外国人から献金を受けていた前原外務大臣が辞職した。彼の近隣諸国との“外交”には奇妙な影が付きまとっていたが、国民はこれで一部納得したことだろう。高々20万円…などと筋の通らぬ擁護論もあるが、この国の民度が異常に低下している証左だし、もっとひどい方々もいるのじゃないか?と疑いたくなる。
また、場所柄“仕分けの女王”蓮舫大臣と元防衛費削減主計官との“女の争い”には辟易する。政治の話題が、新聞一面からスポーツ紙やタブロイド判の一面に移動しているのも頷ける。政治の劣化はとどまるところを知らないようだ。
その昔、「ノーパンしゃぶしゃぶ」で一世を風靡した官僚たちがいたが、何でこんな「高学歴無教養」な大人たちがが増えたのか?について、今朝の産経「正論」欄に平川祐弘・東大名誉教授が的確に分析している。
先日起きた京大入試における「カンニング事件」が主題だが、戦後「占領軍とそれに迎合した国内勢力によって潰された第一高等学校」のエリート教育を、敗戦後の日本は意図的に排除し、「ノブリス・オブリージュ」精神そのものが高級官僚からも消えた。つまり「旧制一高には、選ばれた少数者はその責任を負うという気概」と品位があり、カンニングはあり得ないという雰囲気が漂っていた。もしあれば学生自治会がカンニングと認定し、学校当局に報告して自動的に処分された。
そんな誇るべき一高の学生自治があったが、現在の指導者層にみられなくなったのは、政治化した新制東大の学生自治が影響しているというのである。
そして平川教授は≪「戦後民主主義世代」といえば聞こえはいい。だが、そんな団塊世代の闘士や卒業生たちの中から私利や不正を働く者や、保身がすべてに優先する政治家、官僚が前よりも多く輩出したのは、当然のことではあるまいか≫と結ぶ。
昭和34年、防大入校式で槇智雄校長は、制服は防大生としての「威信と誇り」を表すものであり、個人としての力量の一つに「知性」があり「率先垂範の資質」「信頼」がある。さらに将来幹部自衛官として自衛隊という組織に属する以上、ここでの団体生活には「一つとなって通う目標を追い、共通の生気に溢れるもの」がなければならず、その生気を生むのは団体生活の運営が主として「学生自身の手で行われる」からである、と説いた。
我々の頃は薄っぺらな「学生心得」に生活の規範が簡潔に書かれていたが、その精神は「廉恥・真勇・礼節」であり、常々「心に遅れをとっていないか、腕に力は抜けていないか」と反省することにあった。
そして守るべきものは「国民とともに民族の自由と独立」であり、求められるものは「自由国家の防衛意欲」であるとされ、
「よきにつけ悪しきにつけて我々は日本人である。日本人の勤勉さは世界に定評がある。その文化においても、独特の香り高いものを持っている。芸術、文学、その他もろもろの学問においても、百花繚乱の観を呈している。またその将来性と可能性を持っている。これらのものは、皆大事に育ててゆかねばならない。これがなくなったら、心の故郷は荒涼たる見るかげもないものとなり終わるであろう。歴史、伝統、文化は国民の心であり、精神であり、宝である。わが先祖がつくり、時代から時代へ伝えられ、継がれて来た祖先の心であり、現代に生きるものの心であり、また、将来の者の心でもある」
「最善の抵抗を尽くして守らねばならぬのは、国民のこの心の鏡土である」
「それは国を思う心であり、抵抗の意欲である。防衛の意欲に表れる愛国心である。無抵抗であってはならない」と説かれた。
あれから半世紀たった今でも、この教えが私の心の支えになっているのだが、さて、東大のように「政治的自治会」を持たない防大のはずだが、半世紀以上過ぎた今の防大での教育はどうなっているのだろうか?
官僚も“軍人”も、ノブリス・オブリージュ=高貴さは義務を強制することを見失ってはならないだろう。
今の政財教育界の乱れは、人相を見ただけでも高貴さを失った奇妙な“成人たち”の群れによって、破壊されつつある様な危険性を感じるのだが…
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