今朝の産経抄は、「明日、開戦70年を迎えるあの戦争に国民を導いた要因の一つに政治家、軍人ら指導者の定見のなさがある。北方に国の活路を求める「北進」から突然「南進」へと方向転換する。米国の出方を見誤り、独、伊との三国同盟を結ぶ。それらが重なり悲惨な結果を招いたのだ」と書き出し、「そんな政治家の定見のなさを今に受け継いでいるとしか思えないのが鳩山由紀夫氏である」として、首相時代、沖縄の米軍飛行場の移設先を「最低でも県外」と実現不可能な方針をふりまいて、混乱に陥れた“宇宙人”の無定見さを責めた。
政治家の無定見さは今に始まったことではなかろう。
ここでは“無邪気な現代はとぽっぽ”の無定見さを責める気はない。産経抄子が指摘したように、70年前に何故わが国は日米開戦に踏み切ったのか?という疑問の追求である。
≪真珠湾上空の海軍機=「日録20世紀」講談社から≫
国是ともいうべき「北の脅威」、とりわけソ連共産主義に対抗してドイツと防共協定を結び、やがて3国同盟に進化させた我が国であったが、ヒトラーが極右思想の持ち主だからこれが災いのもとだったとする意見を言うのはお門違いだろう。
3国同盟は、所詮孤立した国同士の仲良しクラブに過ぎなかったと思うが、当時のメディアは快進撃を続けるヒトラーを礼賛し「バスに乗り遅れるな!」「鬼畜米英!」と国民を扇動したではないか。
ところが訪ソ中の松岡外務大臣は「ソ連と手を結び」、外務省はドイツ派、英米派などに分裂して混乱したが、松岡らドイツ一派?は、ゆくゆくはソ連を加えた「4国同盟に進化させよう」と考えていた。しかし彼は独ソが開戦すると途端にソ連を攻めよと呼号する。
≪日ソ不可侵条約に調印する松岡外相:後ろはスターリン=同≫
それどころか日米交渉にあたっている野村大使の助け舟に、わが政府は日独伊3国同盟を結んだ時の来栖ドイツ大使を応援のために派遣した。米国が不快に思うのは当然であったろう。
≪3国同盟調印式を終えた来栖駐独大使=真珠湾への道(みすず書房)から≫
≪ドイツを訪問し閲兵する松岡外相=「日録20世紀」講談社から≫
陸軍では北か南かで大いに激論が戦わされる。少なくとも地上戦闘を得意とする陸軍は、せいぜい東南アジア(米英蘭仏の植民地)を限界線としていたが、海での戦闘を得意とする海軍は、日米開戦にあたって「真珠湾奇襲」を考える。
陸軍内部は北進派と南進派に分かれて激論が続くが、陸の「南進」目標は東南アジアであった。
海軍も侵攻してくる米艦隊を太平洋上で邀撃することとしていたにもかかわらず、突如ハワイを奇襲する。何故か?
日米交渉で、事実上の対日宣戦布告に該当する「ハルノート」を突きつけられたわが国指導者たちは、昭和16年12月1日の御前会議で開戦することに決めた。
ところが11月15日の大本営政府連絡会議で決められた戦策は、
第1段階=南方作戦で資源を獲得し戦略自給を確保。
第2段階=西亜作戦でインド洋を制圧し独伊との連携を確保し英を脱落させる。
第3段階=インドを独立させ、援蒋ルートを断ち蒋介石を脱落させる。
第4段階=対米講和に備えて国力を充実させる
というもので、その目途を昭和17年秋としていた。
しかし12月1日の御前会議開始直前になって、東條首相は杉山元参謀総長から「海軍はハワイをやるらしい」と告げられ、「何、話が違う」と激怒したと伝えられている。
東條首相は翌朝の「攻撃成功」の1報で知ったという説もあるが、いずれにせよ話が違ったのは事実だろう。
事実だとすれば、11月15日に決められていた戦策を一方的に破ったのはだれか?
戦局を決定したミッドウェーの敗戦も東條首相は知らされていなかったというから、よくこんな体制で3年半もの長期間、世界を相手に戦ったものである。
真珠湾攻撃は、山本五十六連合艦隊司令長官の秘策であり、時の連合艦隊司令部の先任参謀・黒島亀人大佐の手になるものだとされている。
黒島大佐は“奇人”として有名で単独行動が多く、自室に引っ込んだまま出てこない時が多かった。さらに食事は従兵に運ばせ、風呂に行くときは「褌なし」でタオルをぶら下げただけだったという証言も多い。
そんな“変人”の才能?を信じていたのが山本長官で、司令部の人間関係はうまくいっていなかったらしい。なんだか、最近話題になっている新聞社の巨人“軍”や、オリンパス、大王製紙…の人間関係に似ている気がする。
二人の共通点は「博打好き」なところで、山本長官が「マージャン、トランプ、花札、将棋、ルーレット」などが得意だったことは有名である。
黒島参謀の作戦も「ブラフが効いた一か八かの作戦」が多かったというから、やはり真珠湾攻撃作戦は「一か八か」の大博打だったのだろう。
たまたまルーズベルトが黙認していたこともあって戦術的成功を収めただけで、それどころかこの作戦は戦略的には大失敗であった。
その後の日米海戦ではほとんど成果を上げていないことからも、これが「奇策」であったことが伺える。
今人間『山本五十六』が注目されているようだが、どこまで真相に迫れるか?
私が言いたいのは、陸軍は独ソ開戦後、関東軍特別大演習を発令して、80万もの軍を満州に集結した。国家として北に備える規定の行動だったが、海軍がハワイを攻撃したため、終戦に至るまで「関特演」で満州に集積した莫大な軍需物資は、南方作戦にはほとんど生かされす、終戦直前に突如攻め込んできたソ連軍と、国共内戦で満州に逃げ込んでいた中国共産党軍に“有効に活用”される結果になった。
つまり、一般的には「北進論」「南進論」と言われる今次大戦だが、私は開戦当初の「東進」で自滅したのだと考えている。
誰が「東進」を認可したのか??山本長官の独走か?
国家の命運をかけた戦争に「ばくちは禁物」である。ただ、昔の指導者たちにはそれでも武士の精神が若干なりとも残っていたが、現代日本政府を構成している方々にはほとんど感じられない。今の政府が取っている策は、はなはだしく無策であり、それ以前に「不勉強」である。
今日の国会では、自衛隊の予算と人員を削減した元主計官が素人大臣追求(いじめ?)に立ち「マルチロールが何か?」と聞いていたが思わず吹き出した。「マルチ商法」だったら大臣も知っていたろうに…
「目くそ鼻くそを責める?」。聞くのは構わないが立場が変わるとこうも豹変できるものか?
むしろ自衛隊関連質問ではなく「70年まえの真珠湾攻撃から何を学ぶか?」とでも質問すればもっとオモシロかったろうに。それをやらなかったのはキット彼女も勉強していないからだろう…
戦後教育は近代史を避けて通っているし、大学でも教育機関でも70年前のこんな大事件の真相を少しも学ぼうとしないし教えようとはしないからで、アジアから植民地を解放した偉大な日本人が、実はアジア唯一の「植民地」になっていることさえ気が付いていないようだ。
さて今度はどこが植民地と化した日本を解放してくれるのか知らん?
とまれ、次代を担う青年たちに、70年前のこの事実をしっかりと学んでほしいと思う。
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