軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

危機管理を教えない大学の実態

書斎整理中に2002年10月に行われた「安全保障・危機管理科目の大学アンケート調査」資料が出てきた。いかにこの国が「危機管理」に疎いか証明しているように思うから掲載しておこう。


「安全保障論」を設置していない大学は88%、「危機管理論」未設置大学は89%である。

それらの科目を教える教員については、「教員がいない」が11%だが、「無回答」が89%、それらを将来学科として設置するか否かについては、「予定がある」は2%、「未定」が3%、「予定がない」は90%であった。

調査対象は国公私立大学約1200校中300校で回答した大学は108校であった。いかに「安保・危機管理」に無関心であるかがわかるであろう。

一事が万事とは言わないまでも、これが戦後日本の背骨を形成してきた官僚や、政治家、勤め人育成の実態だったのだから、戦争はもとより、地震・雷・火事、大津波など≪想定外≫だったとしてもうなづける。いや、失礼、想定していた方々は確かにいたが、彼らの意見が反映されなくても当然だったのじゃないか?と言い換えよう。

結局戦後日本の実態は、「歌を忘れたカナリア」ならぬ「戦いを忘れた素浪人?」の集まりだったと言えそうである。


昨日から産経7面の「話の肖像画」欄に、史上最大の作戦を指揮した「統合任務部隊指揮官・君塚栄治陸将」の談話が連載されている。
彼は「最初に心に誓ったことは大きく2つ。統合指揮官として1つ付け加えると3つ。
一つ目は最終バッターだという気持ち。最後の砦、我々の後はないという気持ちは強かった。次にここにいるのは運命だと思った。私が30数年間培ってきたノウハウ、キャリアをこの場にいることを運命と思ってすべてを使い果たす。被災者のために尽くそうと」
「(指揮官としては)初の統合部隊で、しかも米軍も2万人来ますから、そこをどう束ねていくか、調整していくかという任務の重さを知った時、マニュアルのない、誰もやったことがない世界です。私の前には獣道もない、何もない。それでも私の後には道ができる。評価は後世の歴史に委ねる。腹をくくって思い切りやろうと」


特に彼は防大で土木工学を学んだ専門家であり、立派な“戦人”に恵まれたことは、今回の震災対処という点では“幸運だった”とはいえまいか。
あまり報じられていないが、仙台空港を最初に啓開したのは米軍だが、「メーン滑走路の車などを1日でどけてきれいにしたのは国土交通省が契約した日本の業者なんです。日本の国は大したもんですよ」とも語っている。


昭和20年8月15日を迎えた厚木基地は、小園大佐の部隊が徹底抗戦を叫んで抵抗していた。終戦後進駐してくるマッカーサー厚木基地に迎え入れるよう指定されたわが国は何とか滑走路を啓開しなければならない。
海軍が小園大佐を収容した後、2日でそれを成し遂げたのは≪安藤組≫であった。いざという時に現れる救国主、そんな気がする記事である。


今朝の同欄には、危機管理の基本がそれとなく語られている。基地の活動を支える業務隊がどんどん削減されていたにもかかわらず、現場隊員の超人的活躍でしのいだこと。
「ガス・水道・電気が止まってガソリンもないといったときに、駐屯地には作戦用のガソリンや灯油がある。あらゆる省庁がガソリンの提供を受けに仙台や多賀城に来ました」
「(多賀城駐屯地は)津波地震にやられましたが、あそこにある燃料タンクはパイプが大きくずれながら切れなかった。数年前に機転を利かせ、万が一、地震が来てパイプがずれても切れないようにジョイントをフレキシブルにした。だから、かなりの量の燃料が助かった。うちの飛行機がずっと飛び続け、車も全部動き回れ、ガソリンも皆さんに提供できた。基地を維持する人、機能が重要だということです。平素、無駄な部分があるからとどんどん減らしていくと、いざという時に自己完結能力がなくなってくる。これは教訓です

≪君塚陸将=産経から≫


危機管理の危の字も知らない方々の『仕分け』なる茶番を心ある国民は由々しい問題だと受け止めていたが、あの時「2番ではどうしていけないのか?」と世にも奇妙な指摘?をした大臣は、スパコンが「世界一」になったと記者団に聞かれても全然気にしてもいなかったように見えた…。無責任極まりない大臣である。


福島原発の冷却用パイプにも、フレキシブルシャフトをつけて万一に備えていればどうだったか、などという気はないが、人間の悪業の最たる戦争に備えることが、平時の危機管理に大きく貢献するということくらい、大学で教えたらどうだろう?

戦争=悪、軍人=虐殺魔、などという“外国宣伝”にいつまでも踊らされている無思考な現状の打破こそ急務なような気がする。それにはマスコミの猛反省が第一だが、さて、それは期待できるのかどうか…

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