昨日は午後、尖閣や東アジア情勢について取材を受けてきたが、話し出すと止まらなくなるほど危険性を帯びていることを自覚する。
2012年危機は確実に迫っているのだが、永田町はわかっていない。
それはさておき、エジプトの“反乱”をCNNやBBCで見ていて中東危機を案じていたのだが、ムバラク大統領の強固な意思をデモ隊は崩せなかったようだ。
いくら人数を集めても≪統制≫が取れていない「デモ隊」はまさに烏合の衆、アリババと40人の盗賊そのままだったから、いずれ収束すると思っていた。
しかし、賢明にも大統領は「天安門広場事件」の時のトウ小平のように「強行排除」手段には出なかった。ただ、大統領は秋の選挙には出馬しないと約束したから、今後の政権争いが予断を許さないのは確かである。イスラエルも束の間の小康状態が保てたが、周辺諸国も今後の運営に苦慮するだろう。
あえて『クーデター』という語を使うが、その成功条件には、中核となる組織と意志強固な指導者=後継者を選出しておくことと、迅速な行動計画と行動計画の秘密が守られることが重要である。
今回のエジプト騒乱は大衆デモだったが、その裏にイスラム過激派勢力の影があったことが、一般大衆に危機感と嫌悪感を抱かせたのではないか?と思う。TVで世界に貧困とムバラクの暴挙を訴える“デモ隊”の大半が、服装からしてそうだと分かったから、やがてデモ隊の行動は孤立し始め形勢は逆転した。
軽率(失礼)だったのは、オバマ大統領とクリントン長官だろう。建国日が浅い米国らしくいつものように「民主主義」しか唱えない。長大な歴史を持つエジプトに≪米国製民主主義≫はなじむまい。
これが中東危機を肌で感じているものとそうでないものとの違いだったというべきか。
今後の米国とエジプト外交、中近東に対する影響力がどうなるか、それとも民主党は選挙で交代するか?、米国民が現政権をどう判断するか興味深い。
拳銃に頼るカウボーイのような若い米国は、ヴェトナムでも1920年代の中国大陸でも「自分の生活様式」を相手に強要して失敗してきたのに、まだわかっていないのか!と悲しく思っていたのだが、さすがにデモが硬直状態になると、米国内でも「反省の弁」がきかれるようになって来た。
おそらくムバラク大統領は、中東全体の安定を図るため、貧富の差の解消を図って国民の不満解消を図りつつ、より安定した中東地図を描こうとしているに違いない。
したたかで我慢強かったというべきだが、浮き足立たなかったのは自分のスタッフを掌握していたからであろう。イラクのサダムとの違いはそこにあった様に思う。
エジプトの市民のように「貧困による不公平解消」を求めることも大事だが、今中東の“盟主たる”エジプトに求められているものは何か、に気が付くことが大切だろう。
今「第○次中東戦争」が勃発すれば、貧困解消どころではあるまいから。
北京政府が、人民がエジプトの「エ」を打ち込んだだけでこのニュースが途絶するほど情報遮断に気を使っていたのも自国への飛び火を警戒したからだが、まだまだ気は抜けまい。
ところで、わが国がこの種『クーデター』による政治改革を寄せ付けないために、今回のエジプト騒乱から学ぶとすれば、
1、国民の多くが政治的自覚を持ち、権利を主張する反面、同等の義務を自主的に履行する態度をとり、選挙に臨んでは、金力やデマゴーグに惑わされることなく代表を選ぶこと。
2、議会においては、形式的多数決による横暴が行われることなく、政治と政治家が議会政治の健全な運営に責任をもって当ること。
という条件がそろわないといけない、と小島玄之氏は「クーデターの必然性と可能性」の中で言っている。小島玄之氏は戦後社会運動家だったが、その後「唯物史観による科学的社会主義理論の矛盾的実態を自覚」して民族再生論を説いている。
政権を握っている安保世代のゲバ学生たちに欠けているのがこの手の理論武装なのだが、いまさらそれを期待しても始まらない。時間は切羽詰まっている。
さて、アジアの経済大国から2流国へ没落し、周辺の軍事的緊張の高まりに対処できない政治3流国のわが国が今最優先されることは何か?政府もメディアも、整理してみべきである。
子ども手当や大相撲の八百長解消問題どころではあるまい。
わが国でも政治改革ののろしはすでに名古屋から上がっている。その根底には「旧態依然とした八百長政治」に国民が飽き飽きしているからである。国会議員たちがその実態をつかめず、判断力もない状況では、第2の名古屋市議会議員になることは必然だろう。尤も歳費が削減になった名古屋市会議員の方が少しは進んでいるようだが…
残念ながら「ムバラク並みの」強力な指導者を欠く野党連合にも、今回のデモ隊のように“戦術”はないと思われる。わが国における「クーデター(それとも改革?)」の前途は暗いというべきか。
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