軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

穏やかな新年を迎えたが…

日本海側は相当な寒波に襲われたが、太平洋側は比較的平穏な新年を迎えることができた。
初詣客も、なんとなく今年に期待しているように見受けられる。年賀状にもその期待が読み取れるが、安倍首相にはしっかりと期待に応えてほしいものだ。


ところで今朝の産経8面上に、「中台トップも新年の辞」という囲み記事が出ていた。習近平総書記が、国政助言機関・全国政治協商会議の新年茶話会で「中華民族の偉大な復興実現に尽力しなければならない」と呼びかけ、国力増強を図っていく考えを示したという。
≪習氏は今年を「(昨年11月の)第18回党大会の精神を全面的に貫徹、実行するスタートの年」と位置付け、経済の持続的で健全な発展と社会の調和と安定を促進し、国防と軍の現代化建設を加速させなければならないと強調した≫というのだが、国内では、彼ら「文革経験者」の言動はあまり信用されていないという。
とはいえ、今や彼らしか時代を担うものはいない。政界はもとより、経済界も軍隊も…

≪香港で、親中派指導者に辞任要求デモ=産経から≫

ところで「軍の現代化」に関しては、昨年来空母『遼寧』号に関する話題に事欠かなかったが、陸上でも相当な動きがあった。
インターネットに、現時点で世界中を飛行している民航機情報を展示する≪フライトレーダー24≫というアプリがあるが、日本・台湾上空はいつも大混雑なのに、大陸は北京、上海。香港周辺だけが混んでいるだけで、奇妙に思っていた。フライトプランが提出されていないのか、それとも何かあるのかと。


ところが今朝、中国ウォッチャーから電話があったので聞いてみてなんとなく納得?した。

昨年来、中国大陸内の180を超える「民間空港」では、人民解放空軍の離着陸訓練がしきりに行われていて、それらの98%は軍の管理下にあると見た方がいいというのである。
例えば民航機が着陸しようとしても、軍事訓練中の場合は着陸が許可されないので、他の空港か出発地に引き返させられるというのだが、にわかに信じがたい。仮に日本の民間機がそんな目にあったら、直ちに記事になるだろうから…
その昔、私が外務省に出向していた時、モスクワから羽田に戻る途中、モスクワ空港内のスナック?でお茶を飲んでいると、日航の職員が大慌てでやってきて乗客を機内に誘導したことがあった。「当局の指示で、30分後に空港が閉鎖される」というのである。飛行安全なんぞ二の次、離陸上昇中に空港の照明施設が一斉に消されたから、間一髪日航機は間に合ったのだった。
これが共産主義国の実態か、と当時は驚いたことがあったが、今回の情報もそれに似ている。全ては共産党支配下にあるのであり、「民間航空」などとは日本が勝手につけているだけなのだ。


このような空軍の訓練は、四川省地震以降非常に増えているというが、特に訓練の重点は、燃料搭載と各種部品の空港内への集積だという。
我々が演習時に「ターンアラウンド」と呼んだもので、戦闘から帰投して着陸するやいかに早く『再発進準備』をするかという訓練である。
そのためには燃料弾薬を集積し、整備員も待機しているはずである。

特に昨年8月以降、これらの「民間飛行場」には、空軍用の物資が集積され、整備員による部品交換訓練が頻繁に行われているという。

我々はこれを「機動展開訓練」と呼んで演習でよく演練したものだが、中国でも特に給油訓練が重視されているらしい。
わが防衛省では「動的防衛力」などと呼称しているが、実際に「動的」訓練が実施されない限り、それは単なる机上の空論に過ぎない。

おそらく未だに我が国では、民間空港を利用した「動的訓練」は実施されていないはずである。


友人は「民間空港も戦場化している」といい、空港の中に設置された約17000か所の「軍専用倉庫には、武器や装備品が集積されている」といい、空港は空軍が管理するが、日本のODAで作られた高速道路や新幹線などは陸軍が管理、いざとなったら一斉に軍隊が移動するという。
私は、「高速道路や新幹線は、国内騒乱の時の治安部隊の移動に有効だろう」といったのだが、「どちらにせよ日本が作ってやったもの、馬鹿ね〜」といわれてしまった。


「習総書記は本気で戦争やる気かな〜」ととぼけて言うと、「彼にはそれしかない。習総書記が1日に、指導グループを集めた茶会の席で、毛沢東の詩を読み上げたが、出席者は習近平の頭の中は毛沢東でいっぱいになっている。彼の政治は左、経済は右だと認識した」という。
産経が「中華民族の偉大な復興実現に尽力しなければならない」と呼びかけ、国力増強を図っていく考えを示したと書いた中身は、実はこのことだったようだ。

