軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

F−15墜落:猛訓練に危険はつきもの

5日午前10時半ごろ、航空自衛隊那覇基地・第83航空隊第204飛行隊所属のF15J戦闘機1機が訓練中、那覇の北西約180キロの東シナ海上空で墜落し、F15Jの飛行時間が約1700時間のベテランパイロット・川久保裕二3等空佐(37)が行方不明になっている。

「空自は墜落直前に何らかのトラブルがあったとみて原因究明を急ぐ。領空侵犯の恐れがある外国機への緊急発進(スクランブル)を除きF15Jの訓練も当面見合わせる」そうだが、この周辺海域は、中国のガス田などが点在する緊張した海域であり、もちろん海上には艦艇や漁船なども遊弋している。川久保3佐の生還を祈りたい。


≪沖縄の位置≫


≪中国ガス田上空を飛ぶ海自のP3Cとリグ=中国軍事雑誌から≫


東日本大震災では10万を超える仲間たちが被災地に集結して大々的な活動をした。空自は松島基地が被災し、虎の子の戦闘機など28機が被災、戦闘機操縦教育も困難な中、一瞬たりとも≪領空侵犯≫対処はゆるがせにできない。その上老朽化したF4後継機選びも進展していない。空自は多難な環境下におかれているが、猛訓練に危険はつきもの、この世に≪絶対安全≫なんて存在しないことを肝に銘じて乗り越えてほしい。
レーダー電波しかとらえていない天空の果てで、何が原因なのかは不明だが、貴重な戦士を失うことは国家にとって大きな損失であるが、これは誰かがやらねばならない仕事、空自の使命でもある。


それにしても自衛隊最高指揮官たる菅総理の去就は、身内からも批判が出るなど、全学連時代のゲバ学生以下の闘争に明け暮れている。
原発稼働問題にしても、総理と各大臣との意思疎通は全くないらしく、「再開」、「点検」などなど、でたらめ内閣の醜態をさらしているが、一番困っているのが原発を抱える地方自治体と、電力に危機感を抱いている国家基幹産業だろう。

この末期的現象を遠目に見ていると、なんとなくヒトラー末期に似ているような気がする。
ノルマンジーから米軍主体の連合軍に攻め込まれ、東からは勢いを取り戻したソ連軍がベルリンに迫る。全方向から敵を受けて、ドイツ軍首脳はその対処に追われたが、最高指揮官たるヒトラーの“狂気”が真っ当な軍事作戦を妨害する。

そしてベルリンは陥落した…。


今朝の産経一面の「くにのあとさき」欄に、湯浅記者が良いことを書いているが、「菅君は帰ることはなかろう」と思う。「ペンは剣より強い」そうだが「権力欲より弱そう」だから…


しかし、これが「軍事的有事」状況下にあるときだったら、今頃我が国はどこかに占領されて、東京湾で降伏調印式の準備をしていることだろう。
ミズーリ号艦上で、マッカーサーの周辺に立っていた中華民国ソ連などの首席代表同様、案外菅総理も占領軍側に立っていたりして…

≪朝日クロニクル:週刊20世紀から≫


大半のメディアは、政権交代後も希望的観測で記事を書いてきたが、それは≪腐ってもイワシ≫だった自民党政権にかろうじて残っていた若干の“人間性”を下敷きに物事を見てきたからである。
軍事シミュレーションで、敵の出方を自分に都合よく判断したら、それは致命的な結果をもたらす。
わが国のメディアは、小沢・鳩山・菅という、なんとなく保守系みたいな感じで並んだ民主党の“顔”に騙されてこの党の本質を見てこなかったのである。つまり、命がけの情勢分析なんぞ、全くしてこなかった。
むしろある意味、政界なんぞ、我々の手でどうにでもなる!と“第4の権力”らしい奇妙な自負心が作用していたのかもしれなかった。TV朝日で起きた椿問題を思い出すがよい。

その“なんとなく保守系?”の小沢・鳩山は自沈し、最後に天下をとった菅直人氏が「たとえ支持率が1%になっても辞任しない」と語った時、その本性を現したのだが、だれも信じなかった…いや、信じたくなかったのである。

遅くはないから、彼が今どこの誰と一番コンタクトしているか調べてみるがよい。週刊誌は「ご夫人」だそうだがそんなことはあるまい。世界に渦巻く謀略、諜報活動から目をそらしてきたわが政界、マスコミ界の弱点も噴出している。

IMF専務理事でさえ「美人局」で自滅…、しかし、彼の退任で理事に選出されるべき候補に日本人ではなく、中国人が出ているという。事実は小説より奇なることを忘れてはなるまい。このような軍事音痴的行動は、国際情勢を「日本だけに通用する曲尺鯨尺」で測ってきたツケだともいえる。

現行憲法上、“民主的手法”で首相が交代できる方式は辞任、解散、そして「不信任」だろうが、おそらく無駄だろう。ではほかに何かあるか?
ご自身が病気入院される以外にないが、安倍元首相のような行動は期待する方が無理というもの。しかしまあ、一老兵にとってそんなことはどうでもいい。


ただ一つ言えることは、前述したように、これが大震災ではなく、わが国が軍事攻撃を受けている状態、つまり防衛出動状態下であったとすれば、間違いなく戦場は大混乱、間違いなく敗戦に突き進んでいることだろう。
そこで災害派遣で大健闘した後輩諸君に言っておきたい。
体力気力を充実させて、来年に迫っているアジアの混乱に備えてほしい。
そして空自は、仲間の屍を乗り越えて、再び整斉と南西方面の危機に対処してほしいと思う。

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