軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

蛙の子はやはり蛙か…

今朝の産経一面に、自分らの政権批判を封じた悪名高い「防衛次官通達」を主導したのは、安住淳防衛副大臣(当時)だという記事が出た。“犯人”についての情報は入手していたが、やはり「蛙の子は蛙か」と慨嘆した。
お断りしておくが「親蛙」のことを言っているのではない。「子蛙」の生い立ちに影響を与えたであろう『環境』を言っているのである。


公開されている彼、安住淳氏の経歴を見ると、
≪1962年1月、宮城県牡鹿郡牡鹿町(現石巻市)生まれ。父・安住重彦は元牡鹿町長。宮城県石巻高等学校、早稲田大学社会科学部卒業。在学中は早稲田大学雄弁会に所属。卒業後、日本放送協会NHK)に入局し、政治部記者となる。
…1993年退職し、同年7月18日の第40回衆議院議員総選挙に無所属(日本新党新党さきがけ推薦)で旧宮城2区から立候補した。政治改革を争点としたこの選挙で、旧宮城2区は候補者が乱立し、落選。その後、日本社会党出身で郵政大臣などを務めた日野市朗との間で候補者調整、選挙協力を実現した。
1996年10月20日第41回衆議院議員総選挙では、民主党公認で立候補し、初当選した。当初は、日野との間に小選挙区比例区に交代で立候補する予定であったが、以後、小選挙区は安住、比例区は日野という棲み分けができた。民主党では、党副幹事長、常任幹事、宮城県連代表を務めた≫
とあるから、政治家としての出発点である「旧社会党」の影響を「親蛙」に例えたのである。


平成6(1994)年3月23日付で、松島基地司令に着任した私は、8月7日の牡鹿町クジラ祭りに招待され、当時牡鹿町長だった彼の実父・安住重彦氏と面談した。
沿岸捕鯨で成り立ってきたこの街は、世界的なクジラ保護運動の渦中にあって、厳しいかじ取りを迫られていて、クジラの骨の在庫もなくなり、骨で作る工芸品もままならず、伝統的産業が衰退してどんどん町民が出ていき、当時すでに人口6700人を切る状況だと嘆いていた。
同じ『町』でも基地がある「矢本町(当時)」は3万人を超しなお増加傾向にあり、その落差に驚いたものであった。安住町長もIWC(国際捕鯨委員会)に出席して実情を訴えてくると真剣だった。

それほど町は困窮していて、それを何とか打開しようとする安住町長の姿に感動したものであった。

牡鹿町の伝統行事=クジラ祭り≫

その後、「息子が国会議員に出たいというが、それには国家安全保障と防衛問題が最重要だから、ぜひご指導を受けたい」といわれ、二人で基地を訪問されたことがある。


私は外務省時代の体験を踏まえて国際情勢の基礎的事項についてその概略をお話ししたが、熱心に反応したのは父親の方であった。やむを得まい。当時息子の淳氏は若干32歳、自衛隊でいえば1等空尉、整備小隊長程度だったのだから。


彼の経歴が示しているように、その後紆余曲折を経て念願の国会議員となった彼を航空祭の祝宴会場で見かけたことがある。もちろん私は一OBにすぎなかったが、議員バッジをつけているものの、私の部屋で防衛講義を聞いていた当時と少しも変わらぬ≪軽さ≫が目立った。


それがどうだろう。あれから16年たって彼は防衛副大臣となり、入間基地航空祭で民間団体「航友会」会長が「一刻も早く菅政権をぶっ潰しましょう」と政権批判したのに対し、「何でもいいから制裁措置を考えろ」と対応策を指示、相方の広田一政務官が「やりすぎだ」と再考を促したのに「耳を貸さ」ず、今回の「事務次官通達」を発出して自衛隊、および自衛隊OBたちに対して圧力をかけた張本人だという。
そして広田氏の懸念通り「思想信条の自由を認めた憲法の精神に反する」と激しい反発が起き、撤回を検討したものの、この際も「撤回しても効力はものすごい」などと語ったそうだがこれは「一度通達を出せば自衛隊内で強く印象付けられ、民間人の政権批判を控えさせる『自主規制』が働くと踏んだからとされる」という。
元NHK政治部記者らしい発想だが、次回の選挙ではおそらく選挙民からバッジを取り上げられるに違いない。父上がご存命かどうか知らないが、たとえ人口6700を切る小さな町の町長だったとはいえ、町民の生活と、地方の活性化に心血を注いだ父・安住重彦元牡鹿町長の意思を再度学んでほしいと思う。

32歳当時、私はまだまだ国を代表するほど成長していない、と見たのだったが、今やすでに49歳、この間何を学んできたのか知らないが、安全保障問題を担当するのはまだ早い。
せめて捕鯨問題解決に精進して、父親が果たせなかった夢を実現し、寝食を忘れて町民の安寧確保に苦慮した父親譲りの「蛙の子」になってほしいものである。

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