今朝の産経一面トップに、日米関係を揺るがしかねない記事が出た。「米大統領専用機の飛行計画」が、50代の“ノー天気な管制官”の手で個人のブログに掲載されていたというのである。
戦後“玉抜き”された一部日本人は、「それがどうしたの?」程度にしか思わないだろうが、これは1年前に尖閣で体当たりしてきた中国船に関するVTRを流出させた事件とは格段に違う、国家安全保障上の重大問題である。
産経は2面にも関連記事を書いたが、「不祥事多発・軽すぎるモラル」程度の認識であってはなるまい。
≪産経の記事≫
今までの保守政権でもこれに類似した事件があり、日本人の軍事軽視、秘密取扱いの軽視など、恐るべき退廃が官庁内部に浸透していることをうかがわせるに十分だったが、今回ほど直接同盟国大統領を危険にさらす情報漏えいはなかったと思う。
国土交通省は省を挙げて厳重な情報管理体制を築く必要がある。ただでさえ、その頭にあたる“部分”は劣化が著しく、素人や犯罪人の集まりなのだから、官僚がしっかりと守備しなければ、来年に迫っている国際情勢の大変化についていけず、国民を路頭に迷わせることになる、と断言しておきたい。
空自が一番頭を抱えている次期戦闘機選定問題で、当時最新兵器であったF-22を同盟国である米国が日本にリリースしなかったことを思い出すがよい。
あの時リリースしていたら、その後ロシアや中国が公表したステルス機は、日本から機密が漏えいした、として、米国からあらぬ疑いをかけられ、トヨタ並みのバッシングを受けていたのではないか?と私は逆に胸をなでおろしている。F-22はリリースされなくてよかったのである。
当時の防衛長官はF‐22を熱望していたが、本当に国家防衛上の要請だったのか、それとも票集めだったのかをCIAは分析して、リリースした途端、翌日には北京に流れる…と読んでいた節がある。当時の防衛長官は長崎選挙区であったから…
次の写真を見るがよい。機密の塊であるイージス艦でさえこのありさま、事件が起きると海保担当官がCICにまで調査に入る軍事軽視の日本には、ほとほと愛想が尽きかけていたのである。
≪建造中のイージス艦「あたご」は、常時定点観測されていた=中国の軍事ネットから≫
三沢基地勤務時代「ここ(管制業務)は空自が管理しているので安心だ」というのが米側の共通認識であった。それに反して沖縄の那覇“基地”は、那覇“空港”と呼称されるように民間空港的要素が強い。だから今回の羽田同様の“事件”が起きる公算は強かったから、米軍のVIPたちはなるべく使用を避けていた。
第7艦隊司令官が私を表敬に来た時も、米海軍の那覇軍港内のヘリポートを利用して車で来るというから、私は直接那覇基地内に降りるよう調整させたのだが、管制部は「米軍の使用拒否」を主張しているし、米海軍は「これ以上日米関係で自衛隊に迷惑はかけたくない」からという建前で司令官一行は那覇軍港から車で来た。
しかしこの時の背景にも「今回のような情報漏えい」を警戒していた節があった。この時は半島情勢が機微な時だったから…
その後、私の退官直前に、エリザベス女王陛下のお召船「ブリタニア号」が那覇に寄港することになった。当初は同じ那覇港内にある警備厳重な米海軍のバースを予定していたのだが、直前に半島情勢が緊張したため使用できなくなった。やむなく港を管理している県に要請したところ、なんと、沖縄県は「コンテナ埠頭」である安謝新港に≪お召船≫をまわしたのであった。非礼この上ないものであったが、英国はぐっと我慢して耐えてくれた。おそらく当時の政府も知らなかったのではないか?外交上は≪知らなかった≫で済む問題ではないのだが、それさえ分かってはいなかった。
≪英海軍士官には和菓子でお抹茶を、我々はダージリンティとクッキーで!≫
これには安全上、警備上大問題があるとして、在日英大使館付海軍武官が連日沖縄県庁に厳重警備を要請していたが、沖縄は何処でも安全安心である、として一切受け付けられなかったらしい。
天皇のお召列車を、石炭積み出しのための引き込み線に付けるような非礼極まりないもの、その非礼と国家的非常識をカバーしたのは、我々沖縄に所在した陸・海・空の自衛隊であった。私は「自衛隊沖縄連絡調整官」でもあったから…。
機密費もない我々は、誠心誠意彼らをもてなし、南部戦跡めぐり、日本古来の武道展示、親善サッカー試合、そして最後に沖縄市民の方々をお招きして海軍仲間である海自第5航空群主催のバーベキューでもてなした。もちろん、コンテナ埠頭に停泊している≪お召船≫には、常時、3自衛隊が交代でジープに乗った警務隊を埠頭に派遣した。
そして出航時には3自衛隊員が埠頭に整列して、南混音楽隊のブラスバンドで航海の無事を祈って見送った。
≪香港へ出航!見送り≫
ブリタニア号の任務は、香港返還の7月1日、同時にそれは私の退官日でもあったが、フィリップ殿下はじめVIPを収容してポーツマス港に帰国することにあった。
これが現役最後を飾る私の仕事でもあったが、外国軍との種々の催しごとに関しては、いわば国家機構内の役人たちはもとより、民間人を含めて「軍事的観念」に乏しいことが、非常に気がかりであった。
おそらく今後はこの件をきっかけにして、テロとの戦いを継続している米国は、かなり厳しい対応をとってくるに違いない。政府部内は「素人集団」ばかりか、罪人たちのたまり場の雰囲気さえ漂っている。その上これを支える官庁内には“間諜”がはびこっているのだから、同盟国もやりにくいことこの上ないだろう。
そこで野田首相に物申したい。政府は失敗するか不人気になれば「辞職すればいい」かもしれないが、国民はそういうわけにはいかない。外交も国防もそうである。情けないことに国家防衛を放棄して、同盟国に一存している以上、「友達」への背信は命取りになることを忘れないでほしい。
今日はロシアの軍事攻勢について書こうと思ったが、夕刊フジに意見を述べたので省略する。
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