし「およそ反動的なものは人に打たれなければ倒れようとはしない。これは地面を掃くのと同じであり、竹箒が地面に触れなければホコリは自分の方から飛び散ってはいかず、そのまま残る」と論評しているのである。そして彼は「その意味で敬慕に値するダライ・ラマの戦術は功を奏さないだろう」「たとえダライ・ラマが、ガンジー路線を採用せずにアラファト路線を受け入れたにしても、必ずしもチベットの現状が今と大きく違っていたとは限らない」とし、さらに「人民に敵対する者が人民の共通の敵」であるとする。とりわけ『子曰く、苛政は虎より猛なり』を引き、「暴政は確かに虎によく似ている。それは、刺激すれば凶暴になるが、刺激しなくても狂暴であることに変わりはなく、結局人を食おうとするものである。虎を打ち殺すか、虎に食われるか、二つに一つなのである」というくだりは日本政府要人に聞かせたい。そして「もしかすると、中共の暴政は虎というほどのものではなく、性癖の悪い猫にすぎず、飼い馴らせばその性癖を直すことができると思っている人がいるかも知れない。それは個人が判断するべき問題だが、試したいというならそれもよかろう。だが、その判断を暴政に反抗するすべての行為の規範とする権利は何人にもない」と続く。
この劉暁波の最終陳述に対する陳礼銘の論評は、現在の日本に重ね合わせて深く考えさせられる。
いま、米中間では[覇権]争いが始まっている。したたかな米国が中国を“性癖の悪い猫にすぎず、飼い馴らせばその性癖を直すことができる”と思っているとは思えないが、中国には「同じ山に2頭のトラは住めない」という格言があることを忘れないでほしいと思う。
トラの戦いをわき目に、野良猫の戦いも始まっていて、北朝鮮情勢は全く予断を許さない。
すでに武力以外の手段を含んだ「世界最終戦争」がわが国周辺で始まっているのだが、戦後60年間飼いならされて闘争心を失ってしまった「ペット猫」日本は、ドライフードがなければ生きていけないだろうし、どちらに転んでもトラか野良猫に食いちぎられるだけだろう。
1月17日、兵庫県内各地では「阪神淡路大震災」を追悼する行事が行われたが、「戦没者追悼」は全国民共通の願いである。
本来は「武道館」ではなく、靖国神社で行われるべきものである8月15日の「大東亜戦争戦没者慰霊式典」だが、首相はじめ閣僚は一切隣接する靖国に参拝しようとしない。
それもそうだろう。皇室を軽視する発言をした大臣や、歌会始の儀で居眠りしていた下品な大臣が集まる政党では…
戦後のけじめが全くついていないことを硫黄島に行った菅首相は実体験したらしいから、今年の8月15日には、閣僚抜きの想定外の「ハプニング」でいいから靖国で英霊の前にひれ伏したらどうだろう。
もちろん「日本国首相」としての参拝であり、菅政権が続いて入ればの話だが…
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