軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

“恥辱”から“誇り”へ!

17日に石巻を訪れて被災者を激励した歌手の長淵剛氏が、松島基地を訪れて1500人の隊員たちの前で魂のこもった歌を熱唱したという。
私はテレ朝の番組を見損なったが、家内が見て感激、「君たちは大事な大事な僕の誇りだ!」と言ったという。各方面からも同様のメールが届いたが、ユーチューブで見て、彼の歌声やギターの音が被災者や若い隊員達の心を揺り動かしていくのに感動した。ギター一本であれだけ多くの人々を感動させることができるのは素晴らしい事だと思う。
彼は鹿児島出身で警察官の息子だそうだが、感激した仲間が「長い間不当に日陰者の立場に追いやられていた自衛隊がやっと大手を振って世間を歩けるようになって来た証左ではないでしょうか」と言った。
私は「我々は差別されても、決して差別してはならない」と現役時代に指導してきた甲斐があったと思い嬉しかった。
善いことをしても報じられない代わりに、ミスをすると針小棒大に報じられ叩かれてきたから、自衛隊は叩かれ強い組織になっていた。
しかし、今回は若い隊員たちにとっては大きな励みになったであろう。長淵氏に心からお礼申し上げたい。


≪元気をもらった隊員たち=インターネットから≫

コメントに芸能人の自衛隊慰問は初めてでは?とあったから付け加えると、報じられてはいないが、かなりの方々が慰問して下さっている。
私が三沢基地司令だった時に、歌手の島倉千代子さんが来訪され急ごしらえの体育館で公演されたが、町の方々と共に大いに盛り上がった事がある。
平成6年8月に、青森で講演した彼女から電話があったので、「今は三沢ではなく松島基地にいるから帰京の途中で下車して松島の隊員を激励してほしい」と冗談で言ったところ、本当に途中下車して松島基地に立ち寄って下さった。


早速「お千代さん来る!」と町の方々に連絡させたが町長さんも商工会長さんも信じなかった。石巻宮城県第2の都市だが超有名人は仙台以外には来ないと定説になっていたようで、ましてや小さな矢本町、来るはずがないというのである。その後町民から「町民も基地に入れるか?」という問い合わせが殺到した。
当日は猛暑で、冷房施設がないので消防小隊が体育館の屋根に放水したり、商工会長さんが大きな氷柱を舞台に数個自腹で置いてくれたり・・・。
そんな急ごしらえの体育館では、隊員よりも町民の方々の方が彼女の歌を堪能した。


≪平成6年8月2日、お千代さんの基地慰問公演≫



私が防大に入校したのは昭和34(1959)年だが、一年前の1958年6月25日の毎日新聞夕刊コラムに「女優と防衛大生」という題で、ノーベル賞作家・大江健三郎が女優・有馬稲子と対談し、「ここで十分に政治的な立場を意識してこれをいうのだが、ぼくは、防衛大学生をぼくらの世代の若い日本人の弱み、一つの恥辱だと思っている。そして、ぼくは、防衛大学の志願者がすっかりなくなる方向へ働きかけたいと考えている」と発言した事があった。
入校した私は大江健三郎に言わせると同世代の日本青年の「恥辱」として人格を否定されたのであった。

ある先輩は「1958年6月の暑い日、私は防大の4年生で、有馬稲子が白いスーツを着て取材に来たのを覚えている。近くに寄って見たが、それなりの美人であった。興ざめしたのは、その月の25日の大江との対談で、大江の意見に同調し、防大を貶す発言を繰り返したことで、何故か官憲を忌み嫌っているようであった。インターネット情報によれば、彼女の父親は共産主義者ということなので、軍や警察を嫌悪していたのかも知れない」と当時を思い出して書き、こう付け加えている。
防大卒業式に来た吉田首相は『諸君は自衛隊在職中、決して国民から感謝されることも歓迎されることもなく自衛隊を去ることになるかもしれない。あるいは非難と誹謗ばかりの一生かもしれない。御苦労なことだと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されての国家存亡のときや災害派遣のときなど、国民が困窮し国家が混乱に直面するときだけである。言葉を換えれば、君たちが日陰者であるときの方が国民や日本が幸せなのだ。耐えてもらいたい。自衛隊の将来は君たちの双肩に懸かっている。しっかり頼む』と訓示された。あの頃から半世紀、それにつけても警察予備隊当時から自衛隊は、事に当って良く耐えて来たと思う。この度の大震災でその活躍が正当に報道される度に、わが国の防衛に携わって来た人々の努力が、報いられ評価されたものと慶んでいる」


広報室長時代にある新聞記者から、「彼は防大を受験したが失敗、その恨み言を言ったまでさ」と聞いた。私が喧嘩を売られた某記者もそうだ、というから調べてみたが、防大学生課に記録はなかった。
真偽5分5分の情報だと認識していたが、その後1次試験に落ちた者の記録は防大学生課に保管されていないと聞いて、真偽の程は7分3分になった…
そうだろう、当時は東京工大を基準とした理工科系のカリキュラム、ノーベル文学賞向きの文科系の頭では無理だったろうと思う。


その後予算の時期になると、こんな写真入りの記事が出て、防衛費を抑えようとする報道が定着した。お千代さんは当時としては珍しい存在だったのかもしれない。

≪戦闘機より教育に=小百合さん蔵相に苦言:毎日新聞から≫

現役時代、私はよく部下に≪宿題≫を出した。次はその一例だが、国のために死ねる、という部下が多いのに驚いた。今でも彼らのその気持ちは変わらないであろう。

原発事故を知った閣僚が、直ちに家族を国外に避難させたようだが、自衛官たちの愛国心は本物である。
そんな閣僚たちの3月11日以降分の歳費は、黙々と現場で危険を顧みず働く自衛官や警察官、消防関係者に全額寄付されるべきであろう。
吉田茂は「言葉を換えれば、君たちが日陰者であるときの方が国民や日本が幸せなのだ。耐えてもらいたい。自衛隊の将来は君たちの双肩に懸かっている。しっかり頼む」と言った。
しかし自衛官と言えども人の子、正当に評価されないことに耐えられるほどの聖人君子ではない。
されど我々は国民から「強大な武器」を預かっている存在である。
そのことを忘れず、任務達成にまい進して欲しいと思っている。


≪宿題の回答の一例≫

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