外出を控え、書斎整理と被災地友人たちの安否を気遣う毎日だが、書斎整理中に防大時代の日誌が出てきた。
日焼けして茶色になったノートには、それ以上にボロボロになった操縦教育中の課題論文「操縦学生としての在り方」「航空自衛隊の中核たる操縦幹部に最も必要と思われる精神要素および各人の考え」などというざら紙に書かれた記録が挟まっていた。半世紀前の記録に感無量だったが、防大4年生時代に次のような話を記している。
≪先日こういうお話を聞いた。「戦争というものはその人間の姿をはっきりと出してしまうものだ。普段大威張りで部下の前でわめきたてて大きなことを言い、酒を飲んでは乱れる。外見は勇敢そうで強そうだが一度砲門を開くと、艦内に閉じこもりガタガタ震えている。平常心を失っている。
反面、こんな人間がいたのかと思う位おとなしく目立たぬ人間が弾丸の降り注ぐ中に飛び出して奮戦する。
やがて海戦も終わりあたりが静かになってくるとその人間は壮烈な戦死を遂げ、また物陰からいかにも自分一人で奮戦したかのような顔をして件の男が出てくる。
人間とはそんなものだよ」
これは歴戦の元提督の述懐である。なんだか身につまされるような気がする≫
今朝の産経2面にこんな記事が出ている。
福島原発に出動して放水準備中の東京消防庁隊員に対して、「いう通りやらないと処分する」と政府側の人物が言ったというのである。石原都知事が首相に陳謝させたそうだが「処分」と発言したのは海江田万里経済産業相(先日のブログ参照)だという。
21日に福島から集団避難している「さいたまアリーナ」を視察した岡田幹事長も周囲に「アリーナには人もモノもあり〜な」と冗談を飛ばしたという。民主党の正体が表れたといえる。
他方、いつもは強面の石原都知事が「この荒んだ日本で、人間の連帯はありがたい。日本人はまだまだ捨てたものじゃないということを示してくれた」と“泣いた”。参加した隊員は「上からものをいうだけの官邸と違って、(都知事は)われわれのことを理解してくれている」と話したという。
≪産経新聞から≫
航空自衛隊入間基地で民主党政府を批判した「航友会会長」を非難し、自分の車を呼ぼうとした民主党議員に「ルールを守るよう」指摘した隊員に「俺を誰だと思っているのか」と胸ぐらをつかんだ木端議員がいたし、出身地の牡鹿町に自衛隊を増加支援させようとした前防衛政務官もいた。いやはや、公私混同はなはだしい方々が多すぎる。今回は「大臣様」、いったい国民を何と心得ているのか?
「主権在民」の真意も理解できていない傲慢さである。
そんなことしている暇があったら、ホウレンソウなどを出荷制限した責任をとって、官邸、民主党本部で買い上げて“試食”し、いつものように「安心です」というパフォーマンスをしたらどうだ。TV出演を好む方々ばかりじゃないか!
私は故郷の野菜を意識的に食するつもりでいる。
狂牛病でも口蹄疫でも、カイワレ大根の時も大臣方みんな揃ってTVの前で気炎を上げたではないか!今回も風評被害の責任をしっかり取った方がよかろう。
野菜農家の苦労を知るがよい。種まき、苗選定、植栽、育成、そして収穫と、人生のほとんどがその繰り返しである。長年かかって育てた“成果”を、廃棄処分する農民の無念を察することができないものは指導者として失格である。
百里基地で飛行隊長時代、私が飛行三千時間を達成したと知ったお百姓さんがこう言った。
「隊長さんは大したもんだ!三千時間も飛ばれたか。それに比べりゃわしなんかまだ三十回しか米を作っていない…」
現役時代後半、三沢の米軍将校一家と会食した際「ジェネラル・アマチュアゴルファーたちには、有事には交代してもらう事になっている。そうしないと我々同盟国の青年たちの犠牲が大きくなるからである」と言ったことを思い出す。
現地で文字通り黙々と困難に立ち向かっている勇士たちに感謝したい。
自衛官、警察官、消防士、消防団員、役場職員、何よりも医師、看護婦の活躍には頭が下がる。
有事に人間性が現れる。被災した多くの国民以上に人間性が荒んでいる政府要員には、的確な指揮が取れるはずはない。
一段落したら、我々有権者がやるべきことは、元提督の述懐にあった≪普段大威張りで部下の前でわめきたてて大きなことを言い、酒を飲んでは乱れる。外見は勇敢そうで強そうだが一度砲門を開くと、艦内に閉じこもりガタガタ震えている。平常心を失っている≫お偉方を一掃することだろう。
震災後早や10日を過ぎた。そろそろ動転していた気が落ち着き、周囲が見えるようになってくる時である。肉体と同時に精神的ケアが必要になる時期、メディアもその点を十分配慮した報道を心がけてほしいと思う。
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