毛沢東語録を振り回す紅衛兵=インターネットから≫


友人は最後にこう付け加えた。
習近平を筆頭に今の中国指導部の頭の中は毛沢東思想のみ。彼らは中学時代に「毛沢東語録」を振り回しただけで勉強もせず、高校も大学も出ていないから、日本人には理解できない行動をとるだろう。
今年の夏ごろが一番危険だ。7・7(7月7日)は盧溝橋事件の日、彼らはもう一度日本に戦争を仕掛ける気だ。
尖閣問題で中国に気を使って譲歩したらダメ、譲歩しようとしまいと、彼らは決めたことは必ず実行する。そうしなければ彼らの居場所は中国には無くなるから」といったから思い出した。


中台問題を協議していた日中安保対話の席上で、彼らが「台湾問題は中国の核心的利益である。台湾が独立を宣言すれば、いかなる手段を講じても阻止する。手段には、直接的軍事力行使も含む。いかなる幻想も抱かないでほしい」といった後で、こう言った。
≪中国の指導者は「ためらわない」。ためらえば「中国にいられなくなる」からだ≫と。


その後台湾には馬英久親中政権が発足して続いている。
日本にも民主党親中政権が成立して一安心したところ、あまりの愚かさぶりで自壊し、“右翼”政権が復活してしまったから、中南海は相当焦っているとみられる。

新政権には、尖閣実効支配策を速やかに実行し、下地島に機動展開訓練をして、ゆめゆめ隙を与えないようにしてほしい。


ところで昨日、友人から非常に参考になる記事のコピーが送られてきた。発刊されたばかりの「水交:25-新春号」の中の、「南鳥島事件考察(東裕一)」論文である。
明治35年7月13日、ワシントンの高平公使から、小村寿太郎外務大臣あてに、≪ローズヒルという船長が、米国政府の許可を得て南鳥島を占領するために7月11日に一隊を率いてハワイを出港した。日本政府が南鳥島の領有権を主張するのであれば、公使自らそのことを米国政府に伝達するが、すでに海上にあるローズ船長には通信手段がないから、日本から軍艦を派遣して同船長に詳細を説明するように」と助言してきたので、大臣は直ちに「同島は数年前から水谷という本邦人に貸下げられ、4〜50人の日本人を連れて漁業や鳥の捕獲に従事している。公使はこの事実を米国政府に伝え、注意を喚起するとともに、米政府が同島占領の許可を出してしまったのであれば、無用の紛糾を避けるために速やかにこの許可を取り消すよう米政府に勧告するよう」打電する。
この電報が海軍省に回付されると、海軍省軍務局第1課の真田鶴松少佐(3佐)は各省庁と連携し軍艦(2等巡洋艦「笠置」)を派遣する。
「笠置」は島につくや測量を開始し、資材の陸揚げや調査を実施するが、燃料の石炭が底をつき始めたので、いったん帰国することとし、やってくる米国帆船に対抗するため、指揮官・秋元秀太郎中尉(海兵26期:2尉)以下、看護員、信号員、大工各一名、屈強な下士卒13名。食糧2か月分と海水蒸留造水器などを残して横須賀に戻る。

≪水交誌から≫

その後ローズ船長らが到着するが、秋元中尉は理由を説明したうえで退去要求する。
後で分かったことだが、米帆船にはモーゼル銃で武装した私兵の一隊が乗船していて、南鳥島到着後、政府が発行した許可証を根拠に強行上陸し、拒否された場合にはいったん引き下がったと見せかけて暗夜に銃隊を強行上陸させて島に星条旗を立てる手順が定められていたという。

筆者の海自OB、航空学生17期P2Jの元パイロットであった東氏は「もし笠置の特設陸戦隊が先行駐留していなければ、29人の住民の運命はもっと悲惨なものになっていたかもしれない。
明治の先人たちが見せた領土保全に対する迷いのない決断、迅速な行動に感謝しなければならない」と書いている。
加えて特筆すべきはGPSもない時代に「天測を繰り返すことによって、同島の正確な地図を完成させていること」であるという。

≪水交誌から≫

コピーを送ってくれた友人は「明治中期の海軍士官の気概もさることながら、組織としての自信に驚きました」と添え書きしてくれた。
尖閣問題に相通じるものが見て取れるが、さて、平成の日本人はどんな行動をとるのだろうか?

南鳥島全図―インターネットから≫

中国社会の崩壊が始まった! 2013年の「中国」を予測する (WAC BUNKO)

中国社会の崩壊が始まった! 2013年の「中国」を予測する (WAC BUNKO)

「中国の終わり」のはじまり ~習近平政権、経済崩壊、反日の行方~

「中国の終わり」のはじまり ~習近平政権、経済崩壊、反日の行方~

大東亞戦争は昭和50年4月30日に終結した

大東亞戦争は昭和50年4月30日に終結した

自衛隊の「犯罪」-雫石事件の真相!

自衛隊の「犯罪」-雫石事件の真相!

日本の空を誰が守るのか (双葉新書)

日本の空を誰が守るのか (双葉新書)