震災の被害状況は予想以上に甚大だったことが判明しつつある。
志津川では1万人と連絡が取れないという。総人口の半分以上である。自然の力のすさまじさを見せつけられ、人間の非力を痛感するが、何とか生存していてほしいと思う。
福島原発の事故は、地震発生以来24時間たってもモタモタしていて、何かがある!と感じていたが、官房長官や菅首相の表情を見ると、公表できない何かがあるように思えてきて、昨日フジTVの安藤キャスターが言っていた通り、国民は疑心暗鬼になっている。これを避けるのが政府の重要な役目であり記者会見なのに、この二人は基本が全く分かっていない。「しっかりと…」「まさに」など会見発表に修飾語が多すぎて内容が乏しすぎる上、「国民の皆様に協力をお願いする」ようじゃ情けないとしか言いようがない。
処置が遅れたのは、きのう書いたように、事故処理で一番重要な時期である12日午前6時14分、菅首相が班目原子力安全委員会委員長とともに、陸自ヘリで福島原発に視察に向かったことだろう。
現場到着は7時11分、23分から47分まで東電副社長らによる説明を受け8時4分に現場を発って以後、宮城県沿岸部の被災地を上空から視察し、50分に執務室に帰着、11時36分から緊急災害対策本部などの会議に参加したことになっているが、初動時の緊要な時期の「失われた4時間半」は、ミッドウェー海戦の「兵装転換の5分間」に匹敵する。この硬直した決断が空母4隻を失う重大な転換となったことを忘れている。
首相の今回の行動は、現場活動の大きな障害になり、その後の“上空視察飛行”など、ヘリで移動中の指揮系統はどう維持されたのか?政府専用機並みに官邸と直接ラインがつながっていたのか?陸自霞目部隊のヘリにそんな通信装置があるとは思えない。首相は「現地で責任者ときっちりと話をして、状況を把握したい。必要な判断は場合によっては現地で行うことになるかもしれない」と語り、枝野氏も「陣頭指揮をとらねばならないという強い思いが首相にあった」というが、陣頭指揮の意味さえ理解していないようだ。
産経によれば「現場はすでに放射性物質の一部放出をしなければならない事態に陥っていた。そこに首相の視察があり、その対応に追われた」と書いている。
菅首相には「選挙を意識した人気取り意識」はあっても、陣頭指揮するだけの実力はあるまい。今は緊急事態だという意識が欠落している事が恐ろしい。
もちろん、福島原発は東電という民間企業であり、それに原子力使用という特殊性から、原子力安全委員会など国の機関、それに現地福島県が複雑に絡んでいるから、指揮系統が複雑で、軍事的観点から見てとても考えられない「遅疑逡巡」が垣間見えた。
「兵は拙速を尊ぶ」という意味さえ彼には理解できないだろうが、強いリーダーシップを発揮する人物が中央に欠けている。
誰も責任はとりたくない…という逃げの姿勢が丸見えで、情報伝達が後手後手に回り、周辺住民はそれに振り回され、とうとう被爆者さえ出てしまった。
統率力のなさは言わずと知れたものだが、素人が口出しして、いたずらに時間だけが過ぎていき、現場での被害が増えるだけ、この責任は万死に値するだろう。
見ているがいい。今回の津波被害、放射線被害は「誰も予想だに出来なかったマグニチュード8・8という巨大地震のせい」だと首相はじめ政府関係者達は責任を回避し、「僕ちゃんたちのせいじゃない」と言い逃れるから。
15年前まで指揮所で幕僚たちの報告を受けつつ迅速な決断を下す生活を続けてきたせいか、TVを見ていてイライラが募るが、メディアのTV情報、特に上空からの画像は貴重なものであり、これらを総合しただけでおおむね実態が把握できる。それが彼らにできないのは、ゲバ闘争に明け暮れただけで体験も自信もないからだろう。
常に最悪の事態、戦闘を意識して行動する「暴力装置」である自衛隊こそこんな事態では実力を発揮するのだから、シビリアンコントロールではなく「ミリタリーコントロール」で対処すべきなのだ。
あれほど予算と人員を削減しておきながら、有事になると2万人〜5万人〜8万人と、まるで打ち出の小槌のように隊員を酷使する。
もちろん、300人行方不明説がある松島基地初め、全国の自衛隊員たちは、同胞を救うため懸命に行動するだろう。しかし、その後再び自衛隊を縮小するような政策をとれば我々OBは断じて許さない。今の政府は、ハイチで未だに復興活動している陸自隊員がいることを覚えているのか!腹立たしいこと限りない。
「菅じゃ頼りない。被害が増えるだけだ。今は緊急事態であるから、特別措置で実行力ある石原都知事に首相代行をしてもらい、救助、復旧活動の指揮にあたってもらうべきだ!」と私が言うと、家内が「次に関東大震災が起きた時のために、石原さんには都知事でいてほしい」といった。
旧軍、特に海軍では、硬直した年功序列人事が仇となって、勝てる戦闘を失った。ミッドウェーの南雲司令官は、航空の専門家ではなかったから、決断が遅れて壊滅し、その後気の毒にもサイパン島で「陸戦隊」指揮官として散華されたが、適材適所であるべきだった。米軍は適時に指揮官を更迭する。
非常時には最高指揮官たるわが総理大臣を更迭する制度があってしかるべきではなかろうか?
今日は好天、沖縄県民の一部が忌み嫌う米軍も全力挙げて協力してくれている。制服同士の普段からの日米協力訓練の成果が発揮できるだろう。
これ以上犠牲者が増えないよう、何とか後輩たちには懸命に努力して欲しいと祈っている。
